伽羅橋羽衣香《きゃらばしういか》の憂鬱(百合。身長低め地味系スパダリ女子×ダイナマイトマッスル高身長女子)
いいなあ。
通路挟んでお隣のボックス席。そちらを見て、こっそりとため息を吐く。
そこでは、二人の女の子が仲良く寄り添い眠っていた。
がたたん、ごとん
小気味良く揺れる電車は、まだ目的地に着かない。あと……どれくらいだ? 四十分? 長い。十分で着いてくれ。
何故かって? 理由は至極簡単。
眠いからだ。
しかし電車で寝ちゃうと、ほぼ九割の確率で私は隣の領地へ侵食する。つまり、隣人の頭や肩を枕にする。
隣には、私の恋人が居る。私より背はぐっと低いが、私より余程カッコいい自慢のスイートハート(ちょっと使ってみたかった)。
えーならいいじゃん、もたれちゃいなよ! と脳内のギャルが言う。
いや、そうもいかないのよ。
私は、クレバーに頭を振り、脳内ギャルにこう答えた。
見てよ、私のこのダイナマイトボディ。ゲームをやる代償として課せられた筋トレメニューを、子どもの頃から毎日しっかりこなしていたら、男性顔負けのセクシーマッスルボディになっちゃって。しかも遺伝でタッパもあるから、まあ、寄っかかられた方は堪んないってわけ。わかる? ってか、アンタ誰。脳内ギャルって何。
そんな下らない脳内会話で気を紛らせても、眠気はひたひたとやって来る。
もう一度隣を見る。
我が愛しの恋人は、スマホでシャンシャンと音ゲーをこなしていた。
うん。デイリーもウィークリーも、ちゃんとこなさないとよね。わかる~。けど、寂しさもあるよ~。ね~アンタの恋人、寂しがりなのよ~。アイドル達可愛いからさ。シャンシャンしたくなる気持ちもわかるんだけどさ。
ねえ寂しい。そんで眠い。
……つっても、真剣にデイリーこなしてる人間にもたれかかるわけには、ますます行かなくなった。
どうにかして起きとかないと。
どうしよ。素数でも数える? 無理。私、数字苦手。はい、詰んだー。
私が、一人うーんうーんと頭を捻っていたら。
「……伽羅」
名前を呼ばれて、ちょっと目が覚めた。
「大社?」
彼女は、相変わらずスマホに視線を固定し、音ゲーでパーフェクトを出しまくっている。いつ見ても、惚れ惚れとする手腕。
「お前、ひょっとして眠い?」
けど、何故か私の状態をドンピシャで当てて来た。
「う、ん」
「ふぅん。じゃ、私にもたれて寝れば」
「……いいの?」
ゲームの邪魔にならない? と問えば、
「いきなりもたれかかって来られたら邪魔になる。だから、最初からよりかかっといて」
冷たいんだか、あったかいんだか、よくわからない答えが返って来た。
ふは、と。思わず笑いが漏れた。
本当に、もう。
「……ありがと。重いかも知らんけど」
「ん。構わん。お前なら」
そういうとこ、好き。
大好き。
「おやすみ」
「ん」
END.
隣のボックス席は、一つ前の話のカップル




