避難
ベリルとルナの説明を聞いた俺はしばらく考えていたがよくわからなかったため、深く考えるのをやめる。
「まあ、とりあえず世界樹の屋敷の方に行くぞ。正直、俺は行きたくないけど、結界が壊されたここよりは多分安全だろ。」
「…そういえば出てきたら結界なくなってたのよね…なんで?」
「そんなの俺が聞きたいわ。」
俺をここに連れてきた女神様が張った結界だぞ?壊されることなんてあり得るのか?
「まあ、詳しいことはアリスが知ってるかもだし…私たちは難しいことは考えずに世界樹の屋敷に行っとこうよ。」
「……それもそうだな。」
俺たちは〈転移門〉がある小屋に移動を始める。
途中、壁が焼けてバランスが不安定で今にも倒れそうな小屋を解体したのでちょっと時間がかかってしまった。
「あ~はら減った。実、なんか出してよ。」
「リルおねえちゃん…我慢しなきゃ。」
「そうだぞ、食いたいなら自分で作れ。」
「みのる…なんかちがう。」
そんな雑談をしながら、俺は〈転移門〉に触れ世界樹を思い浮かべる。
「……あれ?」
いつもなら〈転移門〉に触れながら転移したい場所の風景を思い浮かべたらそこにある〈転移門〉と繋がるのだが……なぜか繋がらない。
「ん?どうしたの?」
「いや…〈転移門〉が繋がらないんだけど。」
「へ?」
なんでだ?もしかして…世界樹の方も何かあったのか?
…いや、そんな感じはないんだよな……。
原因がわからず、俺たちの間に沈黙が訪れる。
そんな時間が数秒続いた時…勢いよく手を挙げるやつがいた。
「わたしがやってみる!」
ルナである。
「ああ、やってみてくれ。」
そうして俺に代わりルナが〈転移門〉に触れると…
「あっ…できた!」
なぜか〈転移門〉が繋がった。
「…あんた、ワザとやった?」
「いや…いやいや!俺の時はホントに繋がらなかったんだって!」
「……ホントに?」
ベリルからめっちゃ疑われている……まあ、俺も同じような状況になったら疑うけど。
「まあ、さっさと行こうぜ。」
俺たちは〈転移門〉を通って世界樹の屋敷に飛んだ。
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世界樹の屋敷に飛んだ俺たちは人混みで先に進めなくなっていた。
「は?ナニコレ?ってかこの人たち誰?」
『スタンピード』に合っていた集落の人たちがこっちに避難してきていたのだ。
「お!あんたは金髪のねーちゃんと一緒にいたやつじゃねーか。」
人混みの先にいる黒にちょっと灰色が混ざった狼獣人…確かリリアーナの兄だったっけ?が俺たちのところまでやってくる。
「おい!とりあえずこの人たちを通すから道開けてくれ。」
リリアーナの兄が一喝すると、荷物を運んだり整理したりと忙しそうにしている手を止めて、俺たちが通るための道を開けてくれた。
「ふぅ、ありがとう…助かった。」
「まあこれからお世話になる身だからな!これぐらい当然だ!」
……ん?お世話になる?
なんか嫌な予感をビンビンに感じるんだが……。
作者 精霊コンビがどう頑張っても空気になっちまう。
女神 それはもうしょうがないのでは?