止まった森
「よし、それじゃあ世界樹に向けて出発だ。」
畑の作物が育たなくなったことが判明したその日のうちに俺たちは世界樹に向けて出発した。
今回もゴレさんには留守番を頼んで、ちょっと申し訳ない。
まあ、ちょっと世界樹まで行って文句言うだけだから今度はすぐに帰ってくる予定だ。
「ねぇ、やっぱりもうちょっと準備した方が良かったんじゃない?
こんなにデカい結界を創れるやつの前に無策で行くのはどうかと思うんだけど…」
「だったら世界樹に行くまでの数日のうちに考えれば問題ない。
とりあえず1発殴りに殴ればいいんだよ殴れば。」
俺は青筋を盾ながらベリルの問いに答える。
正直言って、怒りで正常な判断が出来てない感はあるがそこは気にしないことにする。
「まあでも、ルナちゃんをゴレさんと一緒に留守番させたのは正解だと思う。
まあ、本人は行きたがってたけど…」
そう、今回ルナにはゴレさんと一緒に留守番を頼んだ。
危険…ってのはもちろんあるが、俺の気分として隣人に苦情を言いに行く感じなので子供は連れて行きたくないってのが大きい。
「ただやっぱり長い間留守番させるのは心配だし、さっさと走って行こうぜ。
……なんか走りやすく道が整備されてるしな。」
「…言語化するのやめてくれない?この道不気味で怖いのよ。」
「その気持ちは正直よくわかる。
でも、この道を見た感じ、この結界の中にはこの森の動物は入ってない。
だから何も考えずにダッシュできるぞ。」
海に行った時はルナにまわりの動物を狩ってもらってたが、それでもずっと走るみたいなことはできず、結構進むスピードは遅かった。
だからこそ、結界の中に何もいないとわかったらいろいろ面倒なことを考えなくて楽だ。
「…まあいろいろと言いたいこともあるけど、そろそろスピード上げようよ。」
「そうだな。」
俺たちは体を魔力で覆うことで出来る身体強化を本格的に使い、世界樹に向けて走り始めた。
しばらく走っていると、あたりの木が太く長くなっていく。
「この森は中心に行くほど魔力が豊富だからね、植物とかは以上成長するのよ。」
「はぁはぁ…そう…なのか。」
「それじゃあ、もうちょっとスピードあげるよ。」
「…はぁ…はぁ…はぁ」
…ちょっとペース早い…けど、多分まだ大丈夫…
そんなこんなで走り続けること4時間程…
「はぁはぁはぁはぁぁぁぁ…はぁ」
俺は死にかけていた。
「情けないわね…ルナちゃんの方が体力あるんじゃないの?」
「…うる…せ…え、いまま…で……やせ…いで生き…てた……ルナ…と…比べる…な!」
「息激しい過ぎて何言ってるかわからないんだけど…」
「もうダメ……限界。」
俺は地面に倒れるように寝っ転がる。
「…はぁ、まあ結構ハイペースで来たし、この調子なら3日ぐらいで着くかもね。
まわりを気にしなくていいのは想像以上に大きいわ。」
「…………」
「ついには喋らなくなったわね。
おっこのスープ美味しい。」
寝っ転がりながらも〈アイテムボックス〉からゴレさんに作ってもらった料理や寝袋みたいなものを出す。
そしてベリルが勝手に食い始めやがった。
「…………」
ただ、喋れない。
横腹が死ぬほど痛いし、魔力が足りない影響で頭痛も痛い?
そんなバカみたいなことを考えて結界の外の方を見てると、木と木の間を何かが歩いている。
「………え?ティラノ…サウルス?」
木の影になってちゃんとは見えないが…あれは間違いなくティラノだ。
博物館で見たことあるから知ってる!
「お、あれティラノじゃない。
まあでも、あの肉あんまり美味しくないし、まあどうでもいいかな。」
あれ?ビビらないの?
ていうか、なんで肉の味の話になってるんだよ、バカかよ!
「!ああ…あんたは中心付近にいる特有の動物…恐竜と会うのは初めてだったわね。
まあ、ここら辺のやつは魔法を使ってこないからそんな強くないし気にしなくていいわよ。」
強くない?ティラノが強くない?…そんなことある?
なんかこの世界の強さの基準がよくわからなくなったが、この森の生態系よりはマシか。
マジでこの森って古代からずっと時間止まってたんじゃね?
作者 なんかクラシックパークみたいだな…世界樹の森。
女神 いや、ここの生物は正当に進化しただけだから。猫がサーベルタイガーみたいに。
作者 そんなことある?