第27話:GO集会とタッグバトル
「ブライト。例の件はどうなってる?」
「順調です。予定通り本日貸切となった体育館に希望者全員が集まるかと……」
「分かった。じゃあ司会を頼む」
「イエス、マイロード」
別にフルフェイス被って声色を変えているわけでもないが、GOプロジェクトの宣伝役を頼んだ以降ずっとこの調子だ。
「暑苦しい中集まってくれてありがとうございます。GOプロジェクトを企画した宮元双真です」
自己紹介をすると会場が沸いた。
「皆さん、色々な人から情報を聞いて此処に集まってくれたと思います。中にはGOプロジェクトを良いと思っていない人も居ると思います。ですがここでもう一度説明させてもらいます」
「GOプロジェクトの目的、それは来月行われるサバイバルゲームに連敗をしているルティス校に勝つ事です。勝って私の赤点を取り消して夏休みを獲得することにあります」
とてつもない個人的な理由だが、GOにとっては俺が夏休みを獲得する事が目標でもある。
「そして、私が見事夏休みを勝ち取った場合………」
会場に集まった漢達のがゴクリを唾を呑み込む。
「俺が夏休みに行く海水浴で俺と同じクラスの麻井美緒とホーミィ=ミクフィールの水着ムービーをGO参加者全員に公演する!!」
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
鼓膜が破れん限りの絶叫が体育館に響き渡る。
今年の一年の中で色々な意味で最も注目を浴びている美緒と、性格とスタイルの良さで上級生からもパートナー申請が後を断たないホーミィ。
その水着ムービーだ。
カリバーンに居る男子生徒なら誰もが一度はお目にかかりたいだろう。
だが勿論、それを良しとしない者もこの会場に居る。
良しとしない彼らが何故いるかと言うと、3連敗だけはしたくないと言う連中だ。
カリバーンの威信にかけて3連敗はしないと誓いを立て、何処から漏れた情報でこの会場に来ている者も居る。
「だが、闇雲に戦っても勝利は望めない。一致団結をしなくては強大な敵を倒す事は出来ない。その為にGOプロジェクトを発足した。会場に居る中で各学年成績上位3名を選出してその中で戦略を考えるのに最も適した人物を指揮官としてその指揮官の元で戦う。これは私が考えた作戦だが異論はありますか? 異論がある人は手を挙げてください」
当然の事ながら誰も手を挙げない。
どう転んでも、個人個人の連携よりも統率の取れた軍隊の方が勝率が良いからに決まっている。
「では作戦は決まりました。これから私は個人的に相手の戦略魔法について調べようと思います。幾つか目星がついているので、毎週この時間帯に進捗を発表し、可能な限りの対策をしていこうと思います。では最後に……GOの正式名称は!?」
そして会場から1つの言葉が紡ぎだされる。
「グランドおっぱい!!!!」
まぁ、2人とも……特にホーミィは大きいからな。
そしてすかさずブライトが最後の連絡を通達する。
「では皆さん、来週指揮官を発表しますので楽しみにしていて下さい。これにて解散します。尚このGO計画については他言無用です」
なんたって、美緒とホーミィの許可取ってないからな。
バレた時の事なんて考えたくも無い。
「信じられない……あんなに集まるものなのか……」
グランはこさっきまで起こっていた事が信じられないようだ。
「人間の欲は底が見えないからな」
「これだけ集まるって予想していたのか?」
「まぁね、100人位集まるんじゃないかな? って思ってた」
「良くそれだけ人を集める情報ルートを知っていたな……」
「まぁ俺の情報ルートじゃないんだけどな。蛇の道は蛇に聞けって言うだろ?」
なぁ? ブライトさん?
「お前の友人関係が怖くなってくるよ……」
「まぁ、俺も本気で敵に回したくは無いかな……ああいうタイプは団結すると信じられない位強いから……」
「逆に味方に付けてしまえばこれ以上頼もしい物も無いと……」
「あぁ、後はバレない事を祈るだけだ……」
「どうなっても知らないぞ…?」
「最悪死なない手段は用意してある……」
「何の話してるの?」
突然横から美緒が話しかけてきた。
突然の事過ぎて何時もより過剰にビビってしまった。
「うおあぁ!!」
「なっ何よ!? そんなに驚く事!?」
「いや、グランとサバイバルの事について話しててさ、つい夢中になっちゃって気が付かなかった」
聞かれた!?
いや、聞かれてたらそれこそ般若になっているだろう。
何とかセーフか。
ホーミィはともかく美緒は手加減と言う物を知らないからな。
「ふぅん、順調なの?」
「あぁ、属性魔法の腕は格段に上がった。寧ろ今試験受けたら赤点にならなかった自信すらある」
「どういうこと?」
そして今まで自己流で使っていて、グランに基本からおさらいしてもらった事を話した。
「ありえない……とも言えないか。本格的な魔法を始めたのは本当に数ヶ月前だったし、私が教えておけば良かったかなぁ……」
むしろ、そのほうが2人だけの時間が増えて良かったかも……と思ってももう遅いのだった。
「まぁどっちにしろ今は使えるようになったからもう大丈夫だ。お陰で練習してる魔法も捗りそうだ」
「双真、今日も頼むぞ」
「あぁ、俺の方こそよろしく頼む」
そうしてグランとプライベート空間へ行こうとすると……
「ねぇ、一緒に練習しない? もう双君はもう秘密の場所には通ってないんでしょ?」
「まぁ、俺は構わないけど、グランは?」
「別に構わない」
「じゃあ、ホーミィも一緒にして4人でやろうか」
「では何処で練習しますか?」
そして、本当に突然現れるホーミィ。
瞬間移動の魔法でも使ってるんじゃないかと思う。
「じゃあ4人ともプライベート空間で良いんじゃない?」
「えっ!? プライベート空間取れたの!?」
「まぁな」
(専用って言わなくて良いのか?)
(専用って言うと毎日の様に来て練習にならなくなる)
「へぇ……でも双君なら取れても不思議じゃないか」
「じゃあ、プライベート空間へ行こうか」
美緒とホーミィは初めてプライベート空間に入ったらしく興味津々に色々見ていた。
「へぇ……本当に何も無い空間って感じだね」
「一応8時までだから」
一通りの注意事項を2人に説明する。
「じゃあ、各自練習って感じでやろうか」
「え~、それじゃあつまらないよ。タッグバトルやろうよ!」
「チームは?」
「私と双君、ホーミィとグラン様」
やっぱりグランは様付けられるのがデフォルトなんだな……
「どうする? グラン?」
「俺は別に構わないぞ? 良い刺激になると思う」
「私も異論ありません」
ホーミィまで乗り気なのか……ならいいか。
「よし、やろう」
「ルールはどうする」
「公式ルールでいいんじゃ? サバイバルも公式ルールだし」
「じゃあ、魔力の枯渇と降参で良いですね?」
でも考えてみると、美緒と一緒に戦った事は無かったな。
まぁいっちょやりますか。
そして、練習試合が始まった。
グランは中間距離、ホーミィが遠距離なのでどちらも俺達を近付けさせないよう弾幕を張り、美緒が援護し俺が弾幕を潜り抜けると言う役割だ。
「よっ! ほっ…!」
俺はホーミィとグランの二重弾幕を何とか掻い潜っているがホーミィとグランも後退をしているので結果として距離は縮まない。
美緒は俺に直撃しそうな魔法と威力が高い魔法を後ろから相殺している。
「双君! もっと突っ込んでよ!!」
「無理言うなよ!!」
これ以上突っ込んだら避けきれないっての!!
即席のタッグだと言うのになんでこうも息の合った攻撃が出来るもんだ。
「グラン様、次行きます!!」
「分かった。合わせる」
グランは俺に向かって直接攻撃を当てるつもりで、ホーミィはグランまでの進路を妨害するように弾幕を張る。
上手く連携が取れているが、俺と美緒はどちらもとにかくどちらか1人を倒さないといけないのでどちらかと言うと個人プレー寄りになってしまっている。
まぁ、結果は言うまでもなく俺と美緒の惨敗である。
「う~、双君があの時突っ込んでれば」
「いや、あそこで突っ込んだらグランの良い的だって」
「でも、一回弾幕全部吹っ飛ばしたじゃない? もう一回あれ使ってくれればよかったのに!!」
「アホか!! どれだけ魔力使うと思ってるんだよ!」
エアロウィンド、風属性の魔法で自分を中心に回りに強風を巻き起こし周りを吹き飛ばす魔法だ。
確かに弾幕を飛ばすのには有効なのだが早々連発できる物ではない。
まぁ後々の事を考えなければ出来るのだが、まだ練習が残ってるのに魔力全部使っては本末転倒だ。
「まさか、エアロウィンドを使ってくるとは……弾幕が全部こっちに返って来てその処理をしてる最中に攻撃されたらこっちが負けていただろうね」
「その時美緒は何してたんだ?」
「こっちにも弾幕が跳ね返って来て避けるので精一杯」
まぁ、エアロウィンドは一対多を想定した魔法だからな。
「それは仕方ないな……」
「あーあー、負けちゃった」
「まぁ俺と美緒はチームワークがなってなかったからな。グランとホーミィはそれぞれの役割分担が上手く出てきてた」
「ホーミィさんが俺に合わせようとしてくれたからだよ」
「グラン様が上手く足止めしていたので合わせることが出来ただけです」
こういう風にお互いの良い所を生かせることが出来れば、こういう良いチームプレイが出来るんだけど、俺と美緒には無理だった様だ。
「まぁ、良い経験が出来たと言う事で、各自の練習に戻ろうか」
俺は属性魔法。
グランは反射神経。
美緒は基礎魔力の底上げ。
ホーミィは攻撃魔法全般だ。
時々ホーミィの攻撃魔法が此方に飛んでくるのが刺激になる。
そして、それぞれが気がついた点を確認し合い、今日の練習は終わった。
「んーたまにはこういう練習も良いな」
実際気分転換にもなったし、自分では気がつけない点を指摘してもらえた点も大きい。
「そうだね」
「またやりませんか?」
「プライベート空間が借りれないと駄目だけどね?」
まぁ、毎日此処で練習してますとはまだ言えないな。
「そうだな、また今度な」
こうして俺達はサバイバルに向けて練習に励んだ。