表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

盗まれに来た花嫁(老女百合のその昔。若い頃)

「えへへ、来ちゃった」

「……本当に来るとはね」

 葬儀屋事務所の前で、ウェディングドレスを着た彼女が立っている。

 純白の布地は艶やかに煌めいて、悔しいけれどよく似合っていた。

「というわけで、これからどうぞよろしくお願いします」

「待て待て待て。待ちなさい。親御さんには何て言って出て来たの」

 いや、自分の結婚式からそのまま逃げて来た人間が、そう悠長に何かを言い残しているとは思わないが。

「置手紙に、『勘当して下さい』って。きっとそうするわ。あの人たち、面子が何より大事だもの」

 くすくすと可笑しそうに彼女が笑う。

 まあ、そういうご両親なのは、私も知っているけれど。

「私、こう見えて意外と力仕事出来るのよ」

「知ってる」

「教会でのお式なら、オルガンも弾けるわ。聖歌だけじゃなく、亡くなった方の一等好きだった歌、何でも弾いてみせるわよ」

「アンタ、耳いいもんね」

 ふーっと天を仰いで、ため息を吐いた。

「……私の指導は、厳しいよ」

「ええ。知ってるわ」

 そこが好きなんだもの、と微笑む彼女の手を取った。

「葬儀屋で花嫁。死神とでもアンタ、結婚するのかね」

「ふふ、キミちゃんが死神なら私、喜んで嫁ぐわ」

「言ったね?」

 もう離さないから。

 そう言った私に、彼女は「こっちの科白よ」と嬉しそうにうなずいた。


 END.




 一つ前のお話のおばあちゃんたち、若いころ。

 葬儀屋さんの方は、この一年か二年前にご両親を亡くされ、若くして実家の葬儀屋を継いでいます。

 花嫁の方は、裕福なお家の出ですが、これを機に基本、勘当されます(でも何かすったもんだはちょっとありそう)。葬儀屋は縁起が悪いから、という理由でご両親から「彼女は式に呼ぶな」と言われ、すべて嫌になった花嫁さんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ