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第4話:入学式

「最近なんか自信無くなって来た……」


「何言ってるの双君? 今日は入学式でしょ?」


美緒との特訓を始めて2週間とちょっと。

最初の一回以外は惨敗だった。

カウンターは上手く行くのだが、魔力の消費量からするとシールドの方が大きい。

初日の様な位置取りのミスさえなければ結局は美緒の方が断然有利なのだ。

だが、一方的にボコボコにされていた訳でもない。

シールドの使い方や移動方法等参考に出来る所は多かった。

少しずつ取り入れていった結果、昨日は結構惜しい所まで行ってた気がする……


「昨日は結構惜しかったんだけどなぁ……」

「私がわざとミスした所に颯爽と突っ込んできて返り討ちにした奴?」


えっ、アレわざとかよ……


「マジえげつないわ……」

「騙せる相手は騙せるだけ騙す。勝負の世界は厳しいんだよ」


仰る通り……流石、首席卒業は伊達じゃないって事か。


「でもそこまで悲観する事はないよ? ハッキリ言えば、この期間でここまで成長してくれるとは思って無かったし」


お? 凹んでる時は流石に慰めてくれるのか?


「私の魔法をあそこまで見事にカウンターで返してくれたのは双君が初めてだし、近接戦闘に持ち込まれたら、私でもちょっと勝ち目が無いと思う。返ってくるって分ってるから避けられる部分もあるしね」

「でもそれが難しいんじゃないか……」

「そこは双君の工夫次第って所かな? おまけにまだ飛べないしね」

「え? 飛べるようになったぞ? 割と自由に」

「へぇ~、何時の間に……それじゃあ今日から空中戦も出来るね。飛ぶのに魔力を使いすぎちゃ駄目だよ?」


最初は慣れが必要らしいが、俺は思いのほかこの感覚に慣れるのが早かった。

後は、美緒対策に魔法を練習しているが、それは黙っておこう。

いきなり使って驚かせてやりたいし、その魔法は飛べないと半分も性能をいかせないで飛ぶ練習は必須条件とも言える。

使いこなせれば勝率もかなり上げられるんじゃないかな?

魔力消費が多いから切り札として使うか、最後の一発逆転狙いなら出来ると思う。


「ほら、入学式始まるよ?」

「ああ、分ってる、変われるかな…? 俺…」


やはり不安になってくる。

だが、このカリバーンなら昔の俺を知ってる奴は居ない。

だからこそ第一印象からネガティブな所を出さないように心掛ければそこまで苦労はしないはずだ。


「大丈夫、絶対変われるよ」

「というか変わるしかないんだけどな……!」


決意を新たに変わるための一歩を踏む出す。





「皆さん入学おめでとうございます。私が校長のアイルハイルです」


何度もテレビで見ているが、やっぱり実物は違う。

何と言うか貫禄がある。


「長い話は嫌われますので、簡単にまとめます。全ての事に興味を持ってください。何事にもまずは興味から始まります。そして、興味がある事を調べてください。分らない事があれば教師が助言やアドバイスをします。カリバーンの教師とはその為に居ると思ってください。以上が私からの挨拶です」


つまり、自分で成長する糧を見つけろって事か……


「長い話じゃなくて良かった……」

「あはは……卒業式の校長先生の話長かったからね…」

「卒業してからがうんたらかんたらってな……おっ、クラス分け出てるな見に行こうぜ」


俺と美緒はクラス分けを見に行った。

電光掲示板には沢山の生徒が居た。

これが全員一年生なのだろう。

俺のようにスカウトされた人はどれ位居るんだろうか……


「俺の名前が……無い…?」

「……そだね」

「アレー?」


おかしいな、入学手続きも済ませたし、学生証もちゃんと俺の名前だし……どういうこと?

とりあえず聞いてこよう。


「すみません、クラス分けを見に行ったのですが、僕の名前が無かったのですが……」


職員室に聞きに行くと、俺をスカウトしたエヴァンス先生がやってきた。


「ちょっと良いですか?」

「構いませんけど……まさか、やっぱり入学出来ませんでした。って言うオチですか?」

「いいえ、ちゃんと入学は出来ていますから安心してください」


そしてそのまま奥の応接室まで案内される。


「それで、話って何ですか?」

「宮元君はどのクラスに入りたいですか?」

「はぁ…?」


言っている事がよく判らなかった。


「実はスカウト組は自分で入りたい組を選べるので、クラス分けには表記されていません」


何そのVIP待遇……というか本当にそんな事が許されるのだろうか?


「じゃあ、好きな所選んで良いって事ですよね?」

「はい、ですがの暫くすると、教師から引き抜きが来ると思います」

「何ですかそのプロ野球のトレードみたいなシステムは……」

「スカウト組は余剰生徒なのです。本来の数より多いと言う意味で、そうなると自然とクラスの人数が変わってきます。人数が多いほうが、校内イベント等の時に有利なのです」

「別にそれならランダムで振り分けちゃえばいいんじゃないですか?」

「カリバーンには教師にも成績表があり、余剰生徒のスカウト組のみ、引き抜きが許されています。本人に希望が無い限りはスカウトした教師のクラスに編入されます」


成程そう言うシステムなんだ。

でもあまり気分の良い話では無いなぁ……


「スカウトしてもらっておいて何ですが、スカウトのメリットって何があるんですか?」


「裏側の事情になりますので、詳しくは応えられませんが、アヴァロンでの地位がかなり向上すると思って頂ければ結構です。つまり私は、宮元君のレアスキルに投資をしたのです。ですから、何が何でもレアスキルを自分の物にしてもらわないと困ります」


まぁ色々有るんだろうな……アヴァロンにも……


「引き抜きが来たらすぐに教えてください。本人の意思が最優先されますが、私は宮元君を手放す気はありません」

「具体的にどんな方法で引き抜きが来るんですか?」

「一番多いのはお金です。手付金として掲示したあのお金です」

「あ…アレですか……」

「はい、あのお金はに宮元君を私の所に置いておく為の物です、卒業したら支払われます。逆に言えばその金額より多い金額を掲示してくる教師が居る場合そちらに行く人も居ます」


世知辛い……おまけに、普通の人と違って、スカウト組は学費も免除されている。


「すいません、ちょっといいですか?」

「なんですか?」

「教師って一体幾ら給料もらってるんですか?」

「聞いて良い質問と悪い質問がある事を知ってますか?」

「でも聞きたくなっちゃうじゃないですか!! あんな金額掲示してくるんですよ!!?」

「私がそれだけ宮元君を評価してるという事です。それに、教師はどちらかと言うと副業です。本来私はトレジャーを生業としています、その時に稼いだお金を使いスカウトを行っています。私の様に教師を副業をする人も少なくありません。新しい可能性を開拓する為には必要な事です。アヴァロンから補助金も出ますので、宮元君が心配する事はありません」


ありえないよ……

あの金額なら卒業しただけで人生イージーモードに入っちゃう……


「話を戻しますが、宮元君はどうしますか? 私のクラスでなければ、あの手付金は支払われませんよ?」

「先生のクラスに麻井美緒って居ますか?」


結局の所俺はこういう性格らしい。

色々あったが3年間一緒に居たのだ。

やはり一緒のクラスになりたいと思う。

それに、あの金額は魅力的だが、俺がカリバーンで生き残る為にはまだ美緒が必要なのだ。


「友人ですか? それとも恋人?」

「幼馴染ですよ、放って置くとえらい事になる……」


えらい事になるのは事実だけどな……


「分りました、少し待ってください」


そう言って名簿を取り出して、名前をチェックする。


「居ませんね……」


そう言うとおもむろに携帯電話を取り出し電話をし始める。


「もしもし? 先生のクラスの麻井美緒さんですが、私のクラスの誰かと交換してもらえませんか?」


うわー……何言ってるのこの人。

スカウト組以外引き抜き出来ないんじゃなかったのかよー。


「はい、分りました。ではお願いします」

「突っ込んでいいですか? 色々と」

「クラス分けのデータミスと言う事にしておきます、最初に聞いておいて良かったです」

「普通クラス分けってどのクラスも平均になるように設定しますよね…?」

「見たところ麻井美緒さんはクラス的には真ん中より少し上位なので比較的簡単でしたよ?」

「え……美緒で真ん中より少し上なんですか……?」


驚いた……俺からすれば美緒はかなり上の実力だと思ってたからなぁ……


「でも最低の評価で入ってきた人が卒業の時に最高の評価で卒業して行った時もありますから、今の評価はクラス分け専用と言ったところです。本当の実力が分るのは、一ヵ月後位でしょう」

「とりあえず、クラス分かったので失礼します」

「頑張ってくださいね? メルアドを教えますから、聞きたいことがあったらメールをください。後メルアドを教えた事は他の生徒には内緒にしてください、去年問題が起きたので……」


ちょっと詳しく聞きたかったが、聞いてくれるなオーラが出ていたので聞かなかった。





先生と結構長い話をしていた為、思った以上に時間が経っていた。

生徒も殆ど見当たらない、だが校門には見慣れた人物が立っていた。


「どうだった…?」

「めっちゃ疲れた……」

「本当に入学取消になってないよね…?」

「大丈夫だったよ、クラスはお前と一緒だ。腐れ縁だな」

「ほんとに!? やったぁ!!」


全く……本当に嬉しそうな顔して……俺も人の事言えないけどな……


「じゃあ、帰るか」

「うん!」

「強くならないとなぁ……」

「何か言った?」

「いや、なんでもない」


井の中の蛙大海を知らず……

俺は今まで以上に強くなりたいと願うのだった。

隣に居る奴の笑顔を守るために。

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