第16話 創部宣言!~一節~
お問い合わせがあった件について。私の作品をご覧頂いている、希少な方々へ。
作者である渡邉実一は学校関係者でも何でもありませんので、何を書こうと、職務上知りえた秘密の漏洩(公務員の守秘義務)には当たりません。しかしながら、様々な意味で読者の目線に配慮する必要性は認識しております。
なお、「インセンシティブ・センシブル」の読者は寡少ではありますが、すでに心中で完結している物語ですので執筆を止める可能性はない、という宣言をこの場でさせて頂きます。
人間は考えることが少ないほど、余計に喋る。
4月26日(火)
気持ちのいい朝だ。今日も私は、いつものように朝のジョギングを終え、さっさと弁当を作ると、徒歩で10分の地点にある鴨中学校へと出勤していった。
自分のデスクに腰掛け、ノートパソコンの電源を入れる。と同時に、椅子に座る私の背後を、誰かの影が横切った。
「乾先生、おはようございます」
「おはようございます」
後輩である、九里村律子。席は隣同士である。すらりと延びる肢体に、盛り上がるような、ふんわりとしたショートヘア(髪形の名前なんて分からない)が調和している。個人的には、運動向きの体格だと思う。
「乾先生、申請書の話ですが……」
「大丈夫です、もう様式には記入しておきましたから。あとは部員です」
私たちは柔道部を創設しようとしている。その理由というのは、私、乾賢太朗の生存のためである。何でも、先日現われた神の使いの話によれば、一年以内に感涙できなければ適当な理由(多分、痛いに違いない)で、私は死亡するという。そういうわけで、目的を達成するために部活動の指導に専心することで、死の運命を避けようとしているのだ。
「律先生、協力感謝してます」
私がそう言うと彼女は俯きがちになり、返事だけしたところで、何も言わず椅子に腰掛ける。
朝礼が終わった。これでもかという、短時間。もういっそ、しない方がいいんじゃないか? それから一分後、私が担任している2-1教室の前に着いた。はっきりいって、私は緊張している。昨日、あんなことがあったばかりだから、どういう反応をされるか不安で仕方ない。スライド扉に手を掛け、ゆっくりと、それを横向きに引いた。
入るやいなや、悟った。生徒たちの視線が違う、昨日までと。雑談に興じる者など誰もいなかった、静かな世界。私が撃退した互哩という生徒は、よほど悪い奴だったのだろうか。そこまで悪い奴だったとも思えないのだが。とにかく、教室が静かなのはいいことだ。それから極めて平和的に、朝のHRは終了した。
私の存在は2-1にとっては救いだったのだろう。そりゃあ、功績も顰蹙もある佐野を不登校にさせたのはともかく、厄介者の互哩までやっつけたのだから、これが当然の対応かもしれない。いわば、教師である私が、擬似的に2-1のボス役となっている。だが保守的な教育論においては、むしろこれでいい。教師が群れのリーダーとなることで、やっかいなイジメ問題などを回避できるという利点があるからである(思想的にリベラルの見地からはどうなるのだろうか。よく分からない)
他の教室でも同様であった。とにかく私が入室すると、空気が変わるのだ。雑談も少なく、本当に楽に授業が進む。以前の乾賢太朗からは考えられない変化である。こんな経験は初めてだった。その度に気分は大きく高揚した。
毎週、金曜日に更新です。ゆっくりお読みください(。。)...




