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襲撃

紅眼こうがんの狼を見た俺が抱いた感情は【恐怖】。


しかし、それは圧倒的な強者などの自分の生死にかかわるところからくるものではなく、オバケやオカルトのような『この世のものではないもの』に対する恐怖だ。


俺は感じた恐怖によって、一瞬動きが止まる。


ただ、次に狼がとった行動で俺の思考は戻される。


狼の隣にそこそこの大きさの黒い炎が浮かんでいる……そう『魔法』を使ったのだ。


普通、知性のあまり高くない動物は魔力を持っていても魔法を使えない。


せいぜい魔力を体で循環させて、身体能力を高める程度だ。


もちろん、世間的に強いといわれているこの森にいる動物ですらほとんど使うことはできない……もちろん、ルナのような【特殊な個体】は例外だが…


だが、この狼は使ってきた、…この森にいる最弱の動物よりも弱そうなのに…だ。


「ッチ、なんでお前が魔法を使ってくるんだよっ……〈かまいたち〉!」


俺はこっちに飛んでくる黒い炎を後ろに飛んでよけ、狼の着地に合わせて〈かまいたち〉を飛ばす。


狼が魔法を使ったことには驚いたが、スピードがないため簡単によけることができたし、威力も地面に着弾してもこの森に生えている雑草が焦げた程度だった。


反対に、俺が放った〈かまいたち〉は狼の右前足にヒットし、その足を切断した。


右前足が切断され、狼の機動力が落ちたのを確認した俺はとどめを刺しに狼に近づ……こうとしたところで足を止めた。


…………違和感…右前足が切れている狼はただ止まっている……そう、足が切断されているのに『痛みを感じている気配』がないのだ。


俺は目の前の狼が何を考えているかわからず、不気味で、うかつに近づけないでいた。


すると、切断した狼の右前足から黒い霧が出てきて、形を成していき、狼の右前足になる…つまり再生した。


「……ウソだろ。」


俺は目の前で起こったことが信じられずに唖然としてしまう。


『もしかしてこいつは不死身なんじゃないか』みたいなことが頭に浮かんでいると、前足が復活した狼がこっちに向かって走って来た。


しかし、ただまっすぐ走ってきているだけで問題なく対処できる…そう思ったとき、横から『黒い炎』…あの狼の魔法が飛んできた。


これが計算されたものだと言うのなら恐ろしい…が俺にとってこの攻撃はそんなに恐ろしいものではない。


狼を射程内まで引きつけた俺はこのタイミングでにあったスキルを使う。


「〈ハリケーン〉!」


俺は斧を振り回しながら回転し始める。

すると、周りにも風と水の刃が出現し、効果範囲内にいる狼と魔法を切り刻む。


狼は初め、俺が切ったところから再生して耐えていたが、それが追い付かなくなってきたのか体がバラバラになり、最後には何も残さず『黒い霧』となって消えてしまった。



「………何だったんだ…こいつは。」


何本も倒れている木と焦げた地面を見ながら、あの狼が何だったのか考える…がそれらしい答えは何も思い浮かばない。


「…………とりあえず戻るか。」


そうして俺が2人のところに戻ろうとした時、こっちに向かって走ってくる足音が聞こえる。


『もう一体来たのか』と思い、再び斧を構えるが、こっちに来ているのが白い毛のオオカミ……ルナなのが見えたため、俺は斧を降ろす。


ルナは俺のところまでオオカミの姿で走ってくると、いつもの幼女の姿になる。


「みのるだいじょうぶ?なんかすごい音したけど……。」


「ああ大丈夫、ありがとう………って、ベリルは来てないのか?」


「う~んとね、私が一緒に行こうって言ったとき、なんか『大きな獲物が来る…来てるんだよ!』って言ってそのまま釣りしてたよ。」


…………いや、別に来てほしかったわけじゃないんだけど……何だろうそこはかとなくムカつく感じわ。


「……まあ、とりあえず戻ろう。」


「うん!わたしおなか減った!」


そんなこんなで、俺とルナは拠点に戻ることにした。




————————————————————————————————————



「おーお帰り、ご飯できてるよ。」


俺たちがベリルのところに戻ると、長さが1メートル…いや2メートルはあるでかい魚を串刺しにして丸焼きにしていた。


俺たちが今まで釣った中でもダントツでデカい。


「……いや…スゲーでかいな。

どうやって釣ったんだ?それ…適当につくった木の竿で釣れるでかさじゃないだろ。」


「それはね~、魔法でかる~く電撃を浴びせてやっただけだね。」


…いや仮に電撃を浴びせても一人で釣りあげられる大きさじゃないだろ!ゴリラか何かか?


「…………今なんか相当不名誉なことを考えられてた気がする。」


「気のせいだ。

そんなことより飯にしようぜ、切り分けてやるよ。」


俺はそう言いながら皿に魚を切り分けてベリルに渡す。


「フフ、わかってるじゃない。」


ベリルは皿を受け取ると偉そうにそう言った。


「みのる、わたしあたま食べたい。」


「……ルナはホントに魚の頭好きだよな。」


相変わらずのルナの偏食に少し顔が引きつるのを感じながら俺は頭を切って入れた皿を渡す。


「ありがと~~」


「おう。……じゃあ、俺もいただくとするかな。」


「…………ねえ実、私の皿にわざと骨がいっぱいあるところを入れたりしてないよね?」


「………さあ、気のせいじゃないか?」


「嘘つけ!ここに証拠があるのよ!あんたのその皿と私の皿、交換して!」


ベリルはそういうと、俺の持ってる皿をつかんでくる。


「お前ふざけんな。これは俺が食うやつだ。

ていうかせっかく人が取ってあげたものに文句つけるか普通。」


「そもそも人が文句つけそうなもんを他人に取り分けるほうがダメでしょ!」


こうして俺とベリルの不毛な言い争いが始まった。



………一方、ルナは。


「さかなのあたまおいしい~」


料理を楽しんでいた。


作者 狼の正体まで行きたかったけど無理だった。

女神 まあもうスローライフしてるかも微妙だし少し予定が狂ったぐらいなんの問題もないでしょ。

作者 いや、しっかりスローライフしてるはずだ……多分。

女神 自信ないんじゃん。

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