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破船の上で水精は舞う・中

「ルナ、すまんがちょっと手を出してくれ。」


「?わか…った?」


少し離れた所から魔法を打っていたルナのところまで戻った俺は端的に言えば手を繋いでくれとお願いした。


ルナが困惑しながらも俺の手を取ると、〈パーティ〉スキルの〈ギフト(MP)〉を使い、ルナから魔力を吸い上げ始めた。


「悪いルナ、ちょっと魔力貰うな。」


「う〜ん?いいよ。」


ルナは魔力を吸われる感覚が初めてだったのか困惑しながらも許可してくれた。


ちなみにこの間もルナは片手間にクリオネに対して攻撃している。



「ルナ、魔力ありがとう。」


「いいよ!」


魔力を9割ほど回復した俺はルナにお礼を言うと再びクリオネに向かって走り出す。


すると、こっちに気づいたクリオネが『水圧カッター』を俺に向かって飛ばしてくる……いや、飛ばしてきすぎじゃね?


完全にベリルの分までこっちに飛ばしてきてるじゃねーか!


俺は一旦停止して避けるが、いかんせん数が多すぎて難しい…


「しょうがないか……〈特攻バグ・かまいたち〉!」


このままじゃクリオネに近づけないと思った俺は再び〈アイテムボックス〉から木片を出して、それを巻き込むように〈斧〉を振り、風の刃を飛ばす。


途中、クリオネと接近戦していたベリルに当たりそうになったがギリギリ当たらず、そのまま風の刃はクリオネを上下真っ二つにして地面に落下した。


「おいみのる!危ないだろ!

私が真っ二つになるところだったじゃない!」


「いや、ごめんごめん…でも射線上に入ったベリルも悪いのでは?」


「そっちのが見えてるんだからそっちが合わせ…うん?」


俺とベリルが言い合いをしてると、さっき真っ二つにして水たまりになったクリオネの残骸が再び『水球』に戻り、また形を変えていく。


クリオネと比べると長い手に足があり、長い髪に膨らんだ胸…挙げ句、腰には剣を携えている。


「……おい、次は人間に変わったぞ。しかもめっちゃ美人。」


「まあでも、さっきの感じならあんまり苦戦は…は?」


水でできた人間……水人すいじんが手を挙げると、ルナの魔法でかき氷みたいになっていた氷が全て溶けて水人すいじんの上に集まっていく。


あたりの水がなくなる頃には学校の教室くらいならすっぽり入りそうな大きさの『水球』になったと思えば次の瞬間…野球ボールほどの大きさまで小さくなった。



「ルナちゃん、こっちにきちゃダメ…みのる、私たちも早く離れるよ。」


「え、どうしたんだ?」


「いいから!早く下がる!」


ベリルが慌てた様子で急に後ろに下がるので、俺も急いで下がる。


俺たちがある程度のところまで下がると準備万端と言わんばかりに頭上にあった『圧縮された水球』を胸の前に持ってきたと思ったら瞬間……俺たちの後ろから何かがブチ当たったような〈ゴオオオオ〉という爆音がなる。



「………え?」


俺はいつの間にか『何かで切ったような傷』ができたほっぺを触りながら何が起こったのかを考える。


……いや、わかっている。


ものすごいスピードの何かが俺の顔の横を通って、後ろの壁に当たったんだ。


『もし…あとちょっとズレてたら……』俺がそんなことを考えていると水人が今度は3つに分けて『圧縮された水球』を作り始める。



「二人ともとりあえず動いて!」


ベリルがそう叫ぶのと同時に俺たちは走り出す。


そのタイミングで『圧縮』が終わったのか、水人が再び『水球』の攻撃を始める。


ただ……3つの『水球』の攻撃は全て俺に飛んできた…。


「ッ…アッぶな。」


間一髪で『水球』を避けたが、さっきと違って消滅しない…なんなら俺の方に近づいて来ている。


今のでわかったが、この攻撃は水鉄砲みたく『圧縮した水球』から水を飛ばしてるみたいだ。


「威力とスピードを削って、数と弾数を増やしましたってか?ふざけやがって。」


そう言ってる間にも2発目が飛んでくるがそれもなんとか避けるが次は距離的にかなり厳しいぞ…。




「エンチャント・テンペスト!」


俺から離れた場所ではベリルが水人本体とバチバチにやっているが、ルナの援護ありでも厳しそうだ。


『ッ…この動き、絶対剣技に精通してる。ホントになんなんだコイツ…』


ベリルがそんなことを考えていると、なんの前触れもなく水人が剣を振り上げる…と同時に足元から巨大な波が発生してベリルを後方に押し出す。


ただ、ベリルも波に飲まれて状況を理解したのか、すぐに自慢の魔法を付与した短剣で波を吹き飛ばして、次に備えたが『その次が来ることはなかった』。



理由は単純、水人が俺の方に向かって来たからである。


「待て待ッ…待て待てまて!」


俺は3発目を避けながら事態のヤバさを認識する。


ベリルとヤリやってた剣技もヤバいが、それ以上にヤバいのは近距離で最初の『水球』を使われることだ。


『今のはギリギリ見えるから避けられるが、あれは絶対避けられねぇ!』


「オラァ〈特攻バグ・かまいたち〉✖️3!」


俺は『こっちに来るな』と言う願いを込めて恒例の〈アイテムボックス〉から木片を巻き込みながら被弾覚悟で〈かまいたち〉を放つ。


ただ、俺の〈かまいたち〉の最初の2発は普通に躱され、最後の1発は剣を切りはしたが、体に当たらないよう軌道を変えられてしまった。


かく言うこっちも、ルナが魔法で『水球』から出た水の軌道を変えてくれたおかげで、1発がちょっと腕に当たった程度で済んだが、それに安堵している時間はない。


辺りに散らばった水が再び水人の上に集まり『水球』を形成するというテンプレに入っているからだ。


そして俺が思った通りさっきみたいな分割はせずに、最初と同じ1発勝負でくるみたいだ。


『ヤバい…どうする、どうする?いや避けるしかないわけだが…タイミングをしくったら…vいや、タイミングが完璧でも運が悪かったらその瞬間にお陀仏だ。

…だったら一か八か……。』


俺は〈アイテムボックス〉から木片を取り出す。


『どうせ運ゲーなんだ…だったら、せめてタイミングはこっちで決めさせてもらう。』


俺は〈スキル〉を使ったあとに、一瞬だが体が全く動かなくなる時間がある。


『まあ、相手がこれに気づいているかどうかは知らないが、気づいていると信じて実行する!』


俺は〈かまいたち〉を使った時と全く同じ動きを始める……そして木片に斧が当たった瞬間、全力で右に飛んだ。


が…次の瞬間、俺の左太ももに痛みが走る。


「ッ……俺の太もも削ってんじゃねーぞ!」




————————————————————————————————————



突然だが、なぜこんなにもみのるが狙われてるかと言うと、それはシンプルに最も『浮いたコマ』であるからだ。


ベリルとルナはここに来てから海中探索でずっと一緒にいたのもあって連携は一応できる。


ただ、みのるはあまり二人とも一緒に戦ったことがなく、連携にはあまり混ざれていない。


これは実が悪いというわけでではなく、お互いそれぞれの戦い方を知らなかったと言うのが大きい。


だから別に『実が強いから狙われている』だとかそう言うことは断じてない。


……そう…断じて違うのだが、ここに静かにキレている奴が一人いた。


「……へぇ、私のことは無視してそっちは楽しそうだね。

実がそんなに怖いねぇ…そう…じゃあこっちも無視できないようにしてやるよ…。」


ベリルは頭にあるバンダナを脱ぎ、手首に巻き付けながら唱える。


魂源魔法ソウルマジック エリア2 彗星を追いかける破船〈コメット・レック〉』


一瞬、辺りが暗くなったかと思ったら、洞窟だったはずの景色は月明かりで照らされた大海原に変わり、全員が帆がビリビリに破けて床の木も腐ってそうな『ザ・幽霊船』に乗っていた。

作者 ダメだ…我ながらネーミングセンスが…

女神 あっそれ自覚してるのね。

作者 なんかカッコよく聞こえる言語とかあったら教えてくださいお願いします。

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