魔法農業
俺たちが拠点に戻ってきた次の日、朝から俺は畑を増やしていた。
〈農業〉スキルが〈世界樹の盟主〉に統合された影響で増えたパネルの中に〈効果範囲無限〉というのがあったため、暇つぶしがてら地面を耕しているのだ。
種も野菜や果物の食用のものからバラやユリのような鑑賞用のものまで作れるようになり、俺が知ってる大体の植物は育てられるようになったため、現在…めっちゃテンションが上がっている。
ちなみに畑を広げたら収穫が間に合わなくなるんじゃないか…と思うかもしれないが、その問題はいま隣にいるアリスが解決した。
話を聞いた感じ、なんか農業に使える魔法があるらしい。
野菜をおいしく食べれるタイミングで成長を止める結界魔法に、収穫を手伝ってくれるゴーレムの召喚魔法、あとアリス限定だが木の根を生やして一瞬で収穫…とかもできるらしい。
あと、野菜に魔力を注ぐと育つのは俺だけが使える特殊能力というわけじゃなく、まれに植物との親和性が高い魔力を持つ人間が使えるらしい。
ちなみに、この野菜に魔力を注ぐという行為は魔力操作の実力が美味しさでわかるらしく、アリスと俺がそれぞれ魔力を注いだ野菜を食べたとき、美味しさが違いすぎてちょっと悲しかった。
まあ、これをできる魔力を持ってる人はめずらしく、ベリルが言うにはこれがあるだけで農業系で失敗することはないらしい。
ずっと言ってなかっただけでベリルはうらやましいと思ってたらしい。
「ふー…さすがにこれは疲れるね。」
隣にいるアリスが腰を抑えながら上半身を後ろに倒している。
ただ、その周りで地面から触手みたいに出てきている木の根がクワを持って耕してるんだけど。
「今…おばあちゃんみたいとか考えた?」
「考えてねぇよ。」
「…………」
いやまあ一瞬思ったけどアリスがおばあちゃんっぽいのは今更じゃん。
「そんなことより、あの木の根って俺でもできるのか?」
「無理じゃない?これって多分ベリルちゃんが言ってた〈魂源魔法〉ってやつだし、私オリジナルの魔法かな。」
「…それ思ってたんだけどさ、『スイ』は〈魂源魔法〉じゃないのか?基準がわからないんだが。」
俺はゴレさんと一緒に水やりをしているアリス所属の水の精霊を指さす。
「あ~多分スイもそうだと思うよ…もともと他人の魔法だし。」
「他人の魔法?」
どういうことだ?スイは誰かからもらったってことなのか?
「まあまあ、細かいことは気にしなくていいでしょ。…ほら、結構耕したし、次は魔法で肥料を作って撒くわよ。」
アリスはそういうと、地面に手を触れて魔法を使い始める。
すると触れたところから土が黒くなり、おいしそうな野菜が育ちそうな環境ができた。
地球では科学や機械を用いて農業をあっという間に発展させた。
どうやらこっちの世界では魔法がその役割を担っているみたいだ。
作者 この世界では割と生産系の魔法が開発されている。
女神 まあ、お金稼げますからね。
作者 ちなみに魔法農業は環境に悪影響はほとんどない。