干されている訳じゃない
食堂となった屋敷の一室についた俺とベリルは料理を配給をしている人から受け取り、適当な場所に座る。
ただ、俺たちが座っている近くには誰も近寄らない…昼食を食べるために住人が結構入ってきているのに…だ。
「相変わらず、これは慣れないわね。」
「確かに…端から見たらただのボッチだからな。まあ、俺としてはこっちのほうがいいけど。」
俺たちがたったふたりボッチ飯を食べているのはアリスが森の調査に行った次の日に原因がある。
「お!みのるにベリルさんじゃねーか。って…なんでそんなに辛気臭い顔してるんだ?」
話しかけて来たのはリリアーナの兄であるジェット。
長老の爺さんから俺たちに話しかける許可をもらっている一人だ。
「なんだって…お前らのせいなんだが?おかげでこっちは他のやつらが楽しそうに話しているのを見ながら、ベリルと飯を食べてるんだから。」
「なに?私と食べるご飯はいやって事?」
「いやそういうわけじゃなくて…」
「相変わらず仲がいいな。まあ、迷惑かけたのはすまんと思ってるけど、あれはこうでもしないと無理だ…あきらめてくれ。」
「…お前らどんだけアリスのこと知りたいんだよ。」
そう、アリスが森に出た次の日…ここにいるジェットとか長老みたいな一部の人間を除く奴らから俺たちはめちゃくちゃ質問攻めにあったのだ。
『アリスの好きな食べ物や動物』みたいなスタンダードのものもあれば、『恋人』だの『スリーサイズ』みたいな答えづらいものまで言ってきた。
……いや、そんなの俺たちが知るわけないだろ。
しかも〈俺、ベリル、ルナ〉を逃げられないように囲んできたからな…肉食動物に囲まれた小食動物の気持ちがよく分かった。
そんな状況を見た長老から出された命令が『一部の人間を除いた俺たちに対する接近禁止令』である。
ちなみに一部の人間とは『長老、ジェット、リリアーナ、子供たち』である。
まあ、緊急の時や用事があるとき、あとは俺たちからじゃべりかけた時とかは話してもいいってことになってるんだけど…ほかの奴らはめっちゃ不満そうだったな。
そんなにアリスのこと知りたいか?もう本人に聞けよ。
「そうそう。実がリリアーナに嫌われてるみたいなんだけどさ、お兄ちゃんであるあんたはなんでか知ってる?」
「んー?そうなのか?」
「いやだから嫌われてないって…多分。」
「めっちゃ避けられてたじゃない…あんなにいやそうな顔して。」
「いやそうな顔はしてなかっただろ!」
真実の中に一つまみの嘘を混ぜるな…本当っぽく聞こえるだろ。
俺たちが話していると、配給している人の後ろで皿を洗っているリリアーナが見えた。
…なんか、こっちのほうを見てた気がする。
「まあ多分だけど…みのるは別に嫌われてないと思うぞ多分だけど。」
「なんで多分を2回言ったんだ。」
「……まあ、嫌われてる云々は置いておいて、リリアーナと仲良くしたいんなら花の話でもすればいいぞ。あいつは花の話題だったら警戒心がなくなる割とチョロいか……『ガフ!』」
さっきリリアーナが居たほうから木のお玉が飛んできた。
「あ~~いってえ…なんであいつあんなに怒ってるんだ?」
「……ジェット、あんたデリカシーって言葉知ってる?実にアドバイスするなら前半だけでよかったでしょ。」
「?なんでだ?」
「お前マジか……ていうか、どうしてくれんの?これ…俺が後でリリアーナに花の話題を振ったら、それだけでリリアーナが心開いてくれるチョロい女って俺が思ってるみたいになるじゃねーか。」
せっかくいい情報だったのに。
「あー……ごちそうさま!オレはちょっと訓練に行ってくるわ。」
そう言うとジェットは皿を返して、訓練場に走っていった。
「逃げたわね。」
「おい…逃げんなよ。」
にしても、あれとリリアーナって双子の兄妹なんだよな……全然似てねぇ。
あの二人の両親を知らないから何とも言えないけど、双子ってこんもんなのか?
「あっ!みのる!」
ジェットという騒がしい奴がいなくなったせいで再びベリルとふたりボッチ飯になったところにルナが子供たちを引き連れてやってきた。
「おお、ルナ…と友達か。」
「「「「こんにちは」」」」
「お…おお…こんにちは。」
んーまぶしい。
子供が元気なのは見ている分にはいいけど、その中に混じるのはちょっと勇気いるよな。
ただ、ベリルが結構面倒見いいんだよな……今も子供と楽しそうにしてるし。
もっと現金な奴かと思ってた。
………いや十分現金な奴か。
「ねえみのる!ご飯食べたら、またおじいちゃんのところでべんきょうするんだけど…見に来てくれる?」
ん?授業参観ってこと?
作者 ジェットに関する情報だが…実は婚約者がいる。
女神 母親の親戚の親戚の親戚くらいの女の子ですね。
作者 ちなみに会ったのは8歳の頃に1回だけである。




