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インセンシティブ・センシブル  作者: サウザンド★みかん
(新)第Ⅰ部 大衆教育社会の欠陥教師―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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(新)第6話 明日の心もしらない~第二節~

 それから一時間弱。弁当の具材に必要なものを買い集めた私は、愛しの我が家まで帰ってきた。

 明かりを点灯させる。実をいうと、今日は学校でタキを召喚していた。場所は校舎裏、二日前の朝に初めて彼女と出くわした場所である。理由はもちろん、一日一回呼び出せるとはいえ、呼び出し方も分からないのでは話にならないからだ。実際には心で数回、念じるだけで呼び出せたのだが、もし特別な呪文などが要ったならば、非常時には後悔することこの上ない結末が待っていたのだろう。

 タキは不機嫌だった。何をしていたのか聞いたものの、教えてくれなかった。というか、普段のタキは何をしているのだろう。「神の使いの仕事って何だ?」と聞くと、神もたまには運命操作が難しい場合があるので、あと一押しとばかり、その状況を展開させるようなプッシュを行うのだという。彼女は、それを悪魔のささやきと呼称していた。あと、神という言い方は適当ではなく、世界を創り、その営みを保守しているという意味での管理者という表現が相応しいようである。

 今日は、クオリアについての詳細説明を聞きたかった。例えば、私は乾賢太朗の脳で生きているとのことだが、それでは今ここに在る私(元)という意志は、どのようにして意識を保っていられるのか。そもそもクオリアとは、どこに存在しているのか。

 そういうことを確認したかった。いまの私では理解に時間がかかるのは明白だが、一日に三十分も使えるのだから、総時間で考えるなら時間はいくらでもある。しかしながら、それを聞こうと思ったときに誰かの叫び声が聞こえた。一体、何があったのだろうと思ったら、タキが足先で転がしていた木の枝を生徒に見られたのだった。やはり、彼女の能力は透明になることなのだ。

 その声から判断して、私の知る者ではなかった。もし知り合いだったら、次に会ったとき気まずくなるところだった。そんなことを思い返しつつ、今日買った惣菜や弁当箱を調理スペースに置いていく。それから私は座椅子に腰掛けた。コタツ机のノートパソコンの電源を入れつつ、少しの間ゆっくりすることにする。

 三分ほど経ったろうか、そろそろ明日の弁当を作り始めよう。といっても、半額の惣菜を詰め込んでいくだけなのだが。仕切り板だけでは色々もれてしまうので、弁当用の銀紙をふたつほどセットする。

 その銀色の端のギザギザ部分を片手で持ちながら、もう片方の手で慎重に具材を載せていく。数分後には几帳面に彩られた、おかず用の弁当箱が出来上がっていた。起床したら炊きたてのご飯をもう一つの弁当箱に、梅干、佃煮と一緒に詰め込んでいくのだ。

 やはり、自炊よりも半額の惣菜を中心に据えた方が安上がりだろう。よほどの貧乏飯は別として。個人的には自炊するなら、グラタンとか、筑前煮などお気に入りの料理だけでいい。あとは、それなりに食べれさえすればよいのだから、何でもかんでも自炊しなくてもいいのである。

 三日目ともなると、どの記憶が私(元)のそれなのかについて、感覚のみで完全にわかるようになっていた。いうまでもなく、これは私(元)の記憶である(筑前煮は乾賢太朗の好物)。

 弁当を作り終えたので、また座椅子に座ってノートパソコンを開く。乾賢太朗は、ITについては熟練しているようだった。おもむろにインターネットのアイコンをクリックする。オレンジ色で獣のようなロゴ。続いてブックマークメニューを押した。

 色々ある。一体どれが何なのだろうか……。

 調べてみると、そのほとんどが犯罪的な次元でいかがわしいサイトではないか。人の性癖にアレコレいうつもりはないが、少なくとも小児偏愛は教師としてアウトである。そういう年齢の女に対する性行為は、合意の有無に関係なく暴力だ。相手の自由意志に任せているようで、その実、侵害しているからである。

 決めた。近日中に、このパソコンを廃品回収に出すことに決めた。ただ、気になるサイトがひとつだけある。当然それは、私にはよく分からない。なんだかテレビみたいなサイトだな。マイページの右上にはプレミアム会員という文字がみえる。IDは一〇万と少し。最近登録したのだろうか。登録ネームは、†暗黒∞餃子†。この記号はアレか、何かの暗号か。

 動画の履歴をみると、なんだか色々なアニメを中心に視聴しているようだった。視聴履歴が新しいものを調べてみる。アニメのロゴに歯車みたいなものが描かれたアニメ、駅で桜と女の子が写るジャケ絵が印象的なアニメなど。

 いまのところ、私(元)にサブカル系の記憶はない。私は、こういうサイトを生まれて初めて視聴したので、何らかの感情が高まっても良いはずなのだが。そのあたりは乾賢太朗の身体、乾賢太朗の性向ということか。要するに、このサイトに慣れ切っているのだ。

 もう夜十時三十分だった。今日は明日に備えて早めに寝よう。座ったまま電気を消して、コタツ机の座椅子からベッドによじ登る。その眠りはあっという間にやってきた。もう明日は木曜日である。学校にいったら、まずは九里村に謝ろう……。

 (第6話、終)

毎週、金曜日から更新です。それでは、ゆっくりお読みください(。。)...

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