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【ここまでテンプレ】     (俺のベルが鳴る)

女性読者さんの中には7話までは苦痛に感じる方もいるかもしれません。でもできれば最後までお付き合い下さい。

 携帯の目覚まし機能が朝の静寂を破る。お気に入りのアニソンをダウンロードして登録してあるので朝はこれで起きるのだ。


 なんだか体がとっても疲れている。すぐに目を開ける事もできずに寝返りをうつ。その反動で伸ばした右手の先が何かに触れた。


 --ムニュッ。


 その触り慣れていない感触に違和感を覚えながらも、柔らかさと弾力のある不思議な魔力からは逃れられる事はできなかった。吸い付いたように手は離れてくれず、ただただその感触の虜になっていく。


 「ッッん……」


 アニソンに似つかわしくない、とても悩ましい声が聞こえて紘燈はゆっくり目を開いた。その視線の先には薄っすらと頬をピンクに染め口を半開きにして吐息を漏らす、いわゆる<エロい>表情をした女の子の姿があった。


 「な、な、な……」


 アワアワして次の言葉が続かない。自分の右手の先に視線を移すとそこは少女の膨らんだ神秘地帯であるのがわかった。ゴクリと唾を飲み込んだ。しかもよく見ると圧倒的にカワイイじゃないかっ!


 カワイイ、ヤラカイ、エロイ、カワイイ、ヤラカイ、エロイ。頭の中で同じ文字がグルグル回る。軽くハァハァしてきた。


 「お、おぱ……」


 どもってしまってはいるが目はもう完全に覚めてしまって大きな声を出してしまった。その声に反応した少女は眠そうに目を擦りながらこちらを見つめ返した。


 「おふぁようございましゅ、ヒロトさん……」


 そう言った少女はまだ半分寝ぼけているのだろうか、口が回っていない。


 「おは……おぱ……」


 意味不明な言葉を発する紘燈の視線に合わせて少女は下を向いた。自分の胸に手が添えられている事に気づくと俯いたまま頬がピンクから真っ赤になっていった。お互い上半身を起こし、少女が紘燈の顔を睨み付ける。未だに紘燈の右手は宝物を包み込むように大切に添えられている。


 「ち、ちが……」


 手が固まって離れないんだよ。だいたいこれは誤解なんだよ。心の中で弁解が1人歩きしだした。


 「いい加減にして下さいっっ!」


 言葉と同時に紘燈の頬に劇痛が走った。その痛みでようやく金縛りから解放された。力なく右手が下がっていく。目の前の少女は両の腕で胸を押さえながら目に涙を浮かべていた。


 「ご、誤解だよ、ちょっと待って」


 布団をはいで起き上がって少女に説明をした。あれこれ言い訳をしてみるが少女の顔は怒りに変わっていく。プルプルと震えているように見える。


 あれ?おかしいな? さっきから少女の視線は下の方をチラチラ見ている。紘燈もその視線を辿ると隆起しているモノが視界に入った。


 ちょwwおまwww。何こんな時に元気一杯になってんの。目の前の少女は完全に怒ってらっしゃいますよ?


 「ちがっ、これは……男の子の朝の生理現象でして。先ほどの感触のせいではなくですね。いや、もちろん大変心地よい感触でありがたく頂戴したわけですが……そうじゃなくてこれとさっきの事は無関係で……」


 そこまで言うと今度は左の頬に渇を頂いた。最低っ!と言い放ち利き手であろう右手から放たれた一撃は迫ってくる風圧をも感じさせた。より一層の激痛が走り抜けていく。これがゲームならもうトゥルーENDは無理だろう。


 「私は18禁ゲームのキャラじゃありませんっっっ!」


 あまりの出来事にその少女の言葉は右耳から入って脳を経由せずに左耳から出て行った。


 紘燈は口をパクパクさせたまま言葉を出せずにいた。コメント付きアニメ動画サイトなら、【ここまでテンプレ】とコメントされそうなお約束の出来事に呆然とする。目覚まし代わりのアニソンはリピート再生され続けていた。



 

 とりあえず頭をスッキリさせたい。顔を洗ってくるねと少女に声をかけたが、プイッっとそっぽを向いたまま返事は無い。部屋の戸を開けて洗面所に向かい顔を洗う。ここでようやくおかしな異変に気づいた。


 いや、部屋に女の子がいる事も十分変なのだが。もう1つ変なのだ。


 --俺なんでここにいるの?


 今いるその部屋は7ヶ月前まで1人暮らしをしていた大学そばのアパートだった。見覚えのある浴室に鏡。鏡?


 鏡に映った自分を見て愕然とする。髪が短くなっている。てゆーか若返ってるっ??


 訳がわからないまま部屋に戻った。携帯の目覚ましがまだ鳴っている。



 あれ?なんでこの曲?これ4年前のアニソンじゃ……



 好きだったアニソンの余韻に浸る余裕もなく音を止めようと携帯を手にする。よく見ると昔使っていた機種だった。携帯を開いて音を止める。もう1度ボタンを押すとカレンダーが表示された。そこで見たくない数字が目に入ってきた。2008年4月29日。


 2008年???


 イタズラにしては手が込みすぎている。せめて4月1日ならエイプリルフールかもと思えたのに……



 「あ、あのぅ……」


 恐る恐る振り返って見知らぬ少女に救いを求めようとした。見知らぬ……?いや、どこかで見た事があるような。


 「なんですか?ヒロトさん」


 気づくと少女はテーブル代わりのコタツに陣取ってお茶まで飲んでいる。紘燈の分も用意されている。


 「朝起きたら隣に君がいて……大学の時のアパートで……カレンダーは2008年で……」


 ありのままに起こっている出来事を順に話す。それはもちろん少女にとってもわかっている事で説明にすらなっていないのだが。


 「君なんて他人行儀ですね。名前でいいですよ?」


 少女は冷静にそう言った。名前?他人行儀?やっぱりどこかで会っているんだ。


 「申し訳ないけど、どこかで会ったかな?」


 紘燈の言葉に少女は少し悲しげな顔をした。が、その後、ああこれのせいかしらと言って眼鏡を取り出して掛けた。


 「あ、あ、あ……」


 人に指を指してはいけないと習っていたがついやってしまった。


 「やっと思い出して頂けましたか。良かったです」


 そう言ってニッコリと微笑んだ少女--眼鏡を掛けていて黒髪ロング、87cmと大変立派な胸をお持ちな頼れる案内役、大櫛 美香はお茶を口にしていた。


 「み、美香……」


 さっきまでPC画面の中にいた女の子が座ってお茶を飲んでいる。


 「なんで……」


 1日でこんな事が起きたらもう対処は不可能である。


 「とりあえず落ち着いて座ったら?」


 美香は至って普通のまま座る事を勧めた。いや、ここ俺の部屋だっての! いや、本当に俺の? 思考回路はショート寸前。求めるは説明っ!


 美香はお茶をコタツに載せると口を開いた。


 「昨日ヒロトさん、やり直したいって思ってたでしょ?だから私頑張ってredoリドゥってみました♪」


 非常に簡潔なそれでいて一番わかりやすいであろう説明だった。

 

「今は4年前の2008年でここは昔住んでいたアパート……、俺は18歳の大学1年生で隣には<キミスゴ>の案内役である美香がいて……美香が<redo>したからこうなっている……」


 なるべく冷静を保って状況把握に努めた。隣で美香は、ご名答~と言ってクスクス笑っている。





 

 ……んなアホなっ!


 


思考回路はショート寸前(セラムン歌詞)

求めるは~~     (伝勇伝) 

俺のベルが鳴る(そらおと)




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