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恋は友情より重し     (恋愛戦略しましょうか)

 バチンッ!


 音と頬の痛みと共に目が覚めた。虚ろな目で見上げると美香様が見下ろしてこちらを睨みつけていた。


 「わざとじゃないって!」


 少し説明すると美香の怒りは治まってくれた。いい子だよなぁ。後何回触れるかな……。そんな事を考えていたら上から声がした。


 

 

 「今回は別の日に飛んで来たみたいですよ?」


 別の日?慌てて携帯を取り出して確認をする。2008年7月24日。夏休みかな?とも思ったのだがコタツの上のコピー用紙の山を見て愕然とした。前期テスト期間中のようだ。


 戻されてすぐテストとかなんて拷問なのだろう。しかも勉強なんてしていない。


 

 気分が滅入っていた所にメールが来た。克輝からだった。


 「テスト終わったら遊びに行こうぜっ!天文サークルの女の子ヨロシク」


 


 なぜこの日に飛んで来たのかなんとなくわかった。このメールがキッカケで克輝に優李を紹介する事になったのだ。


 もう1度<redo>した意味を考える。飛んで来たこのタイミングでの克輝からのメール。



 --紹介するなって事だよな?


 克輝は親友だし今までもこれからももちろん仲良くはする。でも紹介しなくたってそれは可能だ。



 卑怯などでは決してない。これは戦略なのだ。自分にそう言い聞かせた。


 「遊ぶのはいいけど女の子は多分無理だな。悪い」


 そうメールを返信すると仕方なくテスト勉強を始めた。ダリぃ……




 翌日テストを終えてサークルで集まるいつもの学食に向かった。いつものメンツ……に加えて美香まで座っている。その隣には優李もいた。


 昨日はテストで頭が一杯で大事な事を忘れていた。この時間軸って最初の時の続きなのか?それとも前回失敗した優李と気まずいままなのか?美香がいて話してるって事は……


 夏の暑さのせいでは無い汗が出てくる。恐る恐る近づく紘燈に気づいた優李が声をかけてきた。


 「紘燈君、顔色悪いよ?寝不足?」


 月夜野君と呼ばれなかった事にホッとした。どうやら本来の時間軸の続きらしい。じゃあなんで美香が……


 テスト勉強でちょっとね……そういって優李の向かいに座った。その隣で美香がニコニコしている。


 「ああ、こちら大櫛 美香さん。今日からうちのサークルに入った新人さんね」


 そう言って紹介された。なんだそういう事か。これで何も問題は無いな。





 そうこうしているうちにテスト最終日がやってきた。美香はテストは受ける訳にもいかないので図書室や学食で時間を潰しているのだと言っていた。



 最後のテストを早めに切り上げて学食へと向かった。まだ人は少なくガラガラだった。いつもの場所付近には優李と美香だけが座っている。


 どうだった?まぁどうにか、とテストの会話を適当にしていると後ろから肩を叩かれた。


 「ヨッ!一緒にメシ食おうぜ」


 聞きなれた声に後ろを振り返る。ここに現れるはずの無い男、克輝だった。克輝の所属するサッカーサークルはいつも違う学食を利用しているため、ここで会う事は滅多になかった。なんで……


 「いや、さっきヒロっぽい後ろ姿見かけてさ。カバンに入れてたこれ返そうと思って」


 カバンの中から紘燈が焼いたアニソンBESTのCD-ROMを取り出し、知らない人と曲だけど良かったよと付け加えた。


 紘燈君のなんだーと優李が興味を示す。


 「ところでヒロ、このベッピンさん2人は?」


 克輝が嬉しそうに言った。紘燈は渋々優李と美香を紹介する。結局こうなるのかよ……


 「初めまして、ヒロの腐れ縁の克輝です。じゃあ優李さん、良かったらこれどうぞ」


 そう言って紘燈のCDを優李に手渡す。優李はいいの?と紘燈を伺う。ああ、うん。聞いてみて。と返すのがやっとだった。


 克輝は優李とも美香とも躊躇する事なく出過ぎる事なく、楽しそうに会話を続けている。とても紘燈には真似できない芸当だった。このリア充体質めっ。


 紘燈が3人を傍観していると夏休みの話題になっていた。隣の男は、良かったら4人で遊びに行きませんか?などと言っている。


 本当に馬鹿だなぁ、お前初対面だろ。そう思っている紘燈の方を優李がチラっと見た。


 「いいですね、行きましょうか」


 想定外の言葉が優李から出て来た。優李は隣の美香を伺う。


 「私も大丈夫です。どこに行きましょうか?」


 美香も楽しそうにしていた。本当の世界線の時は優李の友達と4人で遊んだのだが、それが美香に変わったのか。


 少し状況は変わるが大幅には変わっていないこの事態に何か運命のようなものを感じた。と同時に克輝と優李を会わせないようにしようとした事の無意味さを実感する。この2人が出逢うのも運命なのだろうか。


 3人で盛り上がっている所にたまに相槌を打ちながら紘燈はそんな事を考えていた。口数の少なくなっている紘燈の方を優李は何度も見ては意見を求めてきた。




 --こういう気配りができる所も優李を好きになった理由の1つだなぁ。


 そう実感しながら紘燈は話し合いに参加していった。




○○戦略しましょうか(ピンドラ)

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