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birthday<前編>        (はっぴはっぴばー)

4度目の<redo>から目が覚めた。紘燈の近くでは美香が眠っていた。


 髪を掻きあげ頭を撫でて頬に触れる。スヤスヤと眠りについていた美香がようやく目を覚ました。


 「何してるんですかっ!また変な事してたんじゃ……」


 距離を取って自分の体を触りながら確認する。何もしてないよ。


 「寝顔が可愛くて、少し触れただけだよ」


 しょうがないじゃないか、とでも言いたげに少し目を細めて慈愛に満ちた表情の紘燈の言葉に美香はたじろいだ。


 「そーゆーのは優李さんに言ってください」


 照れたのか美香はそっぽを向いてそう言った。


 「ああ、気をつけるよ」


 優李の顔を思い浮かべながら、今後そんな事は起きないよと心の中で紘燈は思った。






 --さて、どうしようか。


 すぐに美香に気持ちを伝えるのは余り得策とは思えなかった。とりあえず仲のいい友達程度に優李との関係を保ちながら美香に伝える機会を伺おう。優李に全くアプローチしないのは美香に怪しまれる。第一、克輝とも優李ともいい関係でいたい。


 優李との関係を縮めすぎないように留意しつつ過ごした。美香がいない所ではなんとなしに克輝の良さをアピールしながら。まあ紘燈が言わなくたって時間さえあれば優李は勝手に気づいてくれるのだが。




 その分、何かと言い訳をつけて美香と2人で過ごす時間を増やした。買い物に行ったり、映画をみたり。


 美香はこんな事してる暇があったら優李さんと、と文句をつけてきた。あんまり前に出過ぎるのもよくないんだよ、といい誤魔化す。




 今まで以上に美香と一緒にいる。バレないように騙しながら。たまにわざとエロい事をするフリもして怒られる。いつも通りの平常運転だよと。





 「そういえばもうすぐ誕生日ですね?今年は何が食べたいですか?」


 半年が経過した10月の終わり、美香が紘燈に尋ねてきた。そういえばもうすぐ11月5日。紘燈の誕生日だった。


 今までも誕生日に優李を誘った事もなければ4人でパーティした事も無かった。学校もあるしただ普通に過ごしていただけだった。


 なんでもいいかなぁ……。そう答えると美香は肩を落としつついう。


 「作り甲斐がないですねぇ」


 紘燈は困ってしまった。本当に何でもいいんだけど。しばらく考え込んでケーキをお願いした。


 「ケーキですねっ! 何段がいいですか?」


 やる気になった美香が目を輝かせる。1段で、てゆーか小さいのでいいから。






 11月5日。今日は美香は学校に来ていない。朝、家を出る時にはすでにエプロンを掛けて戦闘モードに入っていた。


 「楽しみにしてて下さいね!」


 ボールと泡だて器を装備した勇者が襲いかかろうとしてきた。紘燈は逃げ出した。





 学校も終わり美香へとメールをした。


 「今から出てこれる?」


 すぐにメールは返ってきた。17時に駅前でいい?と。


 微妙な待ち時間だったので、駅前からスタバに変更してもらった。それほど寒くも無かったので冷たいカフェモカを注文して美香を待った。


 体全身に甘さを感じているとふと記憶が蘇った。




 もしかして優李はあの時……




 そこで思考を停止させた。








 「遅くなりましたー」


 しばらくして後ろから声がした。ああ、と振り向いて声を掛けようとして、紘燈はカフェモカを噴いた。


 咳込んで喉が少し痛い。美香は、バッチイなぁと言いながらナプキンで周りを拭いている。


 「なんて格好してんだよ」


 今まで見た事が無かった美香の服装をまじまじと眺めつつ紘燈は言った。いや正確には見た事はあるのだが。


 「何言ってるんですか、私の正装じゃないですか」


 制服に身を包んだ美香は今にもクルリと回りそうだった。


 確かにゲーム内では制服を着ているシーンが多かったし18歳の高校生なのだ、正装なのだろう。でもリアルで見るのは初めてだった。ゲームらしい超ミニのスカートから目が離せないでいた。


 「誕生日プレゼントですよ」


 ありがたいでしょう?現役JKですよ、ジェイケイっ! 美香がそういいつつ向かいに座った。


 「特別ですよ。多少のエロい視線は黙認します」


 お許しが出た。では遠慮なく。


 ふむ。ほう。そう言いながら観察を続けるとストローの入っていた袋が飛んで来た。多少って意味知ってます?




 飲み物も無くなり外へ出てゲーセンへと向かった。元々これが目的で呼び出したのだ。


 「誕生日までゲームですか?ほんとに……」


 美香は呆れながらついてくる。


 ゲーセンに着いた。中に入ると美香の手を引きお目当ての場所へ向かった。


 「じゃあ、入って」


 暖簾を上げて美香を促す。


 「プリクラ……ですか?」

 

 美香がこちらを伺う。


 「嫌?」


 「別に嫌ではないですけど……」


 躊躇する美香を押し込みコインを入れる。慣れない手つきで操作した。


 「ハイ、イクヨー」


 機械の声とシャッター音。1枚目は普通に並んで撮った。美香は眼鏡を外して、前髪を何度も触っている。こちらからは、その直した変化はあんまりわからない。


 2枚目は後ろから美香の肩に触れた。その瞬間ビクっとしたものの機械の声に平静を取り戻す。


 3枚目は後ろから抱きついた。これにはさすがに文句を言ってきたのだが、記念だと押し切ったらおとなしくなった。


 4枚目は、撮る瞬間にスカートをめくった。ビックリした顔の美香が画面に映し出される。




 外に出てお絵かきタイムが始った。顔も心臓の辺りもとても痛かったので、ペンは美香にまかせた。


 4枚目の写真の紘燈の部分には<エロ魔人>と書かれていた。他にもスケベだの変態だの散々書かれて、隅っこの方に申し訳なさそうに小さく誕生日おめでとうとスタンプされていた。

サブタイ(パパ聞きOP ハッピハッピガーより)

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