舞台は整った (手帳も記憶もあるんだよ)
2話を4/10 21時30分に修正致しております。それ以前に読んだ方はそちらからどうぞ。
4/17 途中で1作目の登場人物の名前を間違って使用していました;-;
紘燈はお茶を飲みつつ心を落ち着けようとする。はぁ、たまには日本茶もいいねぇ。ミルクティーの方が好きだけど。
とりあえず目の前にいる美少女を眺める。ゲームの中から出て来たらしい美香はもちろんキャラデザの人が一生懸命に仕上げたものであってその魅力に疑いの余地は無かった。余りにもマジマジと眺め過ぎたせいか顔がニヤけたせいかはわからないが美香の視線が冷たいものに変わっていた。まだ4月なんだからそんなに冷たくなくていいよ……。困ったので急に話を振る事にした。
どうやって出て来たのかは美香にもわからないらしい。ゲーム内設定を全て引き継いで実体化されてここにいたのだという。見た目も性格も設定通りだが、普通の1人の女の子だった。確かにさっきの人生初タッチの感触は形容し難い程素晴らしいものであり作り物ではない事がわかる。ついうっかりあの感触を思い出して揉む手つきをしてしまった。美香がもう1度がいいですか?と平手の準備をしているので、手を背中に隠して別の話題へと進んだ。
ゲーム内の<redo>では戻りたい時期を選ぶ事ができた。なぜ2008年の4月29日に戻ってきたのか理由を知りたかったのだが、それは美香にもわからないらしい。4年前の記憶なんてあるはずも無く途方に暮れていた紘燈に美香から素晴らしい助言があった。
「日記とかスケジュール表は無いんですか?」
日記はさすがに無いのだが手帳ならある。カバンの中を探ると黒革の手帳が顔を出した。4月のまだあまり書き込まれていないスケジュール表を見ると4月30日の所に大きな文字で記入されていた。
天文サークル新歓コンパ--優李と初めて会話をしたのがこの時だった。
川原でバーベキューをしながらの飲み会。少しだけ星を見て帰った記憶がある。1年の時は確かバーベキューの班が優李と同じ班になったのだ。新歓コンパなだけあって1年生はお客様扱いをされていた。時間的な余裕はあったのだが酔った先輩と意気投合して潰れたのを思い出す。そのせいで優李とは余り会話をしていなかった。
過去の記憶を段々と呼び起こしていく。ただ過去に戻っただけじゃなく前の記憶もしっかり残っている事は紘燈にとって大きなアドバンテージであった。何が起きるかもだいたいわかる。これは失敗する要素はないぞ。今度こそ優李と沢山話をしていい第一印象を植え付けるんだ。今の紘燈に死角らしい死角は見当たらなかった。
--これ、難易度低すぎだろ。クソゲーみたいだな。
まあ簡単過ぎても困る事はない。そう考えてると美香が一緒に行くと言い出した。バーベキューなどした事がないのだろう、興味津々で話を聞いていた。新歓コンパなど1人増えた所で誰も気づかないし女の子が増えるだけで喜ぶ男は腐るほどいるだろう。優李に話しかける男が1人でも減るのは好都合だ。美香を他の男共のエサにしよう。そう考えて連れて行く事を了承した。
その代わりといっては何だが夕飯を作ってもらう事になった。さすが才色兼備の優等生設定である。コンビニのお弁当や外食しか縁のなかった紘燈には美香の手料理がとても美味しく思えた。設定でいうと学年が1個下のしっかり者に舌を巻いた。
その晩から来客用の布団をしいた。女の子を床の布団で寝かせるのも少し気が引けたので、紘燈が布団で美香がベッドを使う事となった。
その前に美香がシャワーに入ったのだが、もちろん覗く事は無かった。いや実際には風呂場の前まで様子を見にいったのだけれど。だって溺れていたりでもしたら大変じゃないか。でも昼間の平手打ちがフラッシュバックして思いとどまった。
風呂上りの美香は眼鏡を外していて、濡れた長い髪をタオルで押さえる仕草がいとおしくて、石鹸の匂いがとても素敵で眩暈がしそうなほどクラクラした。でもここに自分がいる理由を考えると何もできるはずが無かった。
--ごめんね、四十川。これは浮気じゃないよ。
そう自分に言い聞かせるのだが美香は最終兵器を持っている。
寝る時はノーブラなのだ。スゥエット越しにもハッキリと自己主張するその最終兵器は明らかに反則だった。モンモンとしたまま夜を過ごすハメになる。
電気を消して床につく。しばらくして美香が話しかけてきた。
「頑張りましょうね、ヒロトさん」
それは明日からの事を言っているのだろう。しかし紘燈は今も欲望を抑えるのに頑張らなければならなかった。
--ああ。
そう言って頭の上まで布団を被ると優李の事だけを考えた。そうしている内に意外とすぐに眠りに付いた。
○○も○○もあるんだよ(まどマギ)