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異世界の走り屋達とそして鳴り響く危機

ペツォッタイト編です。


今回は特にバトルも無く、どちらかと言うと背景描写の練習(作者の)と情報整理です。


最後にトーヤくんと一緒にドキンドキンしてくれたら幸いです。

最後ちょっと変更しました。やっぱこっちですね。

「うぅ、ここは……【ペツォッタイト】か?女になってるし」

 目覚めて辺りを見回すと、サバンナが俺の目の前には広がっていた。体も確認すると女の姿になっている。

「俺はやはり【ペッツォタイト】と【ユークレース】の世界を行き来していて、ペッツォタイトでは赤毛の怪力美少女でユークレースでは黒毛のイケメン魔法使いになっているのは確実か」

 今の状況を整理しながら、再びしっかりと周辺を見回す。やはりサバンナとしか言いようが無い。恐らくここは一度も来た事がない場所だろう。前回にオークどもとインプ領まで走った時はこのような光景は一切無かった。あちらには山もちらほら遠くに見えていた気がするがこちらでは一切そのようなものがない。それらをまとめてもここは完全に来たことの無い土地と言えよう。

―ドドドドドッ!

 突然どこからとも無く、何者かが走る音が突然鳴り響く。そちらを見るがサバンナであるはずが、何故か砂埃を上げて走る何かがこちらへ向かっている。良く見ると複数居るようだ。警戒のため隠れようと周囲を探したが、隠れるところなどはなかった。

「オーク達のような直結脳の場合もあるし、いざとなったら返り討ちにするか」

 ここは周囲が見渡せやすいため、オークの時のように背後を取られることもない。相手が複数と言うことを頭に刻み、ヤツラとの戦いの予感に身構えた。

 そしてかなり近づいてきた時ヤツラから声が聞こえる。

『パラリラパラリラ!お前ら、今日も絶好調だな!』

『このまま【ローズ平原】をぶった切っちまおうぜ!』

『おっ!あそこに誰かいるぜ?』

『おお、よし行くぞお前ら!』

―ドドドドドッ!

 物凄い音を立てながらこっちに向かってくる3人組、近づいたことで大体その容姿も見えるようになってきた。ケンタウロスだ。【上半身はまさに人間と同じで、特長すべきはその下半身だ。下半身は馬の如く立派な前足と後ろ足。余計な脂肪も一切見られない立派な足だ】。俺は前半の台詞はいったいなんだったのだろうかと考えつつも、強敵の予感がして構えを取る。

 そしてヤツラが俺の目の前までやってきた。

『他部族なんて珍しいな。ヘイ、俺達と……』

「お前達の目的はなんだ!?」

 俺は襲い掛かられないようにじりじりと間合いを計りながら構えを取る。油断しまくりで隙だらけのその相手に、これは誘いでは無いかと緊張しながらも相手と会話をする。

 そして――

『おいおいおい、超マブじゃね!?マブもいいところだろ』

『ひひ~ん!これは来た!俺達の時代が!』

『いいのか!?俺達はやっちまうぞ!?』

 なにやらケンタウロス3匹がいきなり肩を抱き合って内緒話をしている。とても隙だらけだ。俺はその隙を狙って一気に逃げ出した。無駄に相手をするまでもないだろう。あの会話だと下手すると俺の貞操もやばい。

―ドドドドドッ!

 俺は一瞬の間でケンタウロスらに囲まれた。俺より遥かに速いスピードを持っていた。逃げられないと思った俺は手に汗を握った。これはもう戦うしかない。俺はスッと再び構え取った。視界外の背後に1人居るがそれは仕方ない。

 だがヤツラは俺の想像だにしなかった連中だった。

『ヘイ、彼女!俺の背中に乗っていかないか?』

『彼女!俺とドライブしようぜ!俺は毎日ブラッシングで整えてるぜ』

『彼女!俺はあいつらよりも速いんだぜ!あんな駄馬より俺に乗らね?』

 ナンパだった。

 そして、『あぁん?お前いまなんつった!?』『お前こそ何がブラッシングだ!』『お前こそ何抜け駆けしようとしてんだ!』と3匹のケンタウロスは口喧嘩を始めた。

 俺は呆れて乾いた笑いしか出来なかったが場を収めるために言った。


「とりあえずジャンケンで順番でな」



  ***



―ドドドドドッ!

 今俺はケンタウロスの背に乗せて走ってもらってるが、かなりのスピードで爽快だ。掴まる部分が人間って言うのがあれだが、スピードはかなりのもので、競走馬宛らではないだろうか。いずれにせよ、変なヤツラだが実に友好的であることが分かった。

「んーちょっと聞きたいことあるんだがいいか?」

『おう!俺の上のサイズから下のサイズまでどんと来い!』

「いや、それはいらんから。じゃなくてオークの国【スピネル王国】がどうなったか分かるか?」

『オーク?あー悪いんだが、別大陸のことはちったぁ分からんかな』

「別大陸……?」

 ここはケンタウロスの国【ルベライト王国】の【ローズ平原】という場所らしい。この国では毎年足の速さを競っているせいか、こう言った走り屋が多いとか。ただ走るだけでは詰まらないので、砂を撒き散らして砂埃を発生させたり、見つけた他部族をナンパしていたりするらしい。でも他部族ってつまり男だよな。

『彼女、知らないのか?この【ペツォッタイト】ではいくつか"大陸が別れてる"んだぜ』

「そこを渡ること出来ないのか?」

『俺たちゃ無理だな。おい、お前ら!世界の断崖【クンツァイト】までいくぜ!!』

『あんな隅っこ何もねーだろが!もっと楽しいところに行こうぜ!』

『彼女からのお誘いだっての!行くぜお前ら!』

『ひひ~ん!そう言うことなら俺達に任せろ!』

 この物凄いスピードで走る中で、ギャーギャーと騒ぐ3匹のケンタウロス。俺の言った意味を曲解しているような気がするが、わざとそう言う風に言ってるだけだろうな。


 そして俺はこの世界で初めて世界の断崖【クンツァイト】を目にするのだった。



「これは…渡るなんて無理だな」

 俺の目の前には奈落とも思えるほどに深い谷底がある。理由は分からないが昔からこの断崖はあるらしい。遠くには別大陸もあるようだが、ルウぐらいの飛翔能力と魔法が無ければとてもじゃないがたどり着けないだろう。少なくても俺が全力で石を打ん投げても恐らく届かないだろう。それぐらい大陸間の距離が開いてる。

『あっちは【スピネル】じゃないが、こんな感じで他の大陸には渡れないんだ』

「そうか……なら情報は!?誰か向こうの大陸について情報持ってる奴は居ないのか!?」

 渡れない以上情報を得ることも不可能だ。向こうで何が起こっているか恐らく知ることすら不可能だろう。それでも何とか情報を得られないか方法を探る。

『そうだなぁ、王なら知ってるかもしれないな。定期連絡もあるし』

「定期連絡……?」

『ガーゴイル達が各部族の長に各大陸のことを連絡してるのさ。俺たちゃには知ることが出来ない事だなぁ』

「頼む、王に会わせてくれないか!」

 そう俺は必死に頼みこむが、3匹のケンタウロスは困った顔をしていた。何か事情があるらしい。

『んー、今王は病に伏せってるんだよなぁ』

「頼む、案内だけでもして欲しい!」

 残されたオーク達のことが心配で俺は必死に頭を下げた。あんな下等連中らだったが、共に戦った俺の仲間でもある。

『責任は取れないぜー?案内だけはするよ』

 俺はケンタウロス達に深くお礼を言って、再びケンタウロスの背に乗ってケンタウロスの国【ルベライト王国】まで乗せて貰ったのだった。



  ***



『じゃあなー彼女!またドライブ行こうぜー!』

 3人のケンタウロスがそう言うと俺を置いてまた【ローズ平原】に向かって走っていった。ケンタウロスは人を乗せて走るのが好きで、それをドライブと言っているだけのことだった。『尻の感触が最高だったぜ』とか言われたが、俺の体が女でも中身は男だ。それにあいつらに乗せて貰った恩もあるので聞かなかったことにする。

「さて、ここが【ルベライト王国】か……」

 辺り一面を見るとルベライトの町並みが見える。特徴するべきことは段差が少ない事と道がとてつもなく長い。周りを見てみるとケンタウロスらが忙しそうに走ったり、歩いてる者も居る。日本の車道のように真ん中のラインが走行用になっていて、両端には歩行用の道がある。そしてその道は土を固められているものだった。道をレンガや石などで敷き詰めたらきっと足に悪いのだろう。

 俺はその周囲の風景を見ながら歩行専用の道を歩き進める。ケンタウロスの住居はレンガと漆喰の壁面で屋根は各種様々な色のスレート葺きで色づけされていた。失礼だと思うがもっと馬小屋みたいなものを想像していた俺には驚きの連発だった。まるで西洋の町並みにでも迷い込んだのかと思ったぐらいだ。


 ゆっくりと歩行用の道を歩く。やはり俺が他部族なのと女なのが理由でやたら注目されている。さっきから尻の辺りばかりを見るケンタウロスが、俺の後ろから集団で付いて来ている。こっそりそいつらの話を聞くと『乗ってもらえねぇかな』『プリプリじゃないか!』『あの尻味わいたい』等、きっと尻フェチなのだろう。

「そういや貨幣とかどうなってんだろうな……」

 すぐ側にはホットドッグっぽいものを売っている露店があった。俺は少し気になったのでその露店を眺めたら、ちゃんと金のやり取りをしているらしい。しばらくじっと見ていたら店主らしき人がこちらを手招いてるので近づいてみた。

『やあやあって女!?激可愛ッスね!一本どう?ただであげちゃうよ』

 そう言って店主が一本渡してきた。断るのも悪いんで貰ったらついでに握手された。絶対お前こっち狙いだっただろ。さっそくホットドックらしきものをいただこうとしよう。


―ストンッ

 広場にベンチが何故かあったので座らせてもらう。「お前らケンタウロスがベンチに座れるわけねーだろ」と思ったが何か使用用途があるのかもしれないな。例えば他部族用のためにとか。

 あーんと食べようとしていたところで声が掛かる。先ほどから俺の尻を追跡してた連中らだ。

『彼女!どうせ座るなら俺の背中にしないかい?』

『ヘイ!俺の背中は座り心地抜群だぜ!』

 以下省略するが、俺の前で座り込むたくさんのケンタウロス。こいつら絶対変態だろう。なんとなく目の前にあった尻を競馬のように軽く叩いたら凄く喜んでた。お前ら全員ドMかよ!!


 中々美味であったホットドックらしきものを頂いた俺は、そのままケンタウロスの城である場所へ向かう。さすがに城近いのか背後から付いてきた変態達は、いつの間にか居なくなっていた。まあ尻を堪能したんだろう。



『何用だ?』

 ケンタウロスの門番に『これ以上、先へ通ることは許さん』と、ばかりに通行止めされた。どのように説明するべきだろうか。

「んー、王様に会わせていただきたい。【スピネル王国】の情勢などを知りたいんだ」

『他大陸のことだと?しかもお前は女か……しかし、今王は病に伏せていてだな』

「分かってる。それでも必要なんだ。会わせて欲しい」

『病に伏せている時に、他部族の者に会わせるなど……』

―パッカラパッカラパッカラ

 その時、後ろから走ってくる音がする。

 そして後ろからやってきた者が俺の側に止まった。

『よう、彼女!まだ城に入ってなかったのかい?』

「ん?誰だっけお前」

『何言ってるんだよ!さっき、断崖まで一緒にドライブしたじゃないか。俺の背に乗ってさ』

 良く見たら、断崖まで案内してくれたケンタウロスだった。ここまで来る間に色んな濃いヤツラを見すぎたせいで見分けが付かない。

『王子!また平原の方まで行ってきたというのですか?しかもそのような下の振る舞いで……』

『いいじゃんいいじゃん!ってことで中入るぞ、彼女も来るかい?』

 そう言ってしゃがみ込むケンタウロス。やはり乗れって言う意味だろう。尻を安売りしてる気分にもなるがここは素直に乗っていくべきだろう。

 俺はケンタウロスの背に乗り、今度はゆっくり城の中へ乗せて貰ったのだった。



  ***



「俺の名はアキラってことでよろしく」

「アキラって名前か、可愛い名前だねぇ。俺の方はロレジャー・ルベライト・スクリファクトって言うんだ。よろしくな!」

「ロレジャーね、ロレオでいいか」

「おお、いいね!なんか馴染みの有る名前だなぁ」

 ヘラヘラと笑うロレオ。きっとロデオに似ていたからだろう。さすが半分馬だな。

「んで、ロレオはここの王族ってことでいいのか?」

「そうだぜ!第一王子ってとこだ。俺専用の騎手になるかい?」

 専用の騎手=嫁って意味か。ケンタウロスの文化は俺にはよく分からないものだな。とりあえずしばらくは馬代わりにはさせてもらうが、嫁は丁重にお断りさせていただこう。

「そういや昔ケンタウロスは魔法とか使えたりしたか?」

 一応情報収集を行う。今後何かの役に立つか分からない。ケンタウロスと言えば弓か。

「そうだなぁたしか、瞬間的に"俊足"になる魔法とかあった気がするな」

「俊足か…弓とかかと思ったけど違うんだな」

「お、アキラ詳しいじゃん!魔法ではないが弓だって扱うぜぇ、俺らはな」

 気を良くしたのか上機嫌に笑う。ただあまり揺らされると酔いそうだから止めて欲しい。弓はどうやら魔法とは別らしい。武器は武器、魔法は魔法ってことだろう。これも今後覚えておくか。

「アキラ!そろそろ親父の部屋に着くぜ」

「ああ、しかしロレオに乗ったままだけどいいのか?」

「気にすんなって!俺の騎手を紹介するチャンスだしな」

 俺は無言でロレオから降り立った。王との対面だと言うのに馬鹿に乗ったままでは失礼になるだろう。ロレオは「つれないなぁ」とか言ってたけど普通に無視。


 俺達が部屋に入ると、豪華なベッドの上には今にも死にそうなほど衰弱している老馬がいた。その老馬はこちらへ向くと口を開いた。

『ロレオか、何用だ?見慣れぬ他部族を連れて来たと聞いたが……』

「おう!可愛い俺の騎手だぜ。なんせほんまもんの女だ!驚いたか」

 降りても勝手に騎手扱い。まあいいけどな。

「どうも、俺はアキラ。色々と王に聞きたいことがある」

 丁寧に言うべきなのだろうが、ロレオがこの調子なので俺もその流儀に習う。馬鹿丁寧な言葉で連なってもボロが出るだけだろうしな。

『む、貴女様は……そう言うことですか。何なりとお申し付けください』

 何故か俺の姿を見ただけに急に低姿勢になる王。普通は逆なのではないだろうか。それよりも今はまずは情勢から聞くことにしよう。

「色々聞きたいことがあるが、オークとインプがどうなったか知りたい」

 ロレオはこちらを見ながら黙っている。ここで邪魔をしたりしないのは助かる。口はあれだが中身はまあまあ使える奴らしい。ここの大陸は色々広いらしいから、次回があったら世話になるかもしれないな。

『オークとインプですか……ではまずはオークの話からいたしましょう。オークは謎の集団に襲われたインプ達を救出したものの、激減して勢力も縮小化したとの話でした。今は残った者同士で細々と住処などで暮らしているそうです』

「オークの王はどうなった?それはわかるか?」

『オークの王は死に。そして今もオークの主は居ないため、誰にも統治されてはないとの事です』

 やはり、アレックスはあのまま死んだらしい。それにあの戦いでオークの多くが死んで今は烏合の衆と化してるみたいだ。俺はやはり守れなかったんだ。悔しくて思わず拳を握り締めてしまう。

『次はインプのことですが、よろしいでしょうか?』

 俺が拳を強く握り締めていることに気付いて、俺に気を使ってくれているようだ。俺はこくんと頷き続きを聞くことにした。

『インプも王を失い、オークと同じように大半が殺され、力を持たないインプ達はオークの住処へ移ってオークに保護されているそうです』

「なっ、バカな!?何でインプの王が死んでいるんだ!」

『詳細は不明ですが確かなようです。ガーゴイル達はあくまでその場の者には干渉せず、客観的な視点での情報のみとなってますので、そこまでは私達では分かりません』

 そう言って王は頭を下げる。王がそこまで低姿勢なのかも気になったが、今はインプが何故死んだのかが分からない。確かに俺達はあの時、確実に助けたはずだ。つまりその後"何かがあった"と言うことだろう。

「な、ならインプは襲われていただろう!?それはどうやって追い払ったか分かるか!」

 必死に俺は縋りつく。何が起こっているか分からない俺にはもうそれしか出来ることが出来ない。

『魔導具を使ったと聞いております。そして地上に居た魔物達も全て一掃して跡形もなくなり、同時にインプの国も全て吹き飛んだとのことでした。生き残った者は城――地下に居た者だそうです』

 つまりは、魔導具によって魔物とあいつらの死体も根こそぎ吹っ飛んだと言うことだろう。(埋葬する約束を守れなくて、すまん)と俺は心に強く思う。

『ロレジャー。お前はこのお方の力になって差し上げるのだ。私はもう先は長くない。お前が足となりこの方を支えろ』

「親父!?それは願ってもないことだが、どういう意味なんだ?」

「俺も教えて欲しい、いったい俺はなんなんだ?」

 王に俺とロレオは縋る。しかし、王は首を振って答えようとしない。何故そんな大事な事を話してくれないのだ。

『まだ、貴女のためにも答えることが出来ません。今は……、ごほっっごほっ』

 せきこむ王に慌ててロレオは近寄って背中を撫でる。この王は今にも死にそうなほどの病を抱えていることをすっかり忘れていた。しかしその王は再び口を開く。

『今は、運命を共にする者をお集めください。全てを知るのはそれからでは無くてはなりません』

 王はそう言って俺のこと――俺の本を指差した。そして王はロレオに向かって言った。

『ロレジャー。あのお方の本を手に取り、本を開け。お前なら必ず開ける』

「なっ!王は知っているのか?この本は何なんだ!?そして本を開く条件は!?」

『それも教えてくれる者がいつか現れます。その時まではどうか』

 そう言って王は俺に向かって頭を下げた。きっと本当は伝えたいのだがどうしても伝えられない理由があるらしい。俺にはまだ分からないが、きっといつか答えてくれる者がいる。それまで俺は戦い続けるしかないのだろう。

「アキラいいか?俺はよく分からないんだが、本を開くぞ?」

「ああ……、俺もロレオもいつかは知ることが出来ると思う」

「おう、そうだといいな!」

 そう言ってロレオは俺の首に掛かる青い本を手に取り、そして開いた。

『我々の魔法は"俊足"です。直接的なものではありませんが、きっと貴女を助ける力になることでしょう』

 最後に王の言葉を聞こえた瞬間、世界は真っ白な光りに飲み込まれていった。



  ***



―ドクンドクンッ!

 俺が目が覚めると、何故か俺の心臓は鳴り響いていた。

「うっ、ここは…?男にはなっているがここはどこなんだ?」

 今は日が落ちて暗くなっているため、周囲が確認し辛い。立ち上がるとどうやら俺は山の中で倒れているみたいだ。

「あれは…泉か?それに川……まるで最初に【ユークレース】に着いた時の場所に見えるな」

 前方を見やると薄暗いつつも、確かにあの時の俺が横を沿って歩いた川やイリアと会った時の泉に見える。そこはイリアからハーピィに侵略されたと聞いている。つまりここはハーピィの領土と言うことになる。

(それよりも、なんだろうか、さっきから嫌に心臓が鳴り響く)

 【ユークレース】に着いてから、とても嫌な予感がする。とても嫌なことが今まさに起こっている。そんな不安な気持ちで心臓がドキドキとして痛む。


 その時どこからか声が聞こえた。

――『…っ…ちゃ……!!』――

 俺の心臓がドキンと高鳴った。この幼い声は多分ルウだ。きっとルウの特殊能力であるテレパシーによるものだ。しかし心臓が高鳴ったのはそんな理由じゃない。何でこんなに必死になってあいつは呼びかけているのだろうか。

 俺は波長を合わせるように精神を落ち着かせていく。ルウによるテレパシーはほとんど掠れるようにしか聞こえない。恐らくルウがエルフ領に居るため、距離が離れすぎているからだろう。

――『おにっ…ん……た…けて!!』――

(っ!?俺に、助けを求めているのか!?いったいなにが……?)

 俺は必死に心を落ち着かせる。慌てては波長が崩れてすぐ聞こえなくなってしまう。

――『おね…ちゃんが……!!』――

 上手く聞き取れないテレパシーにもどかしくて手が震える。おねえちゃんつまりイリアのことだろう。イリアに何があったというのだろうか。

 心臓を鷲掴みにされているような気分の中、俺は必死に精神を研ぎ澄ませてテレパシーに集中した。


 そして――

 俺の耳に届いた言葉はとても辛い現実だった。


――『おねえ……んが……死…じゃ…た……!!』――


 俺の異世界の旅はまだまだ続く






ということで次はユークレース編になります。


いきなりペースがマッハですがまだまだあります。きっと。

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