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第16話:勝利の余韻と嬉しい報告

とりあえずカリバーンに帰ってきた。

オリハルコンを手に入れた興奮が未だに冷めない。


「あ……早く素材を持って行かなきゃ……」


日本刀の製作は半年ほど掛かる。

工房の方には材料と素材を説明した。


俺の名前を言っただけで、どの武器を作るのか一瞬で察してくれた刀匠は、話が分かりロマンの溢れる人間国宝だと思う。

気難しい人だと聞いていたが、俺の知っている日本刀の素晴らしさと実用性と作った作った日本刀を一生使い続けると1時間位熱弁した所、肩をガシっと掴まれた。


「任せとけ!! 俺の最高傑作を作ってやる!!」


快諾してくれた。


「あぁ、楽しみだ……楽しみでしょうがない!!」


俺はその興奮状態のまま、日本へ向かい、材料を工房に預けに行った。


「持って来たました!!」

「待ちくたびれたぞ!! 宮元!! さぁ! 見せてみろ!」


豪快な声が工房に響き渡る。

今年で齢70歳を越える人間国宝の声だ。

とても70には見えない程逞しい体と豪快な声をしている。


「よし! これだけ有れば十分だ。このオリハルコンに緋緋色金(ヒヒイロカネ)を加えるぞ? その方が少々重くなるが硬度は更に増す」

「爺さんに全て任せるよ」

「分かった!! 期待して待ってな! 俺の全てをこの刀に注ぎ込んでやる!! 出来上がるのは大体半年後だ。完成次第、お前に手紙を出す。好きな時に取りに来い」

「ありがとう、爺さん」

「但し、学校はサボるなよ? 学生の本分は学業だ。それを疎かにしちゃいけんぞ?」

「勿論、今から学校に戻るよ。報告しないといけない事もあるから」

「何かあったら、すぐに連絡を寄越すからな」

「分かった」


そして俺は今度こそ本当にカリバーンに帰るのだった。


「こんちゃー」


カリバーンに着いたのは丁度お昼休みだった。


「よぉ、双真、重役登校だな?」

「今日は朝から大変だったんだから労わってくれよ……」

「でも、家庭の事情で一日休みにしてきたんだろ? サボっちゃえば良かったのに」

「一応本分は学業だからな、サボってる間に追い越される訳にはいかないからな」


そして、エヴァンス先生から思念会話が飛んでくる。


(結果は?)

(失敗してたら、繁華街でヤケ食いしてますよ)

(なら! 手に入ったのですね!?)


エヴァンス先生も興奮気味だ。


(はい、必要な分は既に渡してきたので、後はエヴァンス先生の分だけです)

(私の分は?)

(2kgちょっとですね。バイトの効率が思いのほか上がったので、予定より多めに買えちゃいました)

(2kgも手に入れば十分です。本当に良くやってくれました。授業後プライベート空間で待っています)

(やっぱり、オリハルコン手に入ったのは言わないほうがいいですよね?)


これ以上有名になるのは本当に勘弁して欲しい。


(えぇ、それが賢明です、但しグラン君には報告しておいたほうがいいと思います。私の事も含めて)

(分かりました。では後で……それに、聞いて欲しい話もあるので付き合ってください)

(えぇ、新しい発見があったのでしょう? 是非聞かせてもらいます)


その後の授業内容も興奮が冷めず、殆ど集中が出来なかった。


「今日はどうしたの? 双君? 調子悪いんじゃない?」

「いや、そんな事は無いんだけど……ちょっとな。午前中に良い事と学ぶ事が同時にあってな。何時かまた会うんだろうなぁって……」

「……女?」

「あぁ、女性も居たなぁ……上品な感じだった」


興奮状態の俺は気付けなかった。

それが美緒の機嫌を著しく悪くした事を……


「ふーん、それで? どんな人だったの?」

「滅茶苦茶強い人だったよ……今度一緒になる時を楽しみにしてるって言われた」

「へえぇぇ~……美人さんだったんだねぇ?」

「確かに、顔も綺麗だったなぁ……」


ここで気がつけなかったのは俺の落ち度だと思う。


「私とどっちが良かった?」

「んー……向こうの方が大人の余裕ってのがあったからなぁ、そこが凄いと思った」

「……分かった」

「ん?」

「なんでもない」


その時美緒は何かを決意した顔をしていた。







そして授業後………


「今日ほど早く授業が終わって欲しいと思った日は無いです」

「教師の発言とは思えませんが……」

「私でもそう言う時位ありますよ? では早速見せてください」


オリハルコンを見たエヴァンス先生は目を輝かせていた。


「これが……オリハルコン」

「すっごく綺麗で最初に見た時、固まってしまいましたよ……」

「確かにとても綺麗ね……現物を見るのは私も初めてだわ……これ全部が私の分?」

「そうです」

「思った以上にありますね」

「はい……俺は鉄と同じ位の重さを予想していたんですが」

「考えていたより軽かったと言う事ですね」

「まぁ、そうなります。俺からすればありがたいですけどね」

「そうね、これなら私が作ろうとしている物を全部作っても残るかもしれないわね」

「俺も、ひょっとしたら防具にも回せるかも…?」


俺の分は全部工房に預けたので、どれだけ残るかは全く分からない。

まぁ、俺は武器が如何にかなれば、防具はじっくりと考えて行こう。


「宮本君、改めてありがとうございます。まさか本当に入手出来るとは思っていなかったです」

「まぁ色々あったんで、聞いてもらえますか?」

「いいですよ?」


そして俺は話す。

今日の午前中の事とそれで感じた事を……


「成程、そう言うことがあったのですか。話だけでは誰か分かりませんが、相当の使い手だったのでしょうね」

「そして、俺はとても運が良かったです。本来なら手に入れることは出来なかったのです」

「そうですね、そして私もその恩恵に預かってしまったと言う事は、宮本君に借りが出来てしまいましたね」

「でも、お金の都合付けてくれたじゃないですか、俺としてはそれで十分なんですけど…」

「いえ、私達トレジャーからすれば、お金は比較的簡単に手に入ります、鉱石を探す事の方が難しいのです。それに宮本君も今回の金額ならここを卒業してしまえば、手に入るのだからあまりお金の事では貸しにはなりません」


確かに、絶対に他の引き抜きに応じないと言う条件で、卒業したときの手付金を前借りしようとも思っていた。


「分かりました。この借りはどこかで使わせてもらいますね」

「はい、覚えておいてください」


その後にグランもプライベート空間に呼んで事情を説明した。


「本当にオリハルコンを取ってきたとは……冗談だと思っていたよ」


苦笑いしている。


「まぁ、全部お零れ頂戴って感じだったけどさ、後お前の事を知ってる人も居たぞ?」

「そうか、まぁ俺の家の名前は貴族の中では結構有名だからな、知っていてもそこまで驚きはしないさ」

「俺の武器を作っても余るようだったら、少しグランにもあげるよ、名前貸してくれたお礼に」

「いや、遠慮する。次の機会に自分で取ってくる事にするよ。双真が自分で取ってきたようにね」


成程、プライドだな。

俺が同じ立場でも多分同じ事言うな。


「そうか……がんばれよ。化け物揃いだから……」

「分かった。……それはさておきどんな武器を作ったんだ?」

「こればっかりは出来てからのお楽しみかな?」

「何時出来上がるんだ?」

「一応半年位って言ってたかな?」

「思ったより長くかかるんだな。大きい武器なのか?」

「いや、どちらかと言うと小振りに入るのかな? 片手剣だし」

「成程、タルワール系かレイピア系かな? それともアックス系か……完成したら見せてくれよな?」

「勿論。まぁあまり人に向けては使いたくない武器だけどな」

「武器と言う物はそう言うものだろう。アスカロンだって殺す為の武器なんだ。人には向けたくない」

「アスカロンもとんでもない武器だったけどな……一回しか使ってないけどそう感じた」

「そう言ってもらえると、俺も嬉しいよ。さて、じゃあ俺はこの辺で失礼させてもらうよ」

「おう、また明日な」

「あぁ、また明日」


グランがプライベート空間から出て行ったので1人になった。


(双真、バイトはもういいのか?)

(あぁ、目標は達成したからな、今日からはまたバビロンの宝玉開放の練習だ。コントロールは徐々に覚えていこうと思う)

(その方が双真向きだろうな。お前はあまりコントロールが上手くない。それは短所だが、それを補う事を覚えろ。そうすれば短所が長所に変わる事もある)


魔力は学年で一番でもコントロールは今でも平均以下だ。

バイトだって半分以上バビロンに任せていた。


(だが、直感による危険回避と反応速度は大した物だ。幼少の頃の喧騒も無駄ではなかったようだな)

(あの頃は何も考えてなかったからな、中学になってからだよ、初めて頭で考え始めたのは……)

(そうか……その結果が今のお前なら、私は何も言うまい)

(俺も異常だって事は分かってる。いつか解決させるさ。それがどんな結果になろうとも……)

(最悪の場合、殺す事も視野に入れなければならんぞ?)

(分かってる。けど、それが俺のケジメになるのならやるしかない)


そして、案外その時は近いのかもしれない………



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