紘燈&克輝 (君と僕)
数日後、紘燈は克輝を居酒屋に呼び出した。
後からもう1人来ます。そう店員さんに告げると小部屋に通された。周りとは距離もあり話をするには好都合だった。
おしぼりを渡されとりあえず生中だけ頼んだ。お通しとビールが運ばれてきて喉に流しこむ。1/4ほど飲んだ所で克輝が顔をだした。
生中と適当につまみを2品ほど注文する。今日はそれほど飲む気もないのでこんなもんでいいだろう。
ビールはすぐにやってきた。お疲れーとジョッキを合わせる。しばらくした後、本題に入った。
「四十川とデート、するんだよな?」
ジョッキを乗せつつ紘燈は言った。
「ああ」
克輝は短くそう言った。
「俺も、四十川の事が好きだ」
「ああ」
そんなのわかっている。克輝の目はそう言いたげだった。
「でもお前は、24歳の時に四十川と結婚するんだよ」
「あん?」
さすがにこんな事を言われても訳がわからないのだろう。
何言ってるんだお前?と克輝が言う。
「俺の人生、これが4度目なんだ」
克輝は目の前で大笑いしている。お前がそこまでファンタジー好きとは思わなかった、と。
無駄だと思いながらも全ての説明を始めた。結婚式の招待状が届いた事。美香の事。1度目・2度目のやり直しで失敗した事。今が3度目である事。
最初は笑っていた克輝が段々と真剣になっていった。信じてくれたようだ。
「お前には伝えておこうと思ってな」
そう言って紘燈はビールを飲み干した。克輝の分も2つ追加する。
しばらくの間無言が続いた。克輝は何か考えているのだろうか、一切口を開かない。そうしている間におかわりが来た。克輝の前にビールを置くと1口飲んでからようやく口を開いた。
「で、お前は今回どうするんだ?」
どうしたいのだろう。悩んでいると質問が続いた。
「今まで優李さんに告白した事はあるのか?」
「いや、1度もない」
「そうだろうな」
そうだろうな? よく意味がわからなかった。
「でも今回は言う決心をしたんだよな?それで今日呼び出したと」
から揚げを頬張った後、克輝が真剣な口調で聞いてきた。
そのつもりだった。そう言った後に紘燈はさらに続けた。
「だけど、この前、四十川に美香の事が好きなんじゃないかと言われて……それから気になりだした。四十川の事はもちろん好きだ。でも……」
紘燈はビールをグイグイ飲み込む。向かいでは克輝が呆れ顔をしている。
「ヒロ、お前なぁ……」
目の前の残念な子を見て言葉を濁していた。その後、美香とどれくらい一緒にいるんだっけ?と聞かれたので2年ちょっとと答えた。
2年かぁ。しばらく考えた克輝は紘燈の肩をポンと叩くと、まあしょうがないかもな、と言った。
「で、どうするんだ?」
克輝の問いにわからないと答えた。溜め息をついた克輝が紘燈に向かって告げた。
「俺はしばらく何も行動しないからしっかり考えろ」
そういい終えると克輝は残りのビールを飲み干した。
店を出て克輝と分かれた紘燈は考えていた。優李の事、美香の事、そして克輝の事。やっぱり克輝がいい奴だと再認識したと同時に、話をした事をすごく後悔した。言うべきで無かった。
家に着くと美香に向かって頼んだ。
「昨日に戻してくれ」
克輝と一緒にいた事を知っている美香は理由を聞いては来なかった。紘燈がはっきりと決意し日にちまで指定してきたからだ。
いつものように美香が呟いた。
「redo」
サブタイ(そのまま)