表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

第1話:浪人生

2次創作に引っかかった小説は全て削除しました。代わりにこのオリジナル小説を書いていこうと思います。駄文ですが、どうかよろしくお願いします。

「はぁ……やっちまったなぁ……」


開口一番がこの言葉である。


俺は宮元双真、15歳、実家で祖母と二人暮らし、黒髪、黒眼、卒業式だったので適当に髪は切り揃えた。

本日ディートハルト中学を卒業し……そのまま無職になった。


「双君? 大丈夫?… まぁ大丈夫には見えないけど…」


麻井美緒、同い年、幼馴染、1人暮らし、碧眼のオッドアイ、薄い蒼色の入った銀髪を腰まで伸ばしている。

容姿端麗、成績優秀、首席卒業、何かと俺の世話を焼いてくる。


「美緒はいいよな…アヴァロンに入るんだから…」


首都アヴァロン、この都市の名を決めた施設の名前、このアヴァロンを運営するために町が一つ作られた。


アヴァロンとは次元連結管理局の事だ。

人類は魔法の力と科学の力を融合させ、別次元へ行く方法を発見した。

それにより、新しい発見や研究が日夜行われている超巨大施設だ。


「志望はトレジャーだけどね?」


アヴァロンには様々な業種が存在する。

未開の地を開拓するために必要な全てを一ヶ所に集めた施設と言うと簡単だろう。

トレジャーとは言葉通りの「探検」他の次元へ移動し、発掘や採取を行う業種だ。

採取した物を調べる研究所、危険な魔物や魔獣等に対抗するための騎士団、分かり易くに分けるとこの3つだ。


「カリバーンか。夢のまた夢だな…俺にとっては」


カリバーン、アヴァロンの研究所や騎士団の幹部候補生を育成するための学校。

入れればエリートコース確定、卒業をすればアヴァロンの何処かに配属される。

卒業が出来なかった場合でも、アヴァロン傘下の企業の何処かに内定が必ず貰える。

アヴァロン傘下企業は首都アヴァロンで言えば公務員のような物だ。

少なくとも路頭に迷うような人生は絶対に送らないだろう。


「また危険なのを選んだな…」

「そう? 本当に新しい次元に行く場合はそうだけど、殆どは既存の次元で経験を積むからそうでもないよ」

「美緒なら容量良くやると思ってるから心配はしてないけどな」

「双君だって、ちゃんとやる気を出してれば……」

「その話はしないでくれ」


トラウマに触れられ、思わず口調が荒くなった。


「…ごめん、でも大丈夫! ちゃんと私が面倒見てあげるから!」


満面の笑顔を俺に向けてくる。


「俺って…ヒモ?」


「あたしの方が優秀だからね~?」


事実だから返す言葉もない……あぁ…自信なくした…


「明日から引き籠るわ…俺……」

「ちょ、ちょっとぉ……とりあえずバイト探したら?」

「仕送りが何時途切れるか分からないしな……婆ちゃんの世話があるから短時間でガッツリ稼げるようなバイトが良いな」


俺の両親は2人とも家を空けている。

おまけにどこにいるのかさっぱり分からない。

しかし仕送りが続いているので何処かでは生きてるらしい。


「最悪の場合、魔力系のバイトなら手伝ってあげるから…」

「魔力系ねぇ……確かに家でも出来て尚且つ手伝ってもらえるけど……最悪の場合な」


この世界の労働方法は2種類ある。

肉体系労働と魔力系労働だ。

肉体系は時間給だが、魔力系は成果報酬制なので内職の一つとして捉えられる。

魔力系なら家で祖母の世話をしながらでもこなせるが、完全に自分の魔力=成果の計算になる。

なので本人の魔力が高くないと肉体労働系の方が給料面は良かったりする。


「私はこれから卒業パーティ行ってくるけど……」

「俺の答えは決まってるだろ?」


俺は中学の3年間は根暗で通してきた。

美緒以外の友達もいない。

なので卒業パーティ等に出ても意味はない。


「そうだね……後で家に寄るから」

「あぁ…楽しんで来い」


俺は小学校から中学校に上がる時の事件で変わった。

それまではどうしようもない問題児だった。

毎日喧嘩をして怪我や問題ばかり起こしては祖母に世話をかけていた。

両親が居ない分余り愛情と言う物を受けてこなかったからだろうか……


いつものように喧嘩をして家に帰って来た時、いつも「おかえり」を言ってくれる婆ちゃんの声がしなかった。

ついに婆ちゃんにも見放されたか…と思ったがそうではなかった。

家の中にいつも嗅いでいる匂いがした。

それはとても善くない匂いだ。

俺は靴を履いたまま匂いの濃い方に走りそして見つけた。床は紅い………報復だった。


すぐさま病院に搬送され、一命を取り留めたが、足が無くなってしまった。


目の前で起きた惨劇……怒り、叫び、泣き、今までの自分に後悔した。


やった奴を探し出すのに時間は掛からなかったが、復習する事は出来なかった。

証拠を集め警察に通報しそいつを少年院送りにする事が精一杯だった。


生まれて初めて取り返せないものを失った俺は、これ以上失う事を恐れ、自分を閉じる事にした。

中学に入って直ぐの頃は俺の噂を聞きつけて他のクラスから呼び出されてボコボコにされたこともあった。

だがその内興味を無くしそれ以降は成績の悪く根暗な学生生活を送った。


その頃から美緒は俺に世話を焼くようになった。

祖母の足が不自由になってしまったので家事を一人でやらないといけなくなった俺に「困ったときはお互い様でしょ?」と言うと毎日俺の家に出入りして家事を手伝ってくれるようになった。


「ただいま」


家に帰ると、婆ちゃんは玄関まで来てくれていた。


「おかえり、卒業式はどうだったかい?」

「まぁ、こんなもんかなって……」

「そうかい……」


婆ちゃんが寂しそうな顔をする。その真意は今の俺には分からない。


「後で美緒が来るってさ」

「じゃあ、夕飯準備をしておかないとねぇ…」

「あぁ、買い物も済ませてきてくれるだろうから下ごしらえの準備しておくよ」

「双真、明日からは……」


婆ちゃんが優しく声を掛けてくる。

受験に失敗した事を気にしているのだろう。


「バイト探す。それと勉強もする。来年の今頃はが学校の制服を買いに行ってるさ」

「無理せず、自分のペースで歩いてくれればいいよ? 婆ちゃんは……」

「大丈夫、家を出たりはしないよ、バイトも魔力系のにする予定だからさ」


だって、婆ちゃんの世話をしないといけないじゃないか……俺がこんな風にしてしまったのだから……


後悔をしても始まらない。

3年間の根暗生活は今までの喧騒の頃と比べとても穏やかな日々で、美緒に家事教えて貰いながら過ごした。

中学では誰も友達は出来なかったが、この穏やかな日々にそれなりに満足している。

喧嘩をしていた頃が嘘のようだ。


「……………」

「……? 婆ちゃん?」

「本当に、それでいいのかい?」


目が訴えてくる。それが本当に自分がやりたいことなのか……と


「大丈夫だって……準備してくる」


少なくとも婆ちゃんが天国に逝くまでは俺がちゃんと世話をするよ。

その後の事はその時考えるさ。


「お邪魔しまーす」


準備が整った頃に丁度美緒が帰ってくる。


「おかえりなさい、美緒ちゃん」


婆ちゃんは決まって美緒が帰ってくるといらっしゃいではなくおかえりなさいと言う。

ボケが始まっているのかもしれない。


「お疲れ美緒、何買って来たんだ?」

「卒業式だからね、お肉買って来たよ~」

「ほぉ、贅沢だな、お腹周りは気にしなくていいのか?」


こんな風に気軽に話せるのは美緒と婆ちゃん位で、他の人と話すと途端におどおどし声が小さくなる。

あの事件が俺をここまで変えてしまうとは俺自身思っていなかったが、今となってはそこまで悪い物だと思っていない。


「大丈夫!余分な脂肪は全部ここに溜まってくれるから!」


そう言って腰に手を当て胸を突きだす。


「あぁ、ハイそうですか」

「何よ~その反応、もうちょっと何か言う事ないの?」


以前大きいですね、と言って冗談半分に触ったら、セクハラ扱いされた事があったな……


「小さくなった?」

「え!? そんなこと無い筈、先月計った時は確かはちじゅ……って何言わせるのよ!!」


スパァン!


叩かれた……そうか、80を超えてるんだ。

この年でそこまであるとは、将来有望だな。


「何かほかに言いたいことある…?」


美緒の額に青筋が立っている。


「焼肉? すき焼き?」


こういう時は真面目な話に切り替えた方がいい。


「すき焼き」

「卵買った?」

「一通り買ってきたよ。二度手間はしたくなかったから」

「……いつもすまんなぁ……」

「それは言わない約束でしょう…? おじいさん…」

「それは悪かったのぅ…ばあさ……」


スパァン!


また、叩かれた。

今度は無言、酷いなぁ……


「「「いただきます」」」


3人で囲む食卓。

中学時代から続くこの見慣れた光景。

だが後1ヶ月するとこの光景から美緒が外れる。

理由はカリバーンが寮制なのだ。

必然的に美緒は家に来ることが少なくなるだろう。


「双君」

「どうした?」

「私が居なくなると寂しい?」

「やっぱり寂しいかな」


寂しいという言葉に反応したのか美緒がグッとこちらに近寄る。


「やっぱり? でも大丈夫、日曜日はちゃんと顔を出すから、そんなに寂しがらなくてもいいよ?」


ニコニコの笑顔、美緒は笑うと可愛い奴だと思う。

だが、彼氏が出来たとか言う噂は聞かない。


「でもバイト始めるから、場合によっては家に居ないかもしれないぞ?」

「魔力系のバイトだったら家でも出来るよ?」

「肉体労働系のバイトだったら、外だろう?」


突然美緒の顔が真っ赤に染まる、あー…これはまずいかもしれない


「私とバイトどっちが大事なの!?」

「食事時の話題じゃなくなった気がする…」


だが、美緒の眼は真剣そのものだ。


「美緒に決まってるじゃないか」

「双君がそういう顔するときって大体誤魔化す時だよね…?」


馬鹿な……! 何故バレている……!


「学校でもさ、そういう風にしていれば、きっともっと違ったと思うよ…?」


美緒が急に寂しそうな顔をする。

美緒が指摘した通り、中学校時代の俺は基本的に無口だった。

まともに喋れるのは美緒と祖母位だ。

バイトを始めるのなら、まずはこの根暗を直さなければいけない。


「…………」


3年間続けてきたからだろうか、思うように人と話せなくなっている自覚はある。

以前に比べ恐怖に敏感になったのだと思う。


「まだ…駄目?」

「直さなきゃいけない事は分かってるんだけどな……」

「急には無理だと思うけど、頑張って?」

「世話かけるな」

「お互い様でしょ?それに幼馴染だもん、放っておけないよ」


こういう美緒の優しさには本当に助けてもらってる。

これからは自分で自立をしていかなければいけない。

以前に逆戻りをしようとは思っていないが、美緒と話している位の会話を他の人とも出来る位にはならないとな……


「御馳走様でした、今日は俺が片づけるわ、食器とか洗面台に移動させておいてくれ」

「ん、わかった」

「双真」

「どうした?婆ちゃん」

「今日もお疲れ様、眠くなったから寝かせてもらえんかい?」

「分かった。じゃあ行くよ? 婆ちゃん」

「待って双君、お婆ちゃんは私が連れて行くよ」

「わかった、頼むよ」

「じゃあお願いするね、美緒ちゃん」


美緒は車椅子に座った祖母を寝室まで連れて行った。


「さて、皿洗いをしている間に風呂も沸かしておくか……明日に備えないとな」


片付けと風呂掃除が終り、風呂を入れ始めた所で美緒が帰ってきた。


「あれ?意外に遅かったな」

「後一ヶ月でこの慣れ親しんだ家ともお別れなんだなぁってお婆ちゃんと話してた」

「そうか、そういえば、美緒は寂しくないのか? 寮生活になるけど」

「楽しみにしてる部分もあるからそうでもないかな?」

「そっか、しかしアヴァロンかぁ……」

「憧れだったよね……」

「あぁ、俺も強くなって騎士団に入りたいって思ってた時期だってあった」

「こっちは心配しっぱなしだったんよ? あの頃……」

「あの頃は諦めるって事を知らなかったのさ」


昔の俺は喧嘩をしつつも、将来はアヴァロンで働きたいと思っていた。

だからこそ、頑張って首都アヴァロンにあるディーハルト中学に進学したのだから……


「ねぇ…双君、お風呂借りて行っていい?」

「別に良いぞ。今沸かしてる所だ」

「……後で飲まない?」

「そこまで変態じゃない」

「覗かない?」

「後でカメラ見る」

「…………」

「冗談に決まっているだろ……」


俺に白い眼差しを向けた後、美緒は風呂に入った。

その後風呂から出た美緒を見送り、俺も風呂に入り自分の部屋で寝る事にした。


「明日から、本当の俺デビュー…」


ゴソ……


ベッドで意味不明な発言をしていると、何かが動いた気がした。


「……ゴキブリ?」


ガタガタガタ!!


「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

「きゃあぁぁぁぁ!!!!」


2人で大絶叫、婆ちゃん起きないかな…?


「ご…ゴキブリは嫌ぁぁぁぁ……!!」


あれー? なんで俺の部屋にさっき見送ったはずの奴がいるんだろう?


「なぁ、不法侵入って言葉知ってるか?」


とりあえず、法律について聞いてみる。


「私と双君の辞書の中には存在しない言葉だよ」


ナポレオンかお前は……


「おいおい…まさか朝まで此処に居るとか言い出さないよな?」

「うん……」


はい? うん……とか言ったか? ちょっと待て、今は午後10時を過ぎた所だぞ?

寝るには早いが、明日からの新生活の為に早く寝ようと思ってこの時間に寝ようと思ったんだが……


「そぅくん……」


甘えるように俺の名前を呼ぶ美緒、普段とのギャップが激しく俺を揺さぶった。


「と、突然どうした、それもこんな時間に……」

「卒業しよう…? 私達も……」


そう言って美緒はベッドに入り込んでくる。


「おい、お前何考えて……」


幼馴染とは言え、そこにいるのは幻想的な銀髪、整った顔立ち、赤みを帯びた頬、少し潤んだオッドアイ、そして上目遣い……これで反応しないのなら男としてどうかしていると言えるだろう。


「私…そぅくんが欲しい……」


ギュッと抱きしめられる。

2つのふくよかな膨らみも押し付けられる。正直ヤバイ


「お前…何しに来た…?」


何とか意識をしないように心掛けるがそんな事は到底無理である。


「ここまで来て言わせるの? 3年間ずっと通い続けたんだよ…? もう私の気持ちに気付いてるでしょ…?」


そういえば、3年間でそれなりにイベントもあった。

それには何回か偶然ではなく作為的に行われたと感じる物もあった。


「お前の気持ちは分かった……だが、俺の気持ちは分からないだろう…?」


「そぅくん…私は別に……」


それ以上言わせてはいけないと思った。

それ以上美緒に何かを言わせると、俺の歯止めなんて利かなくなる。


「やめろ!」

「…っ!」


言葉に怒気が入り、美緒は体を竦ませる。


「それ以上は言うな、俺を怒らせたくなかったらな」

「ぁ…あぁ……」


美緒の顔が歪む、目に涙が浮かぶ。


「ヤダ……ヤダ……嫌いにならないで…お願い……だから……」


美緒はぶるぶると体を震えさせながらしがみついてくる。


「美緒、お前には感謝してる、お前が居なかったら間違いなく何処かで挫折してる」

「……………」

「お前がどれだけ本気なのかも分かった」

「私じゃ……不満…?」

「不満じゃないさ、けど「今」じゃない。突然すぎて俺がついて行けない」

「私が今日どれだけ覚悟してきたか全然分かってない……」


相当覚悟をしてきたんだろうな。

本当に……それに応えられない俺はチキンなんだろうな……他の理由もあるけど……それが解決しない限り、俺は美緒と付き合うことは出来ない。


「今日の卒業は一つでいいんだよ」

「私だけじゃ……止まれないよぉ……」


本当は俺も限界寸前なのに、なんでコイツはこういうことばっかり言うかねぇ……!!


「今日はこの部屋で泊まっていけ、俺はリビングで寝る。もう一回来たら…出入り禁止だ」


そう言って俺は全速力で部屋を出てリビングに向かった。


「はぁ……まさかあんな手段に出てくるとはなぁ…正直予想外だった……」


でも、あのまま雰囲気に流されて最後まで行ってしまっても良かったかもなぁ。

あの甘い香り、やわらかさ、アレを全て自分の思い通りに出来たのだから……


「今思うともったいない事したかな……」


だが、美緒と恋人関係になるには、解決させないといけない問題が事がある。

それを乗り越えられなければ、俺達は付き合う事は出来ない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ