8口目「真理」
マスターと挑戦者の戦い…決着。
恐怖と焦燥…
5人の審査員の手は震えていた。
挑戦者「こちらのショウユをつけてお召し上がりください。」
審査員「ショウユ?」
審査員「ショウユとはどういうものでしょう?」
挑戦者「寿司につける魔法のソース…鬼に金棒とでも言いましょうか…。」
審査員は得体の知れない液体に恐る恐る寿司をつけた。
そして口に入れた瞬間…
審査員「何だこれは…!ありえない!!」
審査員「ただの生魚のはずなのに!!一つの作品として完成している…!」
5人は各々歓喜に満ち溢れ、笑みと共に舞い踊っていた姿はまるで竜宮城の踊り子のようだった。
マスター「こんな何も調理されていない物に私の料理が負けるわけないだろう!」
マスターは料理に対する真摯さと調理の手間を最重要視している。
寿司はマスターにとって侮辱そのものだった。
しかし、彼は言った。
挑戦者「寿司は決して簡単なものじゃない!魚の状態や鮮度に真摯に向き合い、米や酢、その日の気温や湿度…全てベストな状態で出しているんだ!寿司の真理も知らない奴に語られるものではない!」
冷静沈着の文字を表した様な挑戦者。
しかし寿司に対する熱意は誰にも負けなかった。
マスター「貴様…名前は何という…!」
挑戦者「村崎鉄火だ…。」
マスター「村崎鉄火か…覚えておこう…。」
司会「さぁ!マスター対鉄火!勝つのは一体どちらか!審査員の方々ジャッジをお願いします!」
審査員達は悩みながら札を上げた。
しかしその前に1人の男が手を挙げた。
マスター「私の負けだ。」
場内は騒然とした。自ら負けを申告することはディッシュバトルの歴史上存在しないことだったのだ。
司会「決まったあああ!!マスターの申告により歴戦の王が敗北!しかしマスター何故自ら…?」
マスター「料理というのは常に進化している…。私はその進化に賭けてみたかった。そして、これからの未来を担う若者にこのディッシュバトルを託そうと思う。」
鉄火は深く頭を下げた。
鉄火「マスター…!まいどあり…!」
観客は立ち上がり、鳴り止まない拍手を送った。
司会「それでは皆さん次の試合でまた会いましょう。seeyou ディッシュバトル!」
店主「なんてすごい戦いだったんだ…!早く僕も戦いたい…!」
店主は次の試合に対する期待と少しの不安で胸が溢れていた…
店主「そういえばこの世界の人達は寿司を知らなかったな…まさか村崎鉄火も違う世界から…?」
…そして2人の料理人は対峙する。
肉をこねるもの…
米を握るもの…
戦いの運命は神に握られている…。
続く
最後のセリフ言いたかったんだ…