いや骨折は治せよ
拠点にある〈転移門〉の小屋を出ると…そこは畑が焼けているだけでなく、小屋が欠けたり地面に穴が開いたりしている。
「…初めに来た魔物の集団の他にも襲撃してきたやつがいたのか……ん?あれは?」
拠点の光景に唖然としていると、残してきた『ルナ・ベリル・ゴレさん・スイ』の4人が集まって何か言い合っているのが見えた。
一人座っているアリスを囲うような形になっており、はたから見たらいじめているみたいだ。
「何やってるんだ…あいつら?」
俺はとりあえず4人のところに向かった。
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「だから!別に治さなくて大丈夫だって。」
「リルおねえちゃんのうではれてるよ?治さなきゃダメだよ。」
4人に近づいていくと、会話が聞こえてきて、なんとなくだが状況が分かってきた。
ベリルが何かをごねてるのか。
「おい、お前ら何やってんだ?」
「あっ……みのる!リルおねえちゃんがケガを治そうとしたらジャマしてくくるの。」
「だから別に大丈夫だって…重症ってわけじゃないし。」
ベリルはそう言いながら腫れあがっている左腕を見せてくる。
「……おい、ベリル…それ折れてるよな?」
「どっからどう見ても折れてるけど…それが何か?」
「いや治してもらえよ…痛いだろ。」
動かしたときに痛みで顔しかめてるじゃねーか。
「ほら、リルおねえちゃん腕出して。」
「だから!大丈夫だって!」
…なんで頑なに骨折を治そうとしないんだ?
俺は今も言い合いを続けているベリルとルナを横目に精霊コンビの方を見る。
2人はベリルに呆れのような雰囲気を醸し出しながら、焼け跡がある畑を見ている。
んーー燃やされたのはスイが作ってた花壇の一部か…後で復旧作業、手伝わなきゃいけないよな……って、うん?
そんなことを漠然と考えてながら拠点の状況を整理していくと、ベリルが骨折を治さない理由を一つだけ思いついた。
「なぁベリル…お前畑仕事手伝いたくないから骨折をそのままにしとこうとか思ってないよな?」
「…………お…思ってないけ…ど?」
はい目をそらした…嘘確定だな。
俺はとりあえずベリルの肩に触れ、暴れないように抑える。
「ルナ治せ。」
「わかった。」
「あ…ちょ、治さなくていいってー!」
こいつ馬鹿か?骨折って割と重症だぞ?しばらく左手が使えない暮らしをするくらいなら畑仕事したほうがいいだろ。
「あーあ、せっかくサボれそうだったのに。」
ルナの魔法によって腫れが治まり、きれいになった腕を振りながらベリルが心底残念そうにつぶやく。
「いやーよかったよかった…仕事いっぱい振ってやるから楽しみにしてろよ?あとルナに『ありがとう』しろ。」
「…最悪…でも、ルナちゃんはありがとう。」
「どういたしまし!」
これでとりあえず場は収まったし本題に入るか。
「それで?俺とアリスがいなくなった後、いったい何があったんだ?」
そうして俺はベリルとルナから、
『結界が壊された後、赤髪の男と精霊『イフリート』が襲ってきた。そしてその二人は問題なく勝てそうだったが…突然謎の光が乱入してきてベリルの骨を折り、赤髪の男と『イフリート』を回収していった。』
…という、頭に???しか浮かばない説明をされた。
作者 この世界では骨折は重症?軽症?
女神 普通に重症ですよ。




