君の隣が良い。それだけなのに(百合。片想い。女子高生)
「卒業したくないなあ……」
「どうした、急に」
卒業式の練習。並んだ椅子に腰かけ、ぼそっと呟く。
今は休み時間で、みんな思い思いの場所でだべっていた。
いつものように。まるで、明日も明後日も、来週も再来週も、来月も再来月も、こんな瞬間が続いていくかのように。いつも通り。
「練習してたら、卒業したくない気持ちがむくむくとね」
「第一志望に受かったやつが言うなよなあ」
うちら国立組はまだ試験あるんだぞー? と笑いながら、真由が私の肩を叩く。
「そうだけどさ」
その温もりに、胸がギュッとなる。彼女の、からっとした笑顔にも。
「だって卒業しちゃったら。こうやって毎日会えないし」
「そりゃ、学校分かれるからね」
真由は何てないことのようにそう言い、肩を竦めた。
今度はキリキリと胸が締め付けられる。痛みのままに顔を顰めれば、彼女は困ったように眉を下げ、笑った。
「そんな悲しい顔するなよ。友だち止めるわけでもなし。死ぬわけでも無し」
そうだね。
「そっちもこっちも新しい友だちが増えるだけだよ」
そうだけど。
違うの。
私は、真由とずっと一緒に居たいんだ。
特別な存在として、ずっと、ずっと隣に。
「……ま、そうだけどさ」
──そんなこと、言えないから。
私も笑って、肩を竦めた。
「だっろー? あー。早く受験終わらねぇかなあ」
伸びをして言う彼女の横顔は、相変わらず綺麗で、愛しくて。
……試験も卒業も、来なければいい。
そんな、彼女の望みを否定するようなことを願ってしまった。
END.




