春…そして影
初雪からかなりの時間がたった。
最近までずっと雪が降っていたが、今ではあたりに少しの雪が積もっているだけで、ほとんどは溶けてしまった。
…ていうか、あれだけの吹雪で何も壊れなかったのか…この木、頑丈すぎだろ。
「ん?」
外を歩いているとルナが雪像の前で『あわあわ』しているのが見えた。
手から魔法で雪みたいなやつを出しているし、多分雪で作ったいろいろなものが溶けているのに衝撃を受けたんだろうな。
……まあ、自然現象だからな…しょうがない。
にしても、あんだけ吹雪いてたのにきれいに残ってるもんだな…なんかの魔法か?
「おー君!やっと起きた?」
俺がルナのほうを見ていると、畑のほうから呼ぶ声がする。
声のほうを見ると、まだ肌寒いのにアリスがクワを持って、せっせと畑を耕していた。
「……元気だな、アリス。」
「やっと外で農業ができるからね…テンションも上がるってもんよ。」
確かにアリスはテンションが高いけど、隣にいるスイは全然元気じゃないな…多分、無理やり連れ出したのか。
「ほら早くこっちに来て。
ちゃんと土を作らないとおいしくならないわよ。」
「はいはい、わかった。」
畑にいるアリスの近くまで歩いた俺はクワを出して耕し始めた。
…この時、拠点に張っている結界に近づいているフードを被った怪しい人影がいることに気づいていなかった。
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しばらく畑を耕していると、突然アリスの手が止まる。
「ん?アリス?どうかした…『パリン!』え?」
その瞬間…女神様が創った結界がガラスを割ったような音と共に粉々になった。
そして割れた結界の向こうから、俺が海で戦った『黒い狼』の魔物が数100匹と『ワーウルフ』のような見た目の生き物?が十数匹の集団がこっちに向かってきていた。
後で聞いたところによると、『ワーウルフ』のような生き物は『魔獣』と呼ばれる魔物の親玉みたいなやつらしい。
「こいつは…って、数が多いな!」
俺は畑を踏みながらこっち向かってくる集団に対して〈斧〉を構える。
そしてアリスの方を見ると『黒い狼』に向かって中指を立てている。
『いや、ファ〇クじゃないんだよ…気持ちはわかるけど。』
そんなことを考えながらも、一応俺より強いアリスにどうすればいいのかを聞こうとした瞬間……
突然、地面から出てきた木の触手…アリスの魔法が『魔獣・魔物』を問わず、そのすべてを串刺しにして、絶命させた。
魔物である『黒い狼』は霧となって消滅し、たまに小さな石を落としていた。
逆に魔獣である『ワーウルフ?』はどこも欠けることなく、木に突き刺さった死体だけが残った。
「え?」
何が起こったかよくわからずにフリーズしていると、アリスが俺の肩を叩いてくる。
「ルーナリアちゃんは…離れてるから無理…それじゃワタシたちだけで行くわよ。」
「は?行くってどこ……。」
アリスは急いでいたのか俺の問いには答えようとせず、俺を巻き込んでどこかに転移した。
作者 冬…終わった。
女神 あなたが終わらせたんでしょうが。




