エピローグ▶︎アウル
現れたドアは光の粒子となって消え、再び一人きりになった異界の図書館で、梟頭の悪魔アウルは相も変わらず何時もの定位置である椅子に座り足を組むと栞に渡された物語を目で追う。
人がいようと一人きりであろうと、彼のする事は変わらない。
たった1000文字ちょっとのソレを読み終えるのには、それ程時間はかからなかった。
読み終えた紙を一度机に置くと、今度は手帳を取り出しそこにサラサラと何かを書き込む。
そこまでの作業を終えると、彼はようやく食事を始める。
と言っても特に変わった事はしない、紙にかじりつくとかそう言った野蛮な行為もしない、ただ少しの間紙に触れる。
それで終わりだ、彼が食すのは物ではなく概念だ、それ故にそれだけで食事は終わる。
食事を終えると紙は床へと置かれる。
他の紙束達同様に無造作に置かれる。
それがこれまで彼がやってきた一連の手順だ。
何時もと何ら変わらない決まった行動だ。
そうして最後に、アウルはゆっくりと目を閉じ眠りにつく、次の客人が来るのをそうやって待ち続ける。
机に無造作に置かれた高価そうな手帳のページには、三野谷 栞の名前、それは彼が暇潰しに始めた来館者を記録した手帳の1ページ、書かれている内容は以前よりも少しだけ増えていて、挿絵の書かれる部分には、図書館を背景に誰も座っていない椅子と向き合い談笑している栞の絵が書き足されていた。