二つの世界を持つ少女
ジリリリリ!
朝を知らせる物が突如鳴き出した。部屋中に響き渡るそれは、少女を機嫌悪く唸らせた。
「んー、う……」
ベッドにうつ伏せになりながら、少女は白い手を未だ喚くそれにゆっくり伸ばした。
ぽんっとその頭を叩くと同時にうるさい鳴き声は止み、代わりに薄暗い部屋には小鳥達の可愛らしいさえずりが聞こえた。
「……おやすみ」
ぼふんっとふかふかの枕に顔をうずめた直後、ばんっと部屋のドアが開いた。と共に足音が近づいてきて、ベッドの前でぴたりと止まった。
「……早く起きろよ姉ちゃん」
呆れたような声音にうっすら目を開けて、呆れた表情をした弟を目だけで見上げた。
「んー……颯太。もーちょっと」
「もう八時だぜ?」
「大丈夫大丈夫……って、え?はちじ?……八時ーーっ!?」
少女はがばっと飛び起き、時計を見下ろした。
うん、八時回っている。
「何で起こしてくれなかったのよーうっ」
少女、雪白 琴梨は弟に非難の声を浴びせ、掛けてあった白とピンクの女の子らしい制服を手に取った。
「やっばい、ほんとまずいっ」
そんなことを呟きながら寝間着を脱ぐも、ふと背中に視線を感じて振り返った。
「着替え、手伝ってやろうか?」
にこにこ……いや、にやにやしている弟が腕を組んでこちらを見ていたのだ。
「結構です。この変態!」
脱いだ寝間着を投げつけ頬をひくつかせる琴梨を見て弟はくすくすと楽しそうに笑った。