逆光
『ッ…こいつ、何が近接は苦手だ!普通に強いじゃん!』
赤髪の男と激闘を繰り広げているベリルは心の中で愚痴る。
純粋な剣技…近接能力ならベリルのほうが上。
ただ、ベリルは攻めきれない…。
赤髪の男が使っている剣…煉炎剣は例にもれず特殊能力を持っており、触れるだけで普通の剣…つまり鉄が溶けるほどの高温になっている。
それに加えて、この剣はあり得ないほどに表面がデコボコになっており、そこから放出された炎は予測不能な軌道をとった。
このせいで、ベリルは攻撃を避けるときにオーバーなリアクションを取らざるを得なかった。
「あーあー、もったいない…その短剣欠けてきてるよー?いずれは君の魔法を刻むほどの代物だろうに…。」
「………」
ベリルの短剣は高温でデコボコの剣と打ち合うことにより少しずつだが刃が欠け、変形してきていた。
「にしても、大きくよけるねー。でも、それじゃあ攻撃に回れないよー。」
「……別にいいのよ。」
「?どういうことだ?」
「だって、あっちの勝負がついたら、こっちの勝ちなんだから。」
赤髪の男は『ハッ』っとした様子で自分が従えている精霊…『イフリート』の方を向く。
…そこには今にも消えそうな『イフリート』がいた。
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『イフリート』と『スイ』の勝負はかなり一方的なものだった。
『イフリート』を遠くに飛ばす過程で拘束しており、『スイ』の水魔法は『イフリート』レベルの魔法でも簡単に蒸発できなかったのだ。
さらに、純粋な魔力量…魔法技術…実戦経験において『イフリート』が『スイ』に勝っているものは一つもなかった。
クリオネの姿で上空から空爆のように放たれる山のような魔法に『イフリート』に大した対抗手段はなく…現在は文字通り〈風前の灯〉である。
「なるほどー…あれがさっき言ってた最強の精霊…。主がいないのは残念だけど……フフフ…『イフリート』以上の精霊…焼いたらどうなるんだろー。……君は気にならない?」
「〈エンチャント・テンペスト・ノバァ〉!…さっきから何言ってんのよ!」
『イフリート』の方を見ていた赤髪の男はベリルの攻撃をもろに食らい、吹っ飛ぶ…今にも消えそうな『イフリート』の方に。
『…食らったのはわざと!』
それに気づいたベリルは走り出すが、さすがに追いつけない。
赤髪の男は受け身を取り、必殺の奥義を使うため分断された『イフリート』と合流しに走り出す。
赤髪の男がある地点を通過する時、突如地面が崩れる。
…男には誤算があった、この場にいないゴレさんが地面に穴を掘って、二人が合流できないように落とし穴を作っていたことだ。
「なんだ?これは!」
赤髪の男が何が何だかわからずにいると、その穴にベリルが短剣を振り上げながら入ってきた。
『体勢的に剣は振れない…空中だから反撃も難しい…この狭い空間で炎は自殺行為…【獲った】!』
勝利を確信したベリル…ただ、そこにまばゆいほど光を帯びた何かがあり得ないスピードで乱入し、ベリルの腕を蹴り上げた。
『バキッ!』
あたりにベリルの腕の骨が折れる音が響く。
『スイ』を始め、その場にいた全員が空を舞っているベリルに視線を向ける。
そして次の瞬間には……赤い男と『イフリート』は消えていた。
作者 とりあえず戦闘終わり!
女神 スローライフのはずなのに、なんで怪しい集団がいるの?
作者 大丈夫……アリスがいる限り負けることはないからアリスがいれば。




