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だって男のサガだもの   (エッチなのはいけないと思います)

緑の宇宙に散りばめられた惑星達を上からやや遠巻きに眺める。目標である黒の惑星とブラックホールの位置を確認する。頭の中でこれから起こる事態をシミュレートする。


 --そういえばどこかの眼鏡をかけた大先生も集中力コンセントレーションが大事って言ってたな。


 勢い良く飛び出した白い惑星が黒の惑星にぶつかると、黒の惑星は一直線にブラックホールに向かって行き吸い込まれていく。


 「すごーーい!」


 口元あたりで手を合わせているカワイイ仕草の優李に軽く視線を送ると紘燈は最後に残った白と黄ツートンカラーの惑星に照準を合わせた。最後の惑星は壁にぶつかると反対側にあるブラックホールへと飲み込まれて行った。


 

 な…何を言っているのかわかると思うから説明しなくともいいのだろうけれど、4人は今ビリヤードに来ている。紘燈と克輝はよくこの店に来ているのでそこそこの腕前ではある。美香はもちろん初めてだろうし優李もキューに触った事もないのでナインボールの流れと手本の実演をしたのだ。


 先日の会議の末まずはここに来る事に決まった。普段何をして遊んでいるかとの問いに男2人が挙げた1つにビリヤードがあった。優李と美香もやってみたいという事で来たわけだが、優李にいい所を見せ付けるのには絶好のシチュだった。さらに紘燈には2つの思惑があった。




 デモンストレーションが終わり今度はペアを作り交互に突く事になった。グーパーで組み合わせを決めると願いが通じたのか紘燈と優李のペアになった。


 未経験者である優李に持ち方・構え方から教える。もちろん手取り足取りで。


 キューを持って立ち尽くす優李の背後に立ち、抱きしめるような体勢で左手の押さえ方から説明を始める。


 「親指と人差し指を合わせて……」


 なるべく優李に触れないように且つ見やすいように左手を伸ばす。優李もそれを見よう見まねでなぞる。


 「こぉ?」


 密着した状態で後ろを振り返る優李の顔が紘燈の眼前に迫る。


 薄着で肌がたまに触れ合い、上目遣いの優李の顔とは息がかかりそうな距離。優李から放たれる甘いバニラのような香り。心拍数が上がっていく。


 ついでにジーンズもきつくなってしまった紘燈は、ばれてしまう前に優李から離れた。


 「そ、そんな感じで……」


 椅子に座って優李の後姿を眺め尽くした後、もう2人の存在を思い出した。


 美香の隣に立ってレクチャーしていた克輝は、非常に紳士的に見えた。




 1つ目の思惑を堪能してすぐに2つ目の思惑はやってきた。


 優李は台を挟んで紘燈のちょうど反対側に位置して次のボールを狙っている。


 少し前かがみになり集中して狙いをつける優李。夏場でピッタリとした服では無いせいでチラチラとブラや谷間がお目見えする。美香ほどではないもののボリューム感のある谷間と薄い水色のブラに完全に心を奪われた。わざとでなく一種の事故で発生したチラリズムは男のロマンである。集中していて本人が気づいていないのも高ポイントだ。


 しばらくすると美香の番が回ってきた。薄ピンクのワンピースの合間からこぼれる純白のブラと大迫力の谷間。ビリヤード台に当たるのではと思われる下向きになった胸はどうやって重力に抵抗しているのだろうか。


 凄まじい集中力を発揮していたと思う。ふと気づいた時には美香がこちらを睨んでいた。


 「ちょっと、トイレ……」


 その場から立ち去りたかったのもあり、ポジションを直したかったのもあり、そういって紘燈は逃げ出した。


 

 トイレから戻ると美香が隣にやってきた。2人で克輝の順番を見ながら、美香は笑顔で落ち着いたトーンで言う。


 「次やったら……わかりますね?」


 はひっ!も、もうしません……




 しかしそうは言っても気づくと優李を……胸元も含めて追ってしまっていた。そんな紘燈に気づいたもう1人、克輝がおもむろに言い出した。


 「おい、ヒロ。そんなに凝視すると穴が開いちゃうぞ」


 その言葉で優李は顔を上げた。紘燈と視線が合うと耳まで真っ赤になっていくのがわかった。優李にバレたせいで気まずさと恥ずかしさが溢れ出す。


 こいつは何でもかんでもオープン過ぎる。余計な事言うなよ……


 



 店を出た後、食事に向かった。あれ以降優李の顔がまともに見れなくなっていた。たまに目が合うのだがすぐに視線をそらされた。特に嫌な顔をされる事は無かったのだがどうも恥ずかしそうにされているとこちらもつられてしまう。




 それから1年が過ぎた。優李との関係は以前のように戻ってはいたのだが、着かず離れずといった感じであった。どうにも気まずさが残って1歩踏み込めないでいた。



 しばらくして克輝が優李と付き合い始めた。美香も一緒にファミレスに呼び出されて報告を受ける。美香は2人を祝福しつつもどこか紘燈を気遣っていた。


 この1年もいろいろとアドバイス、叱咤激励をしてくれていた。もっと積極的に。あれくらい大丈夫ですと。そう言われても中々行動に移す事はできなかった。


 


 ファミレスの帰り道、肩を落として歩きながら美香に向かって紘燈は言った。



 「ごめんな、今回も……ダメだった」


 紘燈は2人が付き合いだしたのを見て諦めていた。


 「次こそ……きっと次はいけますって」


 そう言った美香の言葉に少し励まされた。そばで応援してくれる美香は本当に有難かった。


 よし、頑張ろう。次こそはきっと……


 


 「redo」



 いつものごとく力が抜けて道路に大の字になる。周りの明るさで星は見えなかったが月だけは輝いていた。

 

エッチなのはいけないと思います(まほろまてぃっく)

眼鏡の先生(ダイの大冒険)

な…何をいっているのか(ジョジョ)

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