俺の妹は半人半鳥
ユークレースは和みますねぇ…ペツォッタイトは中身女なのに男らしいというか何と言うか。
ヒロイン追加です。
出来るだけペツォッタイトとユークレースは1話毎移動になるよう調整していきます。
一部文修正しました。ルウの名前に国名を追加しました。
「ん、トーヤ平気?」
俺はイリアにレザーガントレットを外した状態で、近くの森の中で膝枕をしてもらっている。俺はこちらに来た時、泣きじゃくってしばらくの間取り乱してしまったから、イリアは着替えを済ました後、膝枕をしてくれた。
俺がぼんやりとしていたせいか、心配しながらも微笑んでくれているイリアが目の前にいる。俺はイリアの顔をそのままぼんやりと見ながら考え事をしていた。最後にインプが言った言葉をだ。
「なあ、魔導具って知ってるか…?」
「魔導具?知ってるけどそれがどおおっ!?」
俺がいきなり立ち上がったからイリアはびっくりしたみたいだ。だが俺はそんなこと気にしている余裕はない。
「詳しく教えてくれないか?効果と発動条件について」
「え、ええ……。魔導具は発動魔法の効果を増幅させるため、触媒などのアイテムを使って元の魔力を巨大化するものと言えばいいかな。補助道具的なものよ」
「つまりは、魔力を増大させて強大な魔法を発動するってことでいいのか?」
「う、うん。それで合ってる」
「そうか……」と言いながら俺はまた膝に頭を乗せる。かなり図々しいかもしれないがここはとても落ち着く。落ち着いて考えないとまた取り乱しそうだからだ。女の子に触れ合っていたいと思うのは男の性だと思う。膝枕は置いといて話の続きをしようか。
「じゃあ、魔法が存在しないところで魔導具を使うにはどうしたら良いんだ?」
「無理じゃない?そもそも元が存在しないのだもの」
イリアの言うとおりであそこには魔法が存在しない。それでもあの状態では使えることが出来たと言うわけだ。それが俺にはわからなかった。
「俺がさ、世界を行き来してるって言ったらイリアは信じるか?」
「うん、信じるよ」
イリアは俺に向かってニッコリと微笑みながら言うんだもんなぁ。こう来るものがある。それは置いといて、一応理由を聞いておくか。
「どうして信じてくれるんだ?とても胡散臭く無いか?」
「理由は2つ。居るはずの無い男なのと1ヶ月毎日探したけど見つからなかったからよ」
「おまえ、1ヶ月間ずっと俺を探してたのか……?」
さすがに照れる。もしや俺やっちまったか!とまた期待したものの「他のエルフに捕まって殺されないか心配だった」とのことだそうで。つまり再開した時に、俺に抱きついてきた理由は「トーヤ(殺されてなくて)良かった」と言う意味だ。マジ騙された。
「お前、天然だな……」
***
俺とイリアはそのまま森の中を歩き始めていた。日は夕暮れ時。イリアは歩き出す前からレザーガントレットは装着済みだ。生足はもう見えない。
「そうか、ハーピィの侵略がかなり進んでるのか」
「うん、トーヤと逢ったあの泉ももう近寄れない」
ここはエルフの国【アウイナイト王国】に近い場所だ。危うく同じ場所に出たかと思ったが、やはり毎度飛んでくる位置は変わるらしい。
「そういやアレックスって確か俺と会っていない間に巨大化してたが、お前はなんか変わったこと起こったりしなかったか?」
「うん、あったよおお!?」
また俺が思いっきり肩を掴んだので驚いている。無理はないかもしれない。
「どんなことだ!?大きくなったのか!?胸か!?胸なのか!?」
「ち、違う!そっちは少しだけ!じゃ、じゃなくえーと、身体能力って言えばいい?物凄く上がったから驚いたよ」
「身体能力…?つまりは、俺の本を開いてからだよな?」
「うん、そうだよ。トーヤが居なくなった日から凄い上がった」
つまり本を開くことで何かしらの力が吹き込まれる、と考えていいだろう。アレックスの場合巨大化してたな。あれは明らかに異常だ。でイリアは身体能力が上がったらしい。どちらにしても身体的にブーストが掛かるみたいだな。
「じゃあちょっと見せるよ、はっ!」
イリアは声を出すと一っ飛びで木の上までジャンプして片膝のまま俺の方を向いている。
「どおー?トーヤ見てたー?」
「おー!!ばっちり白いのが見えてる!」
「えっ?きゃああーー!!」
あ、間違えた。
「とにかく!ジャンプ力と瞬発力が上がったって言えばいい?」
「ふぁい、ふぁかりまひた」
頬をかなり腫れさせて俺は返事する。パンツを見たことを凄い怒ってらっしゃって往復ビンタです。裸は見せるのにパンツはダメってよく分からないよな。ってことは当然ブラもダメか、女の子はよく分かりませんな。
「そうだ、この本もう一度開けるか?」
「んー、あまり開きたくないけどやってみる……、ん、ダメみたいね」
やはり本を開くことは出来なかった。本を開く条件が何かあるはずだ。時間、場所、人物。何かの共通点があるかもしれない。しかし身体的ブーストは本を開いたものだけに効果があるだけらしく、俺には一切影響がないってのも残念な話だ。
そのまま2人で森の中を歩き続けていたら、突然どこからか声が聞こえた。
『……くっ……ひっ……』
泣声らしき声が聞こえてきた気がする。気のせいかと思って隣のイリアを見るがイリアも聞こえたらしい。こんな森の中で泣声を出すってどういう時だろうか。
「イリア、とりあえずばれないように近寄ろう」
「うん、声はこっちから聞こえる。森の中なら能力も使えるから任せて」
そう言うとイリアは前を歩いて誘導してくれた。こういう時エルフは頼りになるな。魔法を使わなくとも多少恩恵があるそうだ。
そして森が開けたところに1人の――
「イリア、あれはハーピィの子じゃないのか?何で森で泣いてるんだ?」
「分からないけれど、まだ小さいハルピュイアみたいね」
森の開けたところの中央に居るため、こちらからは遠目でしか確認できない。何故1人で敵国の領域に入った上で、1人泣いているのかが不思議でたまらない。
「イリア、俺は近づいてみたい。あの子を放って置いてはいけない気がするんだ」
「うん、私もそう思うけどハルピュイアだよ?何をされるか……」
何人もの同属が殺されてしまったエルフにとっては、例え泣いている子供相手でも無条件で近寄るほど無警戒なことは出来るわけが無い。とはいえ、ここで見ているだけなのもあれだ。
「俺だけ行ってくる。お前はちょっと見ていてくれ」
「わかった、気をつけてね」
ぎゅっと俺の手を握るイリア。だからそう言うのが勘違いの元になるんだって言いたいが、柔らかくて暖かい手を振り解くほどの理由ではない。
そして俺は泣いているハーピィに近づくことにした。
―ガサガサッザッザッ
『だ、誰!?エルフ!?』
バッと一気に俺に向かって振り向く。さて俺はなんて答えるべきか。
「俺はエルフじゃない。耳を見ればわかるだろ?」
俺の顔はちゃんと耳が出ているので分かりやすいはずだ。
『ほんとだ…エルフじゃない……なら何なの?』
「んー強いて言えば人間なんだろうけど、種族に人間って居る?」
『聞いたこと無い……』
俺と会話することで緊張がほぐれたらしい、近寄るなら今がチャンスかもしれないな。
「近づいていいか?その綺麗な羽とか近くで見たいからな」
『それはそうよ!だって私はハーピィの王族なんだから!』
自身満々に羽を広げるハーピィ。しかも王族ときましたか。
(考えてみたら俺って王族とばかり巡り会ってるな……イリアもそうだし、アレックスも一応そうだったし、あのインプもか。何か関連性があるかもしれないな)
俺はそのまま近寄ることにした。相手が近寄るなとも言わなかったし問題ないだろう。そのまま歩き続けて俺はハーピィの子の前まで来た。
このハーピィはその姿は髪は赤く短髪のショートだ。胸は微乳に太い布で包帯のように巻かれている。手には大きな七色の綺麗な羽がついており、下半身は毛深く、そして鳥の足に鋭い爪が付いている。
胸は残念だがこれはこれで良いな。俺はそのままそいつの横に座った。近くで見ると可愛らしく整った顔をしている。まさに理想な妹がハーピィになったらこんな感じになるのではないだろうか。そもそも妹がハーピィってのが変だが。
『あんた、何者なの?』
「俺も分かんないんだよね。それを知りたいのが今のところ第一目的」
『きおくそーしつってやつ?』
「最近流行ってるのかそれ。俺はちゃんと記憶はある」
ふーんとか頷きながら俺をジロジロみるハーピィ。上目遣いで見るからかなり可愛いから困る。乳は微乳のため、上から覗き込んでも谷間すら覗けん。足はやっぱり毛深いが何も穿いてない様子。とはいえ直接見えたりもしない。
「で、お前はどうしてこんな森に?」
『ん…命令された』
「命令?お前誰かに命令されてるのか?王族なのに」
聞いても俯いて答えてくれない。そろそろイリアを紹介すべきなのだろうか。
「なあ、絶対に危害を加えないって約束するからエルフの子を連れてきてもいいか?そこで知り合ったんだが」
『エルフ!?だ、ダメ!!絶対に…』
見ると物凄く震えている。エルフに対してハーピィはかなり有利なはずだ。そこまで震えるほどの相手でもないはずなのだが。
「絶対に危害を加えたりしない。それでもダメか?」
『わ、わかった信じる。嘘ついたら許さないから』
涙目でそう俺に訴えるハーピィ。こんな子をどうやって騙すと言うのだろうか。騙したやつが居たら俺は女verの鉄拳を食らわしてやりたい。そして俺はイリアに向かって手振ってを招いたら、すぐにイリアは来てくれた。
『ひっ!エ、エエエルフ!』
震えるハーピィ。どう見ても図は逆のはずだよな。とりあえず俺はハーピィの頭を撫でておいた。
「こんばんは、名前はなんて?」
「ああ、そういや聞いてなかったな。お前の名前なんつーんだ」
いつの間にか俺の影に隠れてるハーピィに対して名前を聞く。とても可愛くて抱きしめたい。
『ルウユラウ・T・スグラザード……』
「ルウユラウ?ルウでいいか。んでこっちのはイリアね。で俺はトオヤ」
「あっ、名乗ろうとしたのに何で邪魔するのよ」
「お前の名前が長すぎるんだよ!当たり前だろうが」
名乗るのを邪魔されたイリアはプンスカと怒り出す。怒っててもこんな美人だと得するだろうな。でも男が居ない世界なら関係の無い話か。さて話を戻すとしよう。
「ルウ、聞きたいことがある。何でハーピィはエルフに侵略してるんだ?」
「ん…命令されてるから」
「命令…?」
再び聞けば何か変わるかと思ったが、やはり答えは先ほどと変わらなかった。そもそも誰に命令されてこんなにこの子は怯えているのだろうか。
「話を変えるが、ハーピィの数が激減したってのは本当なのか?」
俺はルウは黙り込んでしまった。その震えが尋常でないことにも触れ合ってる俺にはわかる。とても怖い思いをしたとしか思えない。
そして、ルウは口を開いた。とんでもない事実が明らかとなった。
「ほとんど、殺された。私の目の前で……いっぱい…ひっぐっうぅっ…」
そのままルウは泣き続けてポツリポツリと自分の境遇を教えてくれた。
「はぁー、何と言うことだ……」
あれから宥めて全て話を聞いた。まとめるとこういうことだ。ルウの国【タンザナイト王国】はハーピィ族で統一されている。だが突然、正体不明な連中に襲われた。そして王族の中で一番幼いルウを拘束した上で、他のハーピィの王族をルウの目の前で皆殺しにされたという残酷な話だった。そして今そいつらがハーピィの国を乗っ取っているらしく、ハーピィはそいつらに逆らえず、命令でエルフに侵略させられていた。と言うとんでもない話だった。
「そうだったんだ……」
イリアも気を落としている。まさか襲ってきたハーピィすらも全員被害者だったなんて知りもしなかっただろう。でもいくら理由があろうが、襲ってきた時点で相手も加害者だからなんとも言えない状態になっている。
「なあ、ハーピィはそんなに弱くもないのに何でそんなに一方的に?」
「分からない。攻撃が通じなかった。私達の風が一切利かなかった」
今のルウは俺の腕の中に居る。先ほどまでずっと俺の胸で泣いていたからだ。なんか知らんがいつの間にかなつかれていた。イケメンパワーは恐ろしいな。
「イリア、そう言うのってありえるのか?風が効かないなんてさ」
「分からない。何かしらシールドを張ったとかなら分かるけど」
イリアでも情報不足で分からないらしい。いったい何者が襲っているのだろうか。
その時、俺達の後ろからとてつもない恐怖が迫り来ていた。
『キャハハハ……キャハハハ……』
どこからとも無く笑い声が響く。
ルウの体が信じられないぐらいに硬直した後にブルブルと震えている。まさか。
「誰だ!?どこに居――
―ズバッッ!!
「ひぎゃあああ!!!」
突然、俺の腕の中に居るルウが悲鳴を上げる。ルウを良く見ると綺麗な翼が誰かに斬られた。斬り落とされてはいないが物凄く出血している。
「くそ誰だ、ぐわぁぁ!!」
―ザシュッッ!!
俺が立ち上がると背中から思い切り斬られた。相手の姿が一切見当たらなく、何が起こってるのかさっぱり分からない。
「トーヤ!!大丈夫!?こ、これは何なの!?」
イリアでも分からない状態らしい。とにかく遠くから遠隔攻撃しているか、あるいは近くから潜んでいるかどちらかだ。
「とりあえず森に逃げるべきだ!あそこなら――イリア逃げろ!!!」
俺はイリアに話しかけようとした瞬間姿が見えた。黒いローブを着て、鋭く血がこびり付いてる鎌を持った小さな少女の姿で、大きさは俺の顔2つ分だった。ローブから覗く少女は金髪であったが、その目はあまりにも赤くなっており、とてもじゃないが生き物として判断できそうにもない。
―ズバッッ!
全てスローモーションに見えた。その小さなローブの子が鎌を凄い勢いで振り、イリアの背中が大きく斬られていく様が俺の目に写った。そしてイリアの綺麗だった髪の毛が風に乗り散り散りに分解されていく。あの美しかった髪は無残にも胸の裏辺りから全て切断され、背中には大きな傷を負ってしまった。
「イ、イリアーー!!」
俺は急いで抱きかかえると、かなり深い傷だった。死ぬ傷ではないけれど、俺が注意をしなければあいつに気付いて避けられたかもしれないんだ。俺の横では翼の切られたルウが横たわり、俺の前には綺麗な髪を斬り落とされ、背中に大きく傷を負ったイリアの姿があった。
「俺は……俺は!俺はぁ!!!」
また俺は守れなかった。力が有る無しなんて関係無い。ただ目の前で傷つく者を見るだけで我慢が出来なくなる。
俺は怒りのあまりで俺の中の何かが燃え上がり、どんどんと強く燃え上がる。この魂までもが包まれるほどに俺は燃え上がった。そして俺の口が自然と動き出し始めた。
「(天道なる日の下に、灼熱の地獄に生きし悪魔よ。我の御心を持って、その灼熱の大地を導け!)――フューリアスブレイジングバースト!!」
―ズゴゴゴゴゴゴゴッッ
物凄い音を立てて辺り一面が炎に包まれた。そして炎が姿を変える。全てを包み込む怒りの炎。草木も水も、そして大地までも溶かしつくす。
『ギャアアアー!ギャギャギャーー!!』
先ほどの黒いローブの少女が悲鳴を上げる。だが俺の瞳には全てを飲み込むことしか映らない。辺りはどんどんと火に包まれ焦がされ、その炎は天まで届くかの勢いだ。周りの被害は甚大で、今後この辺りは焼け野原となるだろう。
そんな俺を見兼ねて2人は止めに入る。
「やめて!もうやめて!」「おにいちゃん!怖いよ!」
イリアとルウが俺に抱きつきながら俺を止めようとしている。俺は我を失っていたみたいだった。2人が声を掛けてきたことで、俺はハッと意識を取り戻すかのように辺りを見回す。魔法は急激に衰え消えていく。俺が魔力放出をやめたからだ。
『ギャギャギャギャ!ギョエエ!!』
まだ黒いローブの少女は死んではおらず再びこちらを狙ってくるがその姿はもう完全に目に見えるものになっていた。
「ごめん、イリアにルウ。とりあえず話は後だあいつを倒さなければいけない」
「うん、後でお仕置きね」「ん、頑張る」
イリアとルウは返事をしてくれた。傷だらけだとしても姿が完全に捉えられてる以上、もう遅れも取らない。
「あいつの名前と特性分かるか?」
「名前はリッチって言う名前だったと思う」
「リッチ…?うーん、聞いたことないね」
ルウが名前を教えてくれたが、イリアでも正体は分からないらしい。とにかくあいつの名前は【リッチ】で姿形は小さい死神みたいな感じか。透明化はまるであの透明の板を思い出す。あれは流体物無効化だったはずだから風は無効化されてもおかしくはない。でも俺の炎が利いたのはよく分からない。熱には弱いのだろうか。
俺達は手負いのリッチへ攻撃を開始する。ルウは手負いのため飛べない。イリアも手負いだが、2人とも頑張る様子だ。どの世界も女は強いものだな。
***
リッチは簡単に倒せた。姿を見られるようになったら一直線でしか攻撃してこなかった。恐らくオークより低脳なのか、それともそう言う存在なのかもしれない。まるであの時の天使を思い出すのは気のせいだろうか。
それよりも俺は今の状態に困惑している。
「あのー、イリアさんとルウさんは何故に私を拘束しているのでしょうか?」
気付いたら何故かイリアとルウが俺の両方の腕を捕まえている。生易しいものではなくて、逆らえばポキッてな感じできっちり固定されている。
「話して。どうして火精魔法が使えたか答えなさい」
「おにいちゃん、話さないと殺さなくちゃいけなくなるかもしれないよ?」
気付けばルウがおにいちゃんと呼んでいるがまあいい。かなり物騒な話になっているらしいし、とりあえず訳を聞こう。
「悪いが何のことか分からない。そもそもどうして使えたかすらわからない」
「嘘はダメだよおにいちゃん……」
ルウが喉元に爪を引っ掛けている。目が据わっていて、かなり怖い。
「すまん、本当にわからないんだ!そもそもお前達が怒ってる理由すらわからん」
「それは火精魔法がこの世界に存在していないから」
イリアが答えてくれたが、使えたのに存在しないとよく分からない言葉だ。イリアは少なくても嘘は付かないんで本当のことだろう。そして何故使えたのか分からない魔法。いったいなんなのだろうか。
「というか初めて魔法使えたばかりで本気で分かんないんだ!本当だって!」
そう言うとようやく信じてくれたのか開放してくれた。でもルウお前は楽しがってやってただろう?俺には分かるんだぜ。
「うわ、こりゃひどいな…」
辺りを見回すと一面焼け野原。とんでもない威力のを使ったらしい。今後封印決定。
「あなたがやったんですけどね!」
エルフの森を焼き払われたせいか、イリアが怒っている。
「見渡しはよくなったよねー」
何故か機嫌がいいルウ。よくわからんパーティーになってしまったようだ。
「それより傷の手当てせんと、さっきの分からん尋問で怪我って…なんでお前ら怪我治ってるの?」
「ん?治したからよ?」
イリアが平然とそんなことを言うが、いったいどう言う事だろうか。
「んーと!おにいちゃんはバカだから知らないんじゃない?」
「あ、そうだねールウちゃんは物知りだね。えらいえらい」
どうやら先ほどの魔法を秘密にしていたことで、まだお2人とも怒っているらしい。本当に冤罪なんですが。
「エルフの王族にのみ使用できる治癒魔法があるのよ!」
自慢顔で手を腰に当てて言うイリア。俺はスカートが捲りたくなったんだがやったら怒られるだろうか。
「んじゃールウはなんか使えるんか?」
「フフフー聞いて驚け!」
幼い声で片羽上げててめっちゃ可愛いなぁ、高い高いしてあげたくなっちゃうよパパ。
「私はー、テレパシー使えるよ!」
「テレパシーか電話みたいなもんかいまいちだな」
「な、なんだとー!!おにいちゃん生意気だ!」
パコパコと頑張って羽で叩くが、羽箒で払ってるだけにしか感じない。
「問題はリッチだよなぁ……数は一匹じゃないんだろうし、たくさんいるだろうしな」
ポスンと草地に横たわる。いつの間にか夜になっているため行動は不可能だ。
「バーンッ!」と言いながらボディプレスをかましてくるルウ。ちなみに鳥類のせいかとても軽い。持とうとすれば男の状態で片手で持てるぐらいだ。体重が軽い事をイリアが羨ましがってたな、
「うん、ルウちゃんの故郷も助けてあげたい」
空を眺めながらイリアは言葉にした。俺もそう思う。こんな年増もいかない幼女の前で虐殺とかとんでもないだろ。絶対に救ってやりたいものだな。
「ありがとーおねえちゃんっ」
そう言ってルウはいつの間にか俺の側を離れてイリアと仲良しだ。エルフとの間のいざこざも無くなってほっとする。
「ああ、そういやルウは夜行性だから元気なのか……俺はもう眠いよ」
初めて魔法を使ったせいか、かなり眠気が酷い。簡単に言えば残存魔力と残存体力は比例するんだろうな。そもそも大規模な魔法を出すこと自体がありえないとかイリアには言われた。
ちらっと横を見るとイリアが髪の毛を弄っていた。そういや斬られた髪は治せないのか。
「ごめんな、髪の毛短くなっちまって。女の命って良く聞くけど平気か?」
「大丈夫。そのうち伸びるし、それに誰かが死んだりする方がもっとイヤ」
「おにいちゃん、私は元々短いけど命が短いってこと?」
「そーじゃねーよ。女の魅力といえば髪、胸、腰、尻だろ!人によっては足とか手とかうなじとか…ああごめん。悪かったよ」
イリアに思いっきり引かれてるのに気付いたからすぐ謝った。「人を見た目だけで判断するなんて」と、言われたけど一般常識だろ。そういやここ常識がない異世界だったな。
「私、髪短い、胸小さい、腰はどう?お尻も?」
こちらに向けて腰や尻をフリフリしだすルウ。頼むから止めてください。幼女が俺の目の前でそんなことしてムラムラしたら――
「そうか!法律が無いのなら幼女に手を出しても問題ない!!」
グーでイリアに殴られました。
「はぁー…この世界にも慣れてきたな。とりあえず俺は魔法が使えた!そして火の魔法だ。かっこいいな!」
「火怖いから嫌い。だからおにいちゃんも嫌い」
さすがにそれはショックだぞルウ。うんかなりショックだ。
「ルウ!出来るだけ火精魔法を使わない!これでどうだ?」
「それなら大好きー!」
抱きついてくるルウを「可愛いなぁ」と、つい顔をにやけさせていたらイリアからジロリと見られている事に気付く。
「別にいいですけどね!ハルピュイアは見た目が成長しにくいだけだし!」
明らかに拗ねてるご様子。それにしても今なんつったかな。
「私子作りできる年齢だよ!おにいちゃんは私とする?」
「なんで男居ないのに子作りは知ってんだよ!!」
「なんででしょー。ん?これなーに?」
ルウが俺の赤い本に気が付いたらしい。
「ああ、それは――って勝手に開けるな!!」
思いっきりルウが開けようとしてたから止めた。危ない危ない。
「あーあ、また一ヶ月お別れかぁー」
イリアは夜空を見ながら呟いた。「何故?」と、思って再び首元を見てみたら。
「おまっ開けるなつっただろ!」
ルウが勝手に開こうとして、ほとんど開ききっていた。そして完全に開かれた。
辺りが光に囲まれ、全てを飲み込んでいく。また俺はあっちの世界に行ってしまうのか。そしてこいつらをまた置いて行ってしまうのか。
そんな目で見ていたら声が聞こえた。
「ルウちゃんはしっかり私が預かっておくから安心して行ってらっしゃい」
天然で、勘違いさせまくるやつだけど本当にたまらんな、このエルフは。
「ああ、行ってくる。んじゃ留守を頼むな!」
俺はそう言って【ユークレース】を後にした。
俺の異世界の旅はまだまだ続く
こんな可愛い妹が居たら私はもう…!とはいえハーピィなんですけどねー。合法で穿いてないOKです。だからなんだって話かもしれませんが。
女房と妹or娘にしか見えません。