表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/34

第8話:夢の中と夢の外

「美緒さんは、双真さんとはどう言った関係なんですか?」

「えっ!?」


双真を部屋まで運び、服を着替えさせ、ベットに寝かせた後、ホーミィは美緒に質問をしていた。


「どうって……幼馴染だよ?」

「いくつ位からのお知り合いですか?」

「小学校入る前からかな、あの頃、私イジメられてたから……」

「そうですか…それを双真さんに助けてもらっていたと」

「う、うん……」


美緒の顔が赤くなる。

その頃からもう双真に好意を抱いていたのだ。


「私はカリバーンに入学が決まって、初めて来るこの町を歩いていたら、いつの間にか裏路地へ入ってしまい、男の人に絡まれている所を助けてもらいました」

「双君、以外にベタな事したんだね……」

「とても嬉しかったです。一緒のクラスになった時、一番安心できる人が双真さんでしたので、パートナーになって頂きたいと思いました」

「でも、双君のパートナーは私だよ?」

「はい、なので譲っていただこうと思ってます」


その発言に美緒は驚愕する。


「ちょ! ちょっと待って!! 譲らないよ!? 双君は!!」

「パートナー制度は1ヶ月は強制力を持ちますが、一ヶ月を過ぎると、新しいパートナーを選ぶ事が出来るので……」

「そう言えば、そんなのあったね……」

(まずいっ! 一回決まればずっと一緒だと思ってたけど、ホーミィが全然諦めてない!!!)

「でもホーミィって他の人からも一杯声掛けられてるじゃん」


そう言うとちょっと寂しそうな顔をするホーミィ。


「その、悪い人では無い事は分ってるのですが、どうしても……」

「男性恐怖症か何か?」

「いえ、そうではないのですが、最初に絡まれた事が頭に残ってしまっていて……」


それって、絡まれたときの怖さなのか、双君に助けられた嬉しさなのかどっちなの。

重要なのはそこだよ……!!


「じゃあ女性のパートナーにすれば?」

「そう思い、声を掛けた事もあったのですが、他に一杯申し込んでくる人がいるからそっちにしたら? と言われてしまいました」


それは、ホーミィの人気に嫉妬しているだけじゃない………


「それに、必ずしもパートナーを決めなくてはいけないと言う事でもないので……」

「それで、もう少しで一ヶ月経つから、来月は自分のパートナーになって欲しいって事?」

「はい。そうです♪」


満面の笑みである。

ライバルとしては手強すぎる。

どうにかして他の男と引っ付けないと……でもどうやったらいいかな。

ブライト辺りは結構お似合いだと思うけど、本人に問題があるしなぁ。

あの軽そうなイメージが無ければ良い男だけど、未だに他の女性にも声を掛けまくって、撃沈記録更新中だからなぁ……


「ぐ…ぅ……!」


考え事をしていると双君から苦痛の声がした。

眠っていても辛いのだろう。

回復魔法で痛みを和らげる事しか出来ない自分が悔しい。

それも回復魔法なら、ホーミィの方が圧倒的に上手い。

今回自分は殆ど出る幕が無いのだ。


「双君……大丈夫かな……」

「大丈夫ですよ美緒さん、私達が双真さんを信じなくてどうするんですか?」

「そう……だよね。明日になったらいつもの双君に戻ってるよね」

「はい、過出力症は長くても半日位で症状が治まるので、明け方には元気になりますよ」

「うん、苦しそうにしてる時に、回復魔法で紛らわせてあげれば……大丈夫だよね」

「はい、大丈夫です」


こうして私と、ホーミィは一晩中双君の看病を続けた。





「お前……誰だ?」


違和感を感じる。

多分此処は夢の中だ。

それなのに、何か別の物が居る。


「お前か、私を倒した者は」


あの時の声がする。


「別に争う気は無い。私は褒美なのだから」


確か、倒した時にも同じ事を言っていたな。


「褒美って……どういう事だ?」

「勝手だが、お前の記憶を覗かせてもらった。私がその褒美その物だ」

「お前があの鱗なのか?」


頭の中に流れてきた情報を元に、俺はこの鱗を真っ先に入手した。


「正確に言えば鱗に封印されている物だ。お前達の世界では私の事を宝玉と呼ぶ」

「宝玉!?」


宝玉、強大な魔力を持つ魔物が極稀に発見される。

似た物に竜玉というものがあるが、これはドラゴンの力の一部が結晶化したものだ。

宝玉とは、その魔物の力その物が内装されている。

レア度で言うなら超激レアだ。

一番安い宝玉でも家が建つ程の値段はする。


「宝玉に意思があるなんて聞いたこと無いぞ。知らないだけかもしれないが、とにかく敵対心は無いんだな?」

「だからお前の夢を介して話をしに来たのだ」

「つまり、残存思念って事か……」

「少し違う。私は本体から分離した魂の一部だ。つまり、お前の倒したドラゴンと同じ魂を持っている」

「しかし、物好きだな、自分を倒した相手に話があるとは……」

「与えたのは良いが、使われなければ意味が無い」


使うか使わないかは本人次第だと思っていたが、どういうことだろう? 

使ってもらわなければいけない事情でもあるのだろうか。


「たしかに、使い方なんて全く分らないが…」

「先ずはお前の血を一滴垂らせ、その後に私の名を呼べば契約は成立する」

「契約って事は、俺にも何か制限が掛けられるのか?」

「生きている内はほぼ無い、死んだ後に少しある」

「内容は?」

「お前の血肉を貰い、私が復活する」

「って事は、わざと負けたのか!? 俺を次の肉体にする為に!?」

「違う、私もまさか負けるとは思っていなかった。だが負けてしまってはお前を次の寄り代にする以外、私が生きる方法が無いのだ。お前は力を得る。私は次の生を約束される。生きている内にデメリットはない。悪くないはずだが?」


確かに悪くない、褒美と言われた意味も使わなければ意味が無い事も理解した。だが………


「1つだけ条件を追加していいか?」

「内容による」

「俺が敵との戦闘中に死んだ場合、その時だけで良い、俺の仲間を守ってくれ。その後、仲間に契約内容の説明するだけでいい」

「………分った。良いだろう」

「契約成立だ。起きたら鱗に血を垂らして名前……なんて言うんだ?」

「バビロン」

「分った。これからよろしくな、バビロン、今の所はあまり出番が無いと思うけどな」

「なぜだ? 力があるのだから使えば良いだろう」

「今使ったら研究所が絶対何か言って来て、間違いなく面倒な事になる」

「私はこの世界に来たばかりだ。何も知らない、お前と共に過ごしながら色々見ていくとしよう」

「場合によっては盗まれる可能性があるんだけど、そう言うときはどうすればいい?」

「契約時に自動転移が設定される。世界の何処に居ても私を呼び出せるようになる」

「なら問題ないな。早速明日使わせてもらう」

「私は使えないんじゃなかったのか?」

「出番が無いだけさ、練習はする。お前を使っても絶対ばれない空間があるのさ」

「よく分からない世界だ……」

「じゃあ、楽しみにしててくれ。これから色々あるだろうから」

「ふむ……ではお前の人生を見せてもらうとしよう」


そうして、俺はバビロンと契約をするのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ