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第18話:幼馴染は王女様!

「今週は地獄の一週間だった……」


学校でチヤホヤされるのは、想定内の範囲で何とか留まってくれたが、マスコミ関係やその他の企業が必要以上にしつこかった。

CMに出てくれ、ラジオ番組のゲストになってくれ、更にはドラマの主人公をやってみないかと言う話まで出てきた。

全部断ったが、寮の玄関に報道陣が押しかけていた時は額に青筋が立ちそうになった。


勉学に集中出来ないと、エヴァンス先生に相談すると、次の日から寮内にはマスコミや企業関係の人間は来なくなった。

改善されなければ明日から学校行かない!!

と言ったのでエヴァンス先生はかなり慌てていた。


「あぁ……明日土曜日かぁ……」


俺のたった一言の失言で美緒に飯を奢る事になった。

半分位は自業自得だが。


「ドタキャンしちゃおうかな……」


とは言うものの、既に店の予約はしてあるので行かないわけにはいかない。

学校内であそこまで騒がれるのだ。

外に出たらどうなるか分かったもんじゃない。

息抜きが出来るかどうかも分からない。

あぁ、考えると頭痛くなってきた。寝よう……


(苦労しているな)

(75日持たないかもなぁ……)

(いい方法があるぞ)

(マジで!? 教えてくれ!!)

(新しい話題の人物を作ればいい。そうすれば自然とそちらに注目が向くからな)

(まぁ、言うのは簡単だけど、中々そう言う事って連続で起こらない物さ)


グロッキー状態が続いているので、練習にも余り身が入らない。

その辺をバビロンは心配してくれているのだと思う。

すると携帯電話が鳴る。美緒からだ。


「もしもし? 明日分かってるよね?」


美緒からだった。

どうやら明日の確認らしい。


「分かってる分かってる。明日は一日ぐーたら部屋で過ごす」

「違うでしょー!! レストラン連れて行ってくれるって言ったじゃない!!」


電話越しから怒鳴り声が聞こえた。

疲れてるから怒鳴り声は勘弁して欲しい。


「覚えてる。覚えてるから、10時にメインゲートな」

「よろしい」

「言っておくけど、ハメ外すなよ? 一応貴族以外は入れない事になってるんだから」


グランに紹介してもらって、マスターから入店許可はもらってるけど一応ち注意事項を伝えておこう。


「え…? そんな所行くの? 双君って貴族だっけ?」

「コネがある。だからそれなりの格好していけよ。次から俺が入れなくなる」

「そんな! 前日の夜にそんな事言われても!!」

「じゃ、俺寝るから」

「え!? ちょっ……」


言う事だけ言って携帯を切った。

明日の為に寝よう。

絶対体力が必要になるから。





現在の時刻は9時50分、場所はメインゲート前、服装はカジュアルな感じにしてみた。

特に変装はしていない。

どうせばれる。

なら下手に変装するよりは普通の格好の方がいい。


「お待たせ」


丁度いいタイミングで美緒が来た。

服装は、まぁミニスカート位ならいいか。

トップスも品性が崩れる物じゃない。

今風のお洒落と行った所だ。

多分何とかなる。


「あれか? 30分前に来て、何時来るかなぁ? って待ってたりしたのか?」

「まぁ、デートだし?」


デートにした覚えは無いんだけどな……


「2人に声かけられたよ?」

「おめでとう」

「むぅ……」

「まぁ、そうむくれるなよ。似合ってると思うぞ? その格好なら入れると思う」

「食事した後は当然繁華街だよね?」

「それは、今週の俺を見て言ってるのか…?」


普段から俺にべったりとくっ付いている美緒なら、今週一週間の俺の地獄を分かっているはずだ。

それなのに今の俺に繁華街に一緒に行けと?

自殺行為だぞ……


「だって、休日女の子を2人っきりで繁華街に居るなんてテレビで放送されたらそれだけで私達の関係が世間に知れるんだよ? もってこいじゃない」

「ご主人様とメイドの関係か?」


例の写真をチラ見せする。


「そ、その件はもう終わったでしょう!?」


よし、今でも効果あり。

これは長く使えそうだ。


「掲示板、動画サイト……」

「動画なんて初めて聞いた!! あるの!?」

「ある。タイトルは銀髪碧眼メイド少女ってのはどうだ?」

「食事だけでいい……」


俯きながら美緒は俺の提案を受け入れてくれた。


「ほとぼりが収まったら付き合ってやるよ」

「それはいつ?」

「………分からん。75日もすればいいんじゃない?」

「人の噂だからね……」


あははは……と言いながら俺と美緒はゲートを潜り、レストランへ向かった。






「トラットリアへようこそ。宮本様」

「こんにちはマスター。先日はお世話になりました」


本当にお世話になりました。


「いえいえ、早速私のお店に来て頂いているのですから、そんな事はおっしゃらないでください。私としては宮元様があそこまでお強いとは考えていませんでしたので…」

「でも、今の俺はあれで限界です。でももっと強くなります。あの人達に負けない位に」

「その意気です。宮本様なら必ず強くなれますよ。私の購入出来なかった分のオリハルコンを是非お役立てください」

「げっ!! マスター名前を出すのはマズイ!!」


俺とグラン以外でその名前を言うのは非常に不味かった。

だが、ばっちり美緒に聞かれてしまった。


「はい?」


しまった。

マスターに口止めしておくの忘れた。


(すみませんマスター、俺学校でオリハルコン持ってる事は秘密にしてたんです)

(そ、それは、大変申し訳ありません……)


マスターと思念会話を遮る声が耳に届いた。


「双君……オリハルコンってどういう事……?」


美緒の声である。

オリハルコンが売り出された事は既にニュースになっており、カリバーンでも話題に上がっていた。

20kgが5人に配当された事まで告示されたのだ。

その1人に俺が入っていることを知っているのは、あの場に居た6人とグランとエヴァンス先生だけ。


「実はマスターがオリハルコン競争で勝ったって話をグランから聞いてな? それを見せてもらおうと思ってた所で、美緒と約束をしたのさ。まぁタイミングがたまたま重なったって言うだけだ」


「双君が嘘を付く時、右足で半歩後ろに下りながら、説明が棒読みになる」

「……!!」


正に指摘されたとおりの事を俺はした。

完全に嘘を付いたことを見破られてしまった。

幼馴染って恐ろしい。


(凄いですね。彼女は……宮本様のお知り合いですか?)

(幼馴染なんです)

(本日は、すこし多めにサービスさせて頂きます……)


遠まわしに、お手上げですとマスターが言ってきた。


「分かった……白状する。でも誰にも言うなよ」

「分かってる♪ 分かってる♪」


絶対コイツ分かってない。


「確かに俺はオリハルコンを持ってる。けど今は持ってるオリハルコンを全部使って俺は武器を作ってる最中だ。オリハルコンが余るか余らないかは正直分からん」

「どれ位買ったの?」

「5kg」

「何処からお金捻り出したのよ!? 2500万円だよ!?」


全部正直に言うとまた厄介ごとが増えそうなのである程度ぼかす事にした。


「資金提供者が居る。5kgから俺の欲しい分と俺の全財産分を差し引いた分を相手に渡すって言う条件だった。実際俺の手元にあるのは3kgあるか無いか位だ。それを全部今武器に費やしてる」


「勿体無いですね……私に言えば無利子でお貸ししましたのに……オリハルコンはとても希少ですよ?」

「大丈夫ですマスター。その人は信頼できる人です。きっと渡したオリハルコン以上の事を俺に返してくれると信じています」

「そうですか。宮本様がそこまでおっしゃるのならきっと大丈夫ですね」

「じゃあ、料理を楽しみにしています。マスター」

「はい。任せてください」


本日のランチはマスターのサービスもあり、とても満足のいく物だった。


「やっぱり、マスターの料理は旨いわ……」

「うん、本当に美味しかったよ。あんな美味しい料理食べたの初めてかもしれない」

「あの! すみません!」


商店街を通りながら美緒とマスターの料理の話している最中突然知らない男に呼び止められた。


「あぁ……やはり……生きておられた……!!」


男は突然泣き出した。

外見は貴族。

それも着ている服は普通の貴族とは違う。

別次元の貴族なのだろうか?


「あのすみません。失礼ですが、どちら様ですか?」


男は涙を拭き、感極まった様な口調で答えた。


「私はブライティア王国に仕える騎士サンテと申します。貴方はアセリア王女のお知り合いですか?」


なんだ、痛い人か……王女なんて大層な人物がこんな所に居るわけ無いだろう。


「すみません、急いでるんで失礼します」


早々に話をつけて離れる。

俺の後ろに美緒も無言でついて来る。

そりゃあ見ず知らずの男にいきなり王女等と呼ばれても気持ち悪いだけだろう。


「ま、待ってください! 王女様!!」


男は美緒にしがみつく。

おいおい手を掴む位にしておけよ。

幾らなんでもしがみついたら……


「きゃああああああ!!!」


男は美緒の猛烈なビンタを食らった。


「双君!! 警察! 警察!!」


まぁ普通に見ればセクハラだよな。

美緒の言うことも最もだが。


「少し落ち着け、警察に行くのは同意するが、少し話を聞いてみよう。幾らなんでも必死すぎる。」


ビンタをされ冷静になったのか、俺が問いかけると冷静に答えてくれた。


「取り乱してしまい、申し訳ありません。まさかこのような所で王女様とお会いできるとは思いもよらなかったので」

「俺としては美緒が王女って事の方が理解出来てないから、ちょっと説明して欲しい。場合によっては本当に警察行くけど……」

「はい、ここに居られる方は、別次元にある王国、ブライティア王国の王女様です。間違いありません、お母様にとても良く似ておられます。これが写真です」


見せてもらった写真を見て俺は驚いた。

美緒と同じ髪の色。

そして目の色は美緒の片方の眼と同じ碧色。

そして、何処と無く美緒に似ている。

これは勘違いしてもおかしくは無いだろう。


「そっくりだな……マジで……」

「でも……写真を加工した可能性だって…!!」

「いや……俺達は初対面だ。その可能性は無いだろう」

「アセリア王女は12年前、失踪されたのです。突如出現した時空の裂け目に吸い込まれ、その後国を挙げて捜索をしたのですが、手掛かり一つ掴めないまま、その捜索は今日も続いています」

「12年前……拾われた……年だ……」


美緒が養子だということは俺も知っている。

美緒は幼い子供を亡くした夫婦の目の前に突然現れたのだと言う。

夫婦は神様が子供の生まれ変わりを授けてくれたのだと思い、その子供に亡くなった子供の名前「美緒」と言う名前を付けた。

当初美緒は次元を越えやって来た神の子とまで言われていたそうだ。


「おいおい……作り話にしちゃ出来過ぎてるぞ……」

「お心当たりがあるのですね!?」

「無い……とは言えないが、少し待って欲しい。突然すぎて本人が付いてこれない。それに此処は街中だ。場所を移していい?」

「承知しました」


何処にしよう。

まぁ不測の事態を考えると……


「お邪魔します」

「宮本君? 君はどれだけハプニングを起こせば気が済むのですか?」

「俺が知りたいです……おまけに今回は俺被害者側ですよ……?」


来た場所はプライベート空間、内容が重大な上不測の事態が考えられるのでエヴァンス先生に来てもらった。


「では話をまとめますと、麻井美緒さんは、ブライティア王国のアセリア王女だとおっしゃるのですね?」

「はい、その通りです。私も発見した時は驚きました」

「では私から現在の麻井さんの状況を説明します。麻井美緒さんは現在このカリバーンの生徒です。ブライティア王国の事は私も知っています。12年前に王女が失踪した事件も含めて……」

「双君……」

「何震えてるんだよ? まだ決まったわけじゃないだろう?」

「そうだけど……」


話し合いの結果、DNA鑑定をするという事で話が纏まった。

場合によっちゃ美緒の人生が大きく変わるだろうな。

そしてなんとDNAは一致してしまった。


「………」

「………」


俺と美緒は言葉が出ない。

サンテは泣き崩れている。

エヴァンス先生も本当に一致するとは思っていなかったらしくこめかみを押さえている。


「あの……私の事って秘匿扱い出来ないんですか?」

「12年間行方不明の王女が発見されたのです。国家レベルの問題は秘匿扱いは出来ません。その国の経済に関わりますから……」

「学校は……?」

「場合によっては……自主退学と言う形になるかもしれません……」

「そんな!!」


美緒が抗議の声を上げる。

やっとの思いで入ったカリバーンの自主退学……。

だがこれはそんな小さい問題ではない。

王女と言う物がどれ程の束縛を受けるのかと思うと、美緒はそれだけで体が震えるのだった。


「麻井さん、ブライティア王国はアヴァロンとも交流があります。黙っていたほうが返って麻井さんに危険が及ぶ場合もあります。宮本君」

「はい」

「席を外してもらえますか? これ以降の話は国家レベルのトップシークレットになります。麻井さんが王女と言う事も黙っていてください」

「分かりました」


俺はそのまま、プライベート空間を出た。


「はぁ……調べる事が増えたなぁ……」


俺は首をコキコキ鳴らしながら図書室へ向かうのだった。

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