7口目「へいお待ち。」
サブタイトルの通り…あの料理が現れる…
初めて見る料理に、観客は不安と恐怖に襲われていた。
しかし相対するマスターに焦りはなかった。
マスター「どんな料理が来ようと私が負けるはずがない。人生をディッシュバトルに捧げてきた…その思いがこんな若造の遊びに負けるはずがない!」
マスターは渾身のひと皿を仕上げた。
マスター「これこそが私の…人生の結晶だ…!」
司会「出たあー!エビチリが出たー!!」
店主「エビチリ?」
マスター「エビチリを出すこと…それはお前の死を表す…。」
マスターの目に怒りの炎が燃え盛っていた…
場内が静まり返る。
マスターの本気と覚悟に観客は固唾を飲んだ。
司会「さぁ…対する挑戦者の料理は…!」
観客「あいつさっき生の魚を米に乗っけてたよな…?」
観客「いや流石にあのまま出すわけないだろ…!」
挑戦者「へいお待ち。」
漆黒の皿に並べられていた。彩り豊かでまるで宝石のようだった。
挑戦者「にぎりの盛り合わせです…」
司会「こ、これは…!なんだぁ!?にぎりというのは一体…!?」
挑戦者「酢飯の上に生魚の切り身を乗せた…それこそが寿司というものだ…。」
司会「そ、それは料理と呼べるものなのでしょうか…?」
マスター「まぁ待て。一度食べてからにしよう…。この若造の目は本気の目だ。」
王の余裕…風格…。でも料理人にはわかるマスターの一瞬の動揺…それは店主にも感じていた。
店主「マスター…!」
司会「それでは審査員の皆さんお願いします!」
審査員はマスターの料理に手をつけた。
審査員「…なんて美味いエビチリだ!」
審査員「エビの風味とタレのバランスが最高だ!」
…瞬く間に食べ終わった。
司会「さぁかなりハードルが上がっているぞ!挑戦者の寿司は一矢報いることが出来るのか!?」
審査員の前に盛り合わせが並べられる。
審査員「いただきます…」
その時だった…
挑戦者「すみません少し待ってください。」
司会「おっとどうされました?」
挑戦者「お持ち頂いてるナイフとフォークを置いて頂けますか?」
司会「そ、それでは食べることが…」
審査員達は嘲るように笑った。
「おいおい!どうやって食べると言うんだ!」
「まさか自信が無くなって食べて欲しくないんじゃないか!」
「まさか手で食べろって言うんじゃないでしょうね!」
挑戦者「そのまさかですよ。」
挑戦者は手のひらを天高く伸ばした。
挑戦者「寿司は…手でお願いします…!」
どよめく観客…揺れる大地…審査員の表情。
そして何より食を侮辱されたことに対する憤りが隠せないマスター。
混沌の中で… 挑戦者の顔は笑っていた。
挑戦者「寿司の力…見せてやるよ!」
続く