その4
「それで……見つけたのが、この妙な玉ってわけかい」
フローラは、自分の目の前にあるものを見やった。
人ひとりくらいの大きさの、青い玉。質感はつやつやしており、さわると冷たく固かった。中を見ることはできない。
シェリルは自分の掌の玉とそれを見比べる。どうやらこれがレーダーのような役割をしているようだ。
「あね様の“波動”は、この中から出ています。まず間違いなく、あね様はこの中にいます。しかし……」
そこで、ロックが手下の忍から刀を借りて玉に斬りかかると、“魔力”の火花が散り、根本から折れてしまった。
「見ての通り、外からの攻撃を弾きます。忍術でも同じ結果でした」
フローラは「ふむ」といって、玉に手をつけた。
「どうやら強力な結界のようだ。神器の力を使ったんだろうね」
「おんばあ、なんとか破壊できませんか」
フローラは首をふる。
「神器がみっつ集まっちゃ、さすがにどうにもならんね……ただし」
フローラは後ろのほうでそれをのぞいていたハヤトに目を向けた。
「ハヤトの蒼き“波動”なら、できるかもしれない。来なさい」
ハヤトは頷いて、玉へと近づいてゆく。
ロックはその姿を、訝しげに見ていた。
「ハヤト、蒼き“波動”を玉に流してごらん。やり方はもう教えたはずだ。これができたら、あんたを認め、秋の精霊との契約を許そう」
「わかりました」
ハヤトは玉に手を付いて、“魔力”を解放する。じきに、彼の瞳が蒼く光り出す。仲間たちは、それを固唾を飲んで見守っている。
彼の手が玉の中へ、ずんと入った。
「えっ!?」
ハヤトの体が、みるみるうちに玉へと吸い込まれていく。
「ハ、ハヤト君!」
思わずマヤが駆けて手をとる。その手をルー、ロバート、コリン、ミランダが順に取っていく。
「ちっ!」
「あに様!」
ロックが飛び出し、ミランダの手を掴んだ。最後に、シェリルが彼の手を取り、全員が玉の中へと姿を消した。
ディアナを始めとした忍たちが騒然とする中、フローラだけがそれを遠い目で見ていた。