肌寒くなってきた
「ハッ…ハクション!」
アリスが魔法で地面に肥料を撒いているのを見ているとき、俺はクシャミをする。
「ん?大丈夫?」
「ああ、大丈夫だけど…なんか寒くなって来たな。」
「もうちょっとで雪が降りそうな感じだから、まあ寒くはなってるよ。
ここからは見えないけど西と東にある山脈には雪が積もり始めてる。」
アリスは地面から出ている木を矢印のようにして左右を指す。
「うげぇ、まじかよ。
ていうか、今は何月くらいなんだ?」
「あともうちょっとで9月くらいじゃない?」
いや寒くなるの早…でも、逆算して俺がここに来たのは4月くらいってことになるよな。
……そんなに寒くなかったし、もしかして俺が知ってる季節の周期と違うのか?
「ん?ちょっと待って、これから雪が降るほど寒くなるってことは種植えしないほうがいい感じ?」
「逆に作物を育てようとしてたの?…まあ、育たないことはないけど、かわいそうだからやめといたほうがいいと思う。」
「そりゃそうか…。」
確かに寒い中『のびろ~のびろ~』ってのはさすがに酷か。
「…ちょっと待って、じゃああの今育ててるやつも収穫したほうがいい?」
「そりゃしたほうがいいでしょうね。
冬の食糧だって必要じゃない?」
「いやそれはもう十分すぎるほどあるんだよ…〈アイテムボックス〉の中に。
でも、収穫か…【ベリルの宝】を出したから〈アイテムボックス〉は空いてるけど、何かあった時のためにそんなに入れたくないんだよな…食糧庫足りるか?」
俺は今の食糧庫の状態を思い出す。
今空いてるのは小屋1軒と半分くらいか…うん、入らん!
「はぁ、めんどくさいけど食糧庫足りないから俺建てに行くわ。」
「OK~ワタシ手伝おうか?」
「ゴレさんとベリルに手伝ってもらうからいい。」
「ベリルちゃん…がんばれ。」
俺はゴレさんを連れて昼になってもまだ寝ているベリルを起こしに歩き始めた。
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ベリルを連れて適当な場所についた俺は〈アイテムボックス〉から木材を出し、食糧庫小屋の建設を始める。
「ねえ、これ私が手伝わなきゃダメなの?」
ベリルが目をこすりながらそう愚痴る。
俺に向いている視線もどこか怒りの感情が見え隠れする。
「いやお前な、一応居候って立場なんだからちょっとくらい手伝えよ。
アリスも畑手伝ってるんだから。」
「アリスは農作業好きそうじゃん。」
「いや知らねぇよ…ほら、そこにある木の板持て。」
俺に支持されたベリルはしぶしぶながらも木の板を持ち上げる。
「……だいたい食糧庫って、あんたの〈アイテムボックス〉だっけ?に全部入れればいいじゃない。」
「俺は何か容量があったら開けておきたいタイプなんだよ…ん?ああゴレさん、その調子でガンガン掘ってくれ。」
地下室用の穴を掘ってるゴレさんをしり目に俺とベリルは小屋を建てるために木材の加工をする。
〈建築〉スキルも〈世界樹の盟主〉に統合されたからそれなりの建築技術も使えるようになったため、これから試していくつもりだ。
「ふわぁ~…眠い。」
「お前、今もう昼だぞ?」
そんなこんなで、俺たちは数日かけて食糧庫を建設して、終わったころにはアリスが一人で全部収穫を終わらせていた。
作者 この世界の四季は1月から3月が春、4月から6月が夏、7月から9月が秋、10月から12月が冬って感じ。
女神 ちなみにみのる達がいるところはちょっと緯度が高いから結構寒くなってるわよ。