赤の精霊使い
アリスと実が転移した後、拠点に残されたベリルは外から聞こえてきた『何かを貫く音』で目覚し、寝間着のまま外に飛び出した。
扉を開ると、そこそこ離れた場所で『ワーウルフ』が木に突き刺さって絶命しており、その足元には『魔石』と思われる黒い石が落ちている。
そして、それを何が起こったかわからないような顔をしているルナがそっちを見つめていた。
ベリルは落ちている『魔石』を回収したい気持ちを抑えながらルナのところに行く。
「ルナちゃん、何があったの?」
「え…あ……わ…わからないけど、黒いおおかみがいっぱい来たとおもったら木がはえてきて、みのるとアリスおねえちゃんがどっか行っちゃった。」
「……ごめん、ちょっと何言ってるかわからな…ッチ!ルナちゃん!」
ベリルは急にルナを抱き上げ横に飛ぶ。
すると、そこを巨大な火柱が通過した。
「???」
「……あっぶな。
ねえ…そこにいるやつ、もしかして喧嘩売ってる?」
さっき火柱が出現したほうを向きながらベリルは威嚇するように言う。
「ん~~?別に喧嘩はうってないよー。
ただ、君たちを焼いたらどんなに奇麗なんだろうって思っただけだよー。」
そこにいたのは軽薄そうで身長が高く、無駄に顔が整った赤髪の男。
少し不気味な雰囲気をかもし出しており、後ろには一回り大きな火を纏っている何かがいる。
「火の…精霊……それも結構高位の。」
「お!そうそう!『イフリート』っていうんだー。
ていうか、よくわかったね?自分のことながら結構めずらしいはずなんだけどなー。」
「最近、最強の精霊使いを見たばっかりだからね…。」
「へーー最強…ここが終わったら、ぜひとも戦ってみたいねー。」
赤髪の男は『イフリート』と呼んでいた火の精霊を前に出し、戦闘態勢に入る。
「ルナちゃん…下がって。」
「う…うん。」
ベリルは腰の短剣を抜き構える。
ルナは後ろに下がり一応杖を構えるが、まだ状況に追いついておらず動揺が隠しきれていない。
双方が睨みあうこと数秒…ただ、その沈黙はベリルの遥か後ろから飛んできた『水の刃』によって破られる。
最初の火柱で自分が趣味で育てていた花を燃やされた『スイ』がブチギレて攻撃したのだ。
「うお!あぶっないー。」
赤髪の男と『イフリート』は飛んでくる水の刃を軽々避ける。
ただ、その隙を見逃さまいとベリルは走り出していた。
『正直、『エリア』が使えるなら話は早いけど、多分まだ仲間がいるから厳しいわね。』
精霊は魔法を使うときに自分の魔力だけでなく世界の魔力も使う。
『エリア』を展開すれば世界の魔力の使用を制限できるため、精霊の力を大幅に下げることができる。
ただ、現在ここには赤髪の男以外に結界を壊した人間もいる…とベリルは考えているため、一度使うと魔力切れになる『エリア』は使えないのだ。
「エンチャント・テンペスト」
「イフリート!」
ベリルは魔法を纏った短剣で赤髪の男に攻撃を仕掛けるが、『イフリート』に邪魔をされる。
そしてベリルに向けて火球を飛ばしてくる。
「ッチ…邪魔ね。」
『イフリート』から間合いをとったベリルが愚痴を言う。
「多数で戦えるのが精霊使いのメリットだからねー。
そりゃそうでしょー。」
赤髪の男はそう言いながらも『イフリート』に命令し、ベリルに向けて火球を飛ばす。
「まあいいよ…どうやら、その『イフリート』の相手は私じゃないみたいだしね。」
「?何を……」
ベリルが離れた場所で様子を見ていると、突如…地面から現れた水の触手が『イフリート』を縛り始めた。
『イフリート』は自分がまとっている火の火力を上げて蒸発しようとしているが、すぐに次が巻き付くため対処できていないように見える。
しまいにはご主人である赤髪の男から離れるように投げ飛ばされてしまった。
そして、『イフリート』は触手の主である『スイ』との一騎打ちに突入する。
「さすがね…にしても地面から生やすなんて、やっぱり主人と似るものね。」
ベリルはガーディアンがいなくなった赤髪の男の方に改めて向かっていく。
「…はあ、自分はそんなに近接戦って得意じゃないんだけどなー。」
赤髪の男は魔法で剣を創り構える。
「煉炎剣 イフリート」
煉炎剣 イフリート…刀身がデコボコで、時には小さな穴が見える剣とは言えないその剣は、赤と黒を足して割ったような色をしており、長さは短剣というほど短くないが普通の剣ほど長くもない。
その常識に収まらない形はこの剣が彼のオリジナルであることを強く表している。
『魔法剣』…特殊な能力を持つ自分オリジナルの剣であり、愛刀が魔剣まで到達したものだけが使える特別な魔法。
「それじゃあ…始めようかー。」
「エンチャント・ノバァ!」
二人の激闘が始まった。
作者 魔剣と魔法剣の設定…逆にすればよかった。
女神 ほとんど同じようなものですけどね。
作者 いや全然違うから。




