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模擬戦

訓練場から少し離れた一面芝生の場所でベリルとジェットが少し距離を取って向かい合っている。


両者持っているのは訓練で使うような木剣ではなく、実戦で使う実物の剣だ。


俺がそれとなく木剣を進めたのだが、これから使う魔法の関係上これでいいらしい。


「ファイトライフ…」


長老が魔法を唱えると、ジェットとベリルの体に光が纏い…そして何事もなかったかのように消えた。



「これは?」

「訓練用の魔法じゃよ。簡単に言えば死に至る攻撃を一度だけ無効化できる魔法じゃな。発動するのにいろいろな制約が必要で実戦むきじゃないんじゃが、割と便利な魔法じゃよ…喧嘩が起こった時とかに。」


『それ魔法前提で殴り合いさせるってことか?

……まあ役には立ちそうだけど。』


俺がそんなことを考えていると、長老が杖を一振りする。


すると、俺や子供たち…見に来ていた自警団の用の椅子が地面から生えてきた。



『…この爺さん、どれくらい強いんだろ……まさか特級とかないよな?』


「あっ始まるよ。」


俺が長老を横目で見ていると、横に座っているルナがつぶやく。



俺が慌てて前を見ると、ジェットとベリルがお互いに武器を構えていた。



ベリルは普段から手入れしている見慣れた短剣。


反対のジェットは大剣と呼べるほどに大きな剣を片手で持っている。



『よく持てるな…あんな大剣。ジェットのやつそんな筋肉あったか?』


ジェットの身長はみのるより少し大きいくらいだが、手足は細目で見るからに大剣を持てるような体格ではなかった。



『これが異世界クオリティー…魔法の力か。』


俺がそんなことを考えている中…先に動いたのはジェット。


ベリルの方に突進していき、大剣を木の棒でも振るようにブンブン振り回しながら攻撃する。



対するベリルは避ける…次々来るジェットの攻撃を最小限の動きで避け続ける。


「ッ!『ストーン・シュート』!」


どれだけ攻撃してもベリルに当たらず、焦りだしたジェットは魔法でボーリング程の大きさの岩を出してベリルに飛ばす。


ただ、その程度の魔法じゃ痛くもかゆくもないとばかりに拳で砕く。


ジェットの得意は身体強化系の魔法でこういう何かを作る魔法は得意ではなかったため、フェイントみたいな使い方をしたかったのだが威力が低すぎて意味はなかった。



「!!ウオラァ!」


ジェットは雄叫びを挙げながら大剣を高速で振り回す。



見ている子供…特に男の子は結構興奮している。


ジェットの攻撃は地面に剣先が当たって砂を巻き上げたりもしている…スピード重視にでもしたのか?


もうこの段階で俺には残像しか見えないが、ベリルに攻撃が当たった気配はない。


『あ…当たらねえ!かすりもしねえ!なんだ…これ…ベリルさんってこんなに強かったのか?』



ベリルに全く攻撃が当たらないジェットはベリルのヤバさに驚いていた。


自分の攻撃が当たらないだけならまだしも、ベリルは最小限の動きで避けている。


ジェットの攻撃をベリルはすべて見えている…だからこそ出来る芸当であり、ジェットはベリルが自分より格上であることを理解した。



………ただ、ジェットは自分が負けるとは考えていなかった。


『ヴィースト!』


ジェットがそう唱えると自身の体毛と同じ色の黒い霧が湧き出て、ジェットの体や大剣に纏わりついた。



これがジェットの魂源魔法こんげんまほう『ヴィースト』。


簡単に言えば身体強化の魔法なのだが、魂源魔法なので強化幅が通常の身体強化の何倍かある。


しかも、ジェットから出た黒い霧は物質化して変形することができ、鎧にしたり武器にしたりといろいろなことができる。


ただ…デメリットとしてちょっと理性がぶっ飛ぶが、それを考慮しても十分に強力な魔法だ。



「ギャアァ!」


先ほどとは違う雄叫びを上げながら、より高速で力強い攻撃を繰り出す。


さすがに避けれなくなってきたのか、ベリルはジェットの大剣を受け流し始めた。


加えて、体に纏わりついている黒い霧が小さな槍になり近距離からベリルに飛んでくる。



ジェットの剣技と黒霧の物質化のコンボは流石に厳しかったのか、ベリルはジェットの大剣を弾いて後ろに下がる。


ただ、割と暴走気味のジェットは深いことは考えず、再びベリルに突っ込んでいく。



「エンチャント・ノバァ…」


向かってくるジェットを確認しながらもベリルは短剣に魔法を付与する。


そして向かってくるジェットの大剣と魔法を帯びたベリルの短剣が激突する。


『バキンッ!』



ベリルの魔法が発動した時にできる蒼い光が輝いた後…そこで見た光景はジェットの大剣が粉々に砕けている光景だった。


「あ?」


ジェットは砕けた大剣を何が起こったかわからないような表情で見ている。


ベリルはそんなジェットの胸元に入り込み、ジェットの前に手を添える。


「エンチャント・テンペスト!」


いつもは短剣に付与していたが、今回魔法を付与したのはベリルの手。


ただ、短剣だろうが手だろうが魔法の効果は変わらない。


ジェットは魔法を付与された手で胸を軽く押されただけで数メートルは吹き飛び、動かなくなった。


後から聞いた話だと、長老が使った魔法は効果が発動すると気絶してしまうらしい。


……つまり、ベリルの勝ちということだ。



「みんな分かったか?あれが1級と準1級の差じゃ。」


子供たちは皆よくわからないという顔をしていた。


「いやわかるか…」


早すぎて全く見えなかったわ。

作者 ジェットはあんまりひどい目に合わなかったな。

女神 むしろちょっとした見せ場みたいな感じでしたね。

作者 そうか?

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