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到着したばかりの婚礼で、まさかの裏切りに遭う


呂凌太心——それが俺の妻の名前だ。

「、結婚式が始まる前に、ちょっと話したいことがあるの。部屋に来てくれる?」

呂凌太心は静かな声でそう言った。その声は相変わらず穏やかだったが、家族に向ける優しい口調とは違い、どこかよそよそしく、ほんのり冷たささえ感じられた。そして、そのあまりにも美しい顔には、微笑みの欠片すらなかった。

この違和感に、俺は警戒心を抱かずにはいられなかった。まるで、妻が夫に向ける態度ではない。何かがおかしい——だが、それが何なのかは分からない。

疑念と不安を胸に、俺は彼女の後をついて歩いた。長い廊下を抜けた先には、雅やかな庭園が広がっていた。池の中央には幾枚かの青々とした蓮の葉が浮かび、そよ風に揺られて水面が波紋を描く。そのそばに立つ竹林が静かにざわめき、まるで何かを囁いているようだった。

彼女は足を止めることなく、そのまま竹林の小道を進んでいく。俺も黙って後を追う。足音だけが響く静寂の中、胸のざわつきは次第に大きくなっていった。やがて、俺たちは一つの静かな部屋に辿り着いた。

彼女が扉を押し開け、中へと足を踏み入れる。俺も続いて入り、彼女の向かいに腰を下ろした。

二人の視線が交差する。

彼女の瞳は深く、まるで波一つない湖のようだった。感情を読み取ることはできない。何を考えているのか、そして、これから何を言い出すのか——まるで見当がつかなかった。


「まずはお茶をどうぞ。」

呂凌太心は静かにそう言いながら、優雅な手つきで一杯の熱いお茶を差し出した。茶碗の中で湯がゆらりと揺れ、淡い湯気が立ち上る。その光景はどこか心を落ち着かせるような雰囲気を醸し出していた。だが、俺が茶碗を手に取った瞬間、指先に伝わる温もりとは裏腹に、胸の奥に得体の知れない不安が込み上げてきた。

茶碗の中を覗くと、透き通った琥珀色の液体が静かに揺れている。ほのかに立ち昇る香りは心地よく、一見すると何の変哲もない上質な茶のように思えた。少し躊躇しつつも、俺はそっと茶碗を傾け、一口含む。

口に広がるのは、馴染みのある渋みとほのかな甘み。まるで極上の茶葉を使ったような深みのある味わいだ。しかし——数秒後、舌の上に広がる異質な甘さが、俺の警戒心を一気に刺激した。

妙な甘さだ。まるで人工甘味料のような、どこか不自然な味。以前、コンビニで買った安価な代用甘味料入りの飲み物を思い出させる、そんな不快な甘みが舌の奥にまとわりつく。

——おかしい。この茶は、何かが仕込まれている。

疑念が電流のように全身を駆け巡る。俺の心臓が強く跳ね、手にしていた茶碗がかすかに震えた。

「……なんだ、これは……?」

絞り出すように呟く。しかし、自分の声が妙にかすれていることに気付いた。喉の奥が詰まるような感覚。次の瞬間、恐ろしいほどの倦怠感が全身を襲い、まるで体の中から力が抜き取られていくかのようだった。

立ち上がろうと足に力を込めるが、膝ががくりと崩れ、まるで自分の体ではないかのように言うことを聞かない。指先すら動かせず、震える唇からわずかに漏れる息。歯が小刻みに打ち鳴らされる音が耳の奥で響く。背筋を駆け上がる冷たい悪寒、凍りつくような四肢。血がゆっくりと凍りついていくような感覚に、意識が遠のいていく。

しかし——不思議なことに、冷え切った手足とは裏腹に、腹部だけが異常なほど熱を帯びていた。まるで内側で炎が燃え盛っているかのように、臓腑が灼けつくような熱さに襲われる。

息が乱れる。心臓が不規則に跳ね、思考がまとまらない。まるで強力な麻酔薬を打たれたように、感覚がぼやけていく。

「こ、これは……」

「これは、お前の武魂を奪うための茶だ。」

呂凌太心は静かにそう言った。その口調はあまりにも平然としていて、まるで些細な日常の出来事を話しているかのようだった。

「この茶を飲めば、お前の四肢は次第に力を失い、ただ武魂だけが最後の抵抗を試みる。だが、それもやがて衰弱し、混沌へと沈んでいく……。そうなれば、あとは時間の問題だ。私はお前の武魂を完全に引き剥がし、自分のものにするだけ。」

あまりにも淡々とした口ぶりだった。もしこの会話を何も知らない者が聞いたなら、きっと彼女はただの何気ない世間話をしているのだと勘違いするだろう。しかし、その言葉の裏に潜む冷酷さは、聞く者の背筋を凍らせるほどだった。

呂凌太心は微笑みながら、瞳の奥に興奮の光を宿し、さらに言葉を続けた。

「ああ、そうだ。言い忘れていたけれど——お前の骨も取り出さなければならないな。血、骨、そして武魂……これらが揃っていれば、私はより完璧に融合できるからな。」

その声は、まるで単なる実験について語る科学者のような調子だった。そこには迷いも、罪悪感も、何一つとして感じられない。ただ純粋な目的のために、彼女は行動しようとしている。

「お前は長年修行してきたようだが——結局、ただの無駄だったな。」

呂凌太心は冷笑し、侮蔑に満ちた視線を俺に投げかける。

「たかが武士二星で、しかも地級の武魂持ちだと?そんなもの、お前の手にあっても何の価値もない。せっかくの武魂を無駄にするくらいなら、私が使ったほうがよほど有意義だろう。」

その言葉は、鋭い刃のように俺の心を抉った。

だが、その痛みを感じる間もなく——俺の意識は、深く、深く、暗闇の中へと沈んでいった


………….。


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