第26話:GOプロジェクト始動
「双真ちょっと待ってくれ」
「ん?」
グランと練習を始めて自己流で10分程練習した所でグランが止めた。
「そのやり方は?」
「自己流だけど? なんせまともな魔力を扱えるようになったのは入学してからだからな……」
「そうか……なら仕方の無い事なのかもしれないな。ちょっと言う通りにやってみてくれ」
グランの言われた通りにすると、あら不思議。
今まで難しかった魔力の属性転換が物凄く簡単に出来てしまった。
「こんな簡単に出来たんだ……」
「他にも基本的な事が抜けていそうだな。おさらいした方が良いだろう」
そして俺はグラン先生から魔法の扱い方基本編を教えて貰う事になった。
「どうだ?」
「かなりいい感じ。今までどれだけ面倒と手間をかけていたのか良く分かったよ……」
本来は中学で習うらしいが、自閉症だったので中学の授業は殆ど覚えていない。
テストとかは一夜漬けだったっけ……
「今度は俺の番だ。お勧めの護身術とかはあるのか?」
「いや、それが俺って子供の頃ヤンチャ坊主でさ、喧嘩ばっかりしてたから喧嘩慣れしてるだけなんだ」
「師匠から教えてもらったのは?」
「剣術の基礎だけど……グランの武器は剣でいいの?」
「まだ、武器までは決めていないな。俺が最も得意とするのは中間距離だから杖になると思う。だから近接戦に持ち込まれたときに咄嗟に切り返しの利く護身術が欲しいと思ったんだ」
「じゃあ、次元竜の杖を作ると言う事か」
「そうなるな。だが双真と同様妥協はしたくないから、まだ手は出さない」
次元竜、バビロンに付けられた種族名だ。
次元を突破して現れたので次元竜と名付けられた。
「近接距離なら短剣になるか……杖と一緒に持っても邪魔にならないし」
短剣は素手に殺傷力を高めたような物だからな。
防御に使う事の方が多いだろう。
「何か良い方法はあるか?」
「実際殴り合いするのが一番手っ取り早いと思う。俺の教えてもらった剣術じゃ役に立たないし……」
「ふむ、経験を積むしかないと言う事か」
「自然と動けるようになるよ。ある程度慣れると、日常の何気ない危険な事から身を守れたりもする」
「例えば?」
「人間って突然目の前に危険が迫ると体が硬直するけどそれが無くなる。魔法が使えない時に頭上から岩が落ちて来たとする。その時に体が動くか動かないかの違いかな?」
「普通は動けるんじゃないか?」
「それが案外動けなかったりする物なんだ」
ヒュっとグランの顔に拳を突き出す。
グランは驚くだけで反応が出来ない。
「な? ある程度慣れると、手でガードするか反射的に体が動くようになる。そうなれるだけでも違ってくると思うけど……」
「サバイバルまでに体得出来るか?」
「さぁ、そこまでは……でも体得できないまでも予行練習にはなるんじゃない?」
「分かった。頼む」
「じゃあ寸止めで行くな」
そして今度は俺の連続寸止めが始まるのだった。
「ビックリしたな、自分が思っていた以上に動けないとは……」
「大抵そんなものだよ。他次元に行くようになると自然と身に付くと思うけど学生で身に付けておけばこういう時に役に立つ」
「あぁ、双真の言っていた事が今なら理解出来る。明日もまた頼めるか?」
こういう努力を怠らない所がグランの凄い所だと思う。
俺も努力はするほうだが、それでもグランは凄いと思う。
「勿論。後は……」
「ん? 他にやる事があるのか?」
「あぁ、パーティって5人一組じゃん? でもサバイバルは400人以上参加するんだぜ? どうやったら有利に進められると思う?」
「幾つかあるが、息の合った者同士で無ければ中々難しいな」
「一番簡単な方法は指揮官を作る事さ。パーティ同士をチームにしてそのチームを幾つも作って統率する。サバイバルって言ってるけど、勝つ為に重要なのは個人の力じゃない。戦略さ」
「だが、どうやってそんな部隊を作るんだ? 全学年が対象だぞ?」
「人間を動かすのに一番簡単な物は何だと思う?」
「??」
「自分では充たせない物を充たせてくれる何かさ」
「どういう事だ…?」
そして俺はグランにそっと計画を耳打ちする。
「なっにぃ!!! そんな事したら……」
「大丈夫だ。本人達の了解を得ればの話だが……」
「俺は恐ろしくてそんな事は絶対に出来ない」
「じゃあグランは興味ない?」
「いや、そう言うわけではないが……」
そうだよね、グランも男の子だもんね。
「そう言う奴らが集まってくれるのさ。全学年単位でな……」
そして俺のGOプロジェクトが始動する。失った夏休みを取り戻す為に……!!