猛吹雪
冬が到達してしばらくしたある夜……俺はずっと寝付けずにいた。
なぜかって?…外が吹雪のせいでうるさいからだ。
あのドラゴンほどの騒音じゃないが、風の音とかの環境音が俺の睡眠を妨害してくる。
「…まあ、たぶん寝れてないのは俺だけなんだけど。」
ここ数日、俺以外の連中は寝る間も惜しんで『オセロ』してたからな。
ベリルたちはしばらくの睡眠不足が限界になったのか、夜の8時にはみんなぐっすりだった。
そんな事情もあり、この静寂のせいで外の音がますます騒がしく聞こえる。
そして、俺が安心して眠れない理由はもう一つ。
「これ…倒壊とかしないよな?」
現在、外は猛吹雪。
いやブリザードと言ったほうがいいかもしれない。
外に出たら絶対遭難するレベルだ。
「はぁ…こんなことなら『世界樹の屋敷』に行ってたほうがよかったか?ゴレさんとスイは向こうにいるし………いや正直あそこには行きたくないな。」
今いる家?小屋?よりは世界樹の下にある屋敷のほうがおそらく強度はある。
そう考えた俺は今からベリルたちを起こし、そっちに移動することも考えたが、俺自身が行きたくないので考えないようにした。
「……うん大丈夫…壊れない壊れない。」
よくよく考えたらこの家の素材に使ってる木は、ベリルですら簡単には切れない程の強度をもったものだ。
雪程度で押しつぶされることはないだろう。
……俺は頭でそう考えながらも、騒音と倒壊の心配で眠れないと思い、部屋の中で出来ることを探しにベットから起き上がった。
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リビングに来た俺はしばらくウロウロすると言う不審者ムーブをかました後、椅子に座る。
「『オセロ』以外のボードゲームでも作るか。」
今までは『オセロ』一つで割と楽しめていたのであまり必要性を感じなかった。
ただ『オセロ』だけじゃなく、『チェス』に『将棋』『麻雀』『双六』などのボードゲームも作っておいて損はしないだろう。
ということで、俺は〈アイテムボックス〉から木材を取り出して、作業を始める。
まず作り始めたのはチェス。
〈ヤスリ〉を手元に出して木材を『ポーン』『ナイト』『ビショップ』『ルーク』『クイーン』そして『キング』をじっくり時間をかけながら、それぞれ定番の形に掘っていく。
「………色は……後でゴレさんに塗ってもらうか。」
たった今掘り終わった『キング』を見ながら俺はそうつぶやく。
『チェス』の駒がいい感じにできたのでこのまま俺が下手糞な塗装をしてはもったいないと思ったからだ。
ゴレさんがこっちにいないことを残念に思いながら作った駒を適当にいま作った木箱に入れる。
「盤面は確か『オセロ』と同じ8×8だったはずだし、今は作らなくていいか。」
チェス盤を作るのはめんどくさかったので後回し。
次は『将棋』…ではなくもう一回『チェス』。
オリジナルの『チェスの駒』を作ってみたかったの。(オセロだとオリジナリティ出しずらいし)
ただ、オリジナルの駒を作るにしてもその仕様上、最低6種類のモデルが必要になる
「ん~なんにしよう……ルナとかベリルを掘るのは恥ずかしいし…この世界で出会った動物にでもするか?」
我ながらなんでこんなテーマが出てきたかわからないが、意外とちょうどいい感じになりそうだったのでこれで行くことにした。
『ポーン』はうさぎ、『ナイト』はシカ、『ビショップ』は魚、『ルーク』は熊、『クイーン』は白い狼(別にルナではない)、最後に『キング』はドラゴンって具合だ。
……一応作ってみたが、なんか『ビショップ』だけ違う気がする。
…そんで白い狼だけ気合入れすぎたかも……。
…まあ、気にしない気にしない。
俺は別の木箱を作り、動物の駒をしまう。
「君、何やってるの?」
突然後ろから声をかけられてビクッ…っとしてしまったが声で誰がいるかはすぐわかった。
「アリスか…びっくりさせないでくれ。
ていうか、こんな時間に起きて眠くないのか?」
「こんな時間って、もう朝の5時だけど。」
アリスはこの前ベリルにねだって貰った『ゴールドの懐中時計』を見ながら言う。
「マジか…もうそんな時間。」
「それで何をしてたの?」
「ちょっと木彫りを…。」
俺は机の上にある木の箱を開け、アリスに見せる。
「へえーいいじゃん。
……でも、色は塗らないの?」
「ゴレさんに塗ってもらう予定。」
「なるほど…まだ完成ってわけじゃないのね。」
なんかアリスが納得したような顔をする。
「………ちなみにこの白いオオカミってルーナリアちゃ…」「違う。」
他より出来がいいからって変な妄想すんな。
こんな風にふざけながらも春はだんだん近づいていた。
作者 春はもう近い。
女神 ちなみに今は何月くらいなの?
作者 11月ってことにしといて。