俺、異世界に来た…?
俺、嶺司 龍牙 は、突如として襲いかかった大地震によって地球から異世界へと転移した。
あまりにも突然の出来事だった。
だが、ここは甘くない――この残酷な世界で俺は強くならなければならない。
レベルアップし、俺の夢――地球への帰還を果たすために
私は大阪に住む平凡なエンジニア、嶺司 龍牙 だ。
毎日の生活はほとんど変わり映えせず、同じコードを書き、同じ作業を繰り返す。日々がただ流れていくだけで、何の刺激もない。
高校時代の頃を思い出す。あの頃は、夢がたくさんあった。未来に期待し、色々なことに挑戦したいと思っていた。だが、年を重ねるにつれ、現実の厳しさがその憧れを少しずつ飲み込んでいった。生活のために安定した仕事を選び、複雑で面倒なプログラムに埋もれる日々。かつて輝いていた夢は、日々の疲れと責任に押し潰され、思い出す余裕すらなくなってしまった。
仕事の拘束時間は長く、ほぼ毎日朝から深夜まで働いている。気がつけば、一日十二時間も働いていることが当たり前になっていた。最も厄介なのは、たとえ退勤後であっても、コードに不具合があれば、上司からの電話が鳴り、即座に呼び戻されてしまうことだ。
この仕事を嫌っているわけではない。しかし、だからといって特別好きというわけでもない。ただ生きるために続けているだけ。まるでプログラムされた機械のように、同じ作業をただ繰り返しているだけだ。
退屈で、息が詰まるような毎日。
――こんな日々は、あとどれくらい続くのだろうか?
もし、ある日突然すべてを捨て、かつての夢を追い求めることができたなら。
その時、自分はどんな未来を生きているのだろうか?
彼は机の下に身を潜めながら、大声で俺に叫んでいた。声には焦りが滲み出ている。
オフィスの照明は不安定に点滅し、壁からは不気味なミシミシという亀裂の音が響いてくる。それでも、彼はいつものように活力に満ち、決して動じることはなかった。
真田武鋼。彼は三十を過ぎた俺の仕事仲間であり、最も長く共に歩んできた友人だ。
俺たちは何度も同じプロジェクトを担当し、あの忌々しいバグ修正に頭を抱えながら、一緒に乗り越えてきた。
冷静に考えれば、彼の人生は俺とほぼ同じはずだ。朝から晩まで働き、同じプログラムを書き、同じトラブルに悩まされる。しかし——
彼の人生は、なぜか俺よりもずっと楽しそうに見える。
冗談を交えた軽妙な会話、どんなに退屈な会議でも場を和ませるユーモア。まるで高校生のようにエネルギッシュで、人生を心から楽しんでいるように思えた。
「同じ仕事をしているのに、なぜ俺と彼はこんなにも違うんだ?」
その答えは、ずっと見つからないままだった。
だが——今はそんなことを考えている場合じゃない。
天井の蛍光灯が音を立てて落下し、鉄骨が軋む不吉な音を響かせている。地震の揺れはますます激しくなり、建物全体が悲鳴を上げているかのようだった。
俺は決断しなければならない——
このままここに留まり、運命に身を任せるのか。それとも……?
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運命の転換——天武大陸への転生
考える暇もなく、轟音と共に天井が崩れ落ちた!
意識が途切れかけたその瞬間、俺の身体は何か見えない力に呑み込まれ、深い闇の中へと落ちていった。
まるで魂が無理やり引き剥がされ、未知の深淵へと突き落とされたような感覚——
これが死ぬということなのか?
しかし、意識は完全には消えなかった。
ぼんやりとした思考が徐々に回復していく中、耳元で透き通った鐘の音と優雅な楽の音が響いてきた。それらが交じり合い、どこか神秘的で厳かな旋律を奏でている。
「……おかしいな、ここはどこだ?」
俺は反射的に目を見開いた——
そして、目の前に広がる光景に息を呑んだ。
俺は、豪華な真紅の婚礼衣装を身に纏い、金碧輝煌の結婚式場に立っていたのだ。
四方を見渡せば、豪奢な装飾が施され、赤い燭台が高く灯り、宮灯が揺らめく。壁には精緻な金糸の刺繍が施された赤い幕が垂れ、足元には柔らかな絨毯が敷かれている。空気には、どこか馴染みのない淡い香の薫りが漂っていた。
全てが見知らぬ世界——だが、圧倒されるほどの壮麗さだった。
「……これは、一体どういうことだ?」
混乱する俺の視線の先、一人の女性が立っていた。
彼女は華麗な婚礼衣装を纏い、しなやかで優雅な姿をしている。その顔は薄いヴェールに覆われており、はっきりと見ることはできない。
それでも、わずかに見える輪郭や、ヴェール越しに感じるその瞳の深みからは、ただならぬ美貌が伝わってきた。
「これは……結婚式?」
俺が、新郎……なのか?
——その瞬間だった。
突如として、馴染みのないはずの記憶が奔流のように流れ込んできた。
まるで決壊したダムのように、未知の情報が俺の脳内を埋め尽くし、全身を衝撃が駆け巡る——
俺は、転生したのか……!?
この体の持ち主の名前は「龍牙」。
しかも、日本にいた頃の俺と同じ名前。
そして、この世界の名は——
天武大陸——強者が支配する世界
ここは、日本とはまるで違う。科学や秩序が支配する世界ではなく、力こそがすべてを決める苛烈な戦場だった!
強者は天地を裂き、河を断ち、山を動かし、星辰を操る。まるで神のように、あらゆる理を超越し、無限の力を振るうことができる。
だが、それとは対照的に——
弱者は虫けら同然。
ただ強者の足元で怯え、媚びへつらい、命を拾うことしかできない。
法も秩序もない、ここでは——力こそが絶対の世界!
これこそが、本当の世界なのか?
俺の鼓動が、速まる。
日本での日々よりも、ここは圧倒的にリアルで、圧倒的に苛酷で、そして……圧倒的に面白そうだ!
この世界で、力を持たぬ者に未来はない。
俺は、生き抜けるのか?
理性的で、冷静沈着な俺の性格からすれば、この状況は明らかに突拍子もない。
けれど——
なぜだろう?
この心の奥底から湧き上がる、言葉にならない高揚感は……?
「……なんだこれ、意外とワクワクしてきたぞ?」
その時、新婦がそっと手を伸ばし、薄いヴェールをわずかに持ち上げた。
ヴェール越しに見えたのは、漆黒の闇のような双眸——その奥は深く、底知れぬものだった。
彼女の声は、まるで冷たい夜風のように静かに囁く。
「この婚礼は……お前の悪夢の始まりに過ぎない。」
これまでずっと小説を書きたいと思っていました。
小説を書いている時は、いつもどんな時よりも真剣になります。
俺の物語が、皆さんに楽しんでいただければ幸いです。