大所帯
実と別れたアリスはリリアーナの兄から言われた大きめの家に入り、そこで長老を含めたこの集落で指導者と呼ばれる立場にいる数人と話し合いをしていた。
「それじゃあ、ここは現在進行形で魔物が顕現してて危険だから、とりあえずワタシの屋敷に避難するってことでOK?」
「そうじゃな……この森もどこか異様な雰囲気を感じるしのう。…にしても、どうやって移動するのじゃ?この集落は小さいながらも300人くらいの人数じゃぞ?」
「大丈夫大丈夫、外に(実が造った)遠くに移動できる門があるから。」
「なるほど…さすがですな。」
長老たちは盛大に勘違いをした。
ちなみにここにいる人たちは全員1000歳越えの超高齢者であり、昔話や長老から聞いた話でアリスの正体は何となくわかっている。
「じゃあ集落の人を扇動するのは任せるよ。ワタシはちょっと屋敷をきれいにしてくる。」
アリスはそう言うとスタコラサッサと出て行ってしまった。
「……長老…」
「…今は細かいことは気にしないでいいんじゃよ。ほれ、早く集落の者たちに話に行くぞ。」
「いえ長老、そうではなく……その彼女が言っていた門はどこにあるんでしょうか?」
「…………」
その後、長老たちは住人達に事情を話して門を探し、世界樹の屋敷に転移してきた。
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「なるほど…」
俺はリリアーナの兄からある程度の事情を聞いた。
やはりと言うか、当然と言うか…アリスが原因だったらしい。
「にしても、移動し始めるの早すぎないか?荷物の整理とかこんなに早く終わるとは思えないんだが…」
「ああ、それはな…もともと『スタンピード』が起こった時点であそこを移動するのは確定してたんだよ。俺たちがずっとこの森にいることで学んだことは『一つの場所に定住しない』ってことだ。単体なら大したことなくても、集団ならヤバイ相手は山ほどいるからな。」
定住するのってそんなに危険なことなのか?
俺…もしかして、結構やばかった?
「ていうかさ…あんた達誰なの?この森で暮らしてる人間がいるとか初耳なんだけど?」
ここ数分ずっと黙っていたベリルが我慢の限界とばかりにリリアーナの兄に質問する。
「俺たちは世界樹の民だ。」
「まんまの名前だな。」
「まあ、外の世界で俺たちの存在が知られてないのはシンプルに誰もしゃべってないからだろ。ここにいる奴は全員『勇者信仰』の人間でここ世界樹の森は聖地みたいなもんだ。俺たちの存在を知られて、この地を他人に踏み荒らされるのはごめんだ。」
『勇者信仰』?アリスを信仰してるってことか……あいつやっぱり神様みたいな存在なのか?
ただ、今の答えではベリルはまだ納得してないみたいだ。
「まあ、あの金髪のねーちゃんがいいって言ったからしばらくお世話になるが、あんたらに迷惑はかけねえよ。できる限り言われたこともするし、よろしく頼むわ。」
「そう……じゃあお茶持ってきて。」
「なんでパシリにしてんだよ…。ていうか、ベリル…お前も居候だよな?」
「細かいことは気にしない!」
「気にしろや。」
少なくともこの人たちのことをとやかく言える立場じゃないだろ。
作者 ちなみに前回で《転移門》が起動しなかったのは長老たちの集落と世界樹の屋敷が繋がってたからだ。
女神 すでに繋がっている《転移門》とはつながらないようになっています。
作者 体が別々の場所に転移して、泣き別れにならないように必ず必要な設定だ。
女神 怖いですよ…まあ、その通りですけど。




