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7つの大陸と1つの命  作者: 神月しずく
1つめの世界
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チュートリアル 職業選択と殺意





「この扉の先で職業を選択できます。しかし、入るのは必ず1人です」


「あの、この子は・・・」


「あなたが入るときに誰かに預けてください」


「分かりました」


「では、誰が先に入りますか?」


「俺が先に行く。ユウマ、ミカのこと頼んだぞ」


「分かった」



 レンが先に扉に入り僕たちはその場で待つ。

 中で一体何が行われているのか、音も何も聞こえない為確認する手段は0だ。

 悲鳴の1つでも聞こえれば、すぐに扉を開けて助けに行きたいが、それすらも不可能だろう。

 なにしろ今のレベルは全員同じ5に対して、フードを被った人はレベル30だ。

 マリの時は名前も表示されていたが、この人は名前の所に案内人としか書かれていない。

 なにはともあれ、レベル5の僕らがレベル30の人を倒すのは流石に無理がある。



「待ってる間暇だね」


「そうだね・・・。そういえばミカは弓にするか、魔法系にするか決まったの?」


「悩んではいたんだけど、せっかくゲームの世界だから魔法系にしようかなって。でも、魔法にも色々あると思って」


「確かにこの世界の魔法がどんな種類なのかまだ分からないから・・・」


「うーん・・・。とりあえず、この中に入ったら分かるよね。ユウマは相変わらず双剣使いがいいの?」


「職業に双剣士があればだけどね。なかったら普通に剣士で良いかなって感じでは思ってるよ」



 正直剣を使えればなんでもいいまであるけど、よくやっていたモンスターを倒すゲームでは双剣を使っていたから、やっぱり双剣が良いなと思ってたところでレンが出てくる。



「終わったぜ」


「どうだった? やっぱり職業は格闘家?」


「いや、中で何が起こったのか正直何も覚えてないんだ」


「中で起きた記憶は消されるってこと?」


「あぁ」


「レンがそう言うってことは、相当この中で起きたことを周りに知られたくないってことかな」


「なんかそれ怖い。最後は嫌だからあたし行ってもいい?」



 確かに記憶を消されるのは怖いと思うのが普通だろう。 

 このゲームを始めてから疑問を抱くことばかりが増え、解決の糸口が何一つ見えない。

 


「僕が最後に入るよ。えっと・・・モケは預かっておくよ」


「ユウマ! ありがとう! じゃ行ってくるね!」


「あぁ」


「モケは責任もって見とくよ」



 扉に入る前に1度だけモケの頭を撫で、覚悟が決まったように扉の中へと入っていく。



「それにしても、レンの格好を見る感じ何も変わってないように見えるけど・・・」


「俺も変わってないと思っていたんだが、職業が一体何になったか考えていたら、自然と闘い方が頭の中に浮かぶんだよ」


「ってことは、職業というより、その浮かんだ戦い方が自分のこれからの武器ってことになるのかもしれない」


「この感じなら俺は普通に格闘家の部類だと思うから、金稼いだら防具とかもそれっぽくするつもりだ。素手で戦うのもきついだろうしな」



 マリの言うように、やはり基本的にこの世界では思考によって進めていくのだろう。

 そうなると、この扉の向こうに入って、戦闘スタイルを想像すればそれに近い職業を与えてくれるかもしれない。

 出る時に中での記憶が消されるとしたら、出るまでは中でのことを覚えているということだ。

 1人考え込んでいたら扉が開きミカが中から出てくる。



「中でのことは覚えてないけど、なんか体の中に今まで感じたことない感覚がずっとあるんだよね」


「レン、僕も入ってくるからさっきのことミカに教えてあげて」


「了解。気をつけろよ」


「ミカ、モケ返すよ」


「ありがとう! いい子にしてた? ・・・そっかそっか~。モケは偉いね~」



 モケと話し始めたミカを背に扉の中へと入る。

 入った所で勝手に扉が閉まり、真っ暗になる。



『またお会いしましたね。ここでお会い出きること、楽しみにしていました』



 中性的な声が部屋の中に響き渡る。

 


「ゲームマスター」


『覚えていてくれて大変喜ばしいことです。さぁ、あなたのなりたいものは一体何でしょう』



 頭の中に直接声が入ってくる感覚に気持ち悪さを覚えながらも、双剣を思い浮かべる。

 


『面白い選択をしますね。では双剣を使えるよう思考にデータを入力しておきましょう。念のため、片手剣も使えるよう入力します。きちんと覚えていてくださいね』


「1つ質問があるんだけど」


『1つと言わず何個でもどうぞ』


「アイはなぜ現実世界で死んだのか教えてほしい」


『簡単ですよ。不必要だと判断したからです』



 その答えに殺意が湧く。

 人の命を虫けらを殺すかのように簡単に踏みにじる。

 まるで自分は神にでもなったかのように。

 


『おや、急に雰囲気が変わりましたね。私に殺意を抱いているのでしょう。面白いです。もう1つお教えしましょう。あなたは最高に私を楽しませてくれそうですから。ログアウトしなかったあなた達は優秀です。これからも間違ってもログアウトしようなどと思わないようにお願いします。いつでも私は貴方たちを見ていますよ。では、お帰り下さい』



 ゲームマスターの言葉と共に強制的に扉を出される。

 レンとミカは普通に出てきたのとは違って吹き飛ばされる形で僕は外へと放り出されたのだ。

 すぐ近くにあった階段に体をぶつけたものの、痛みよりも違和感の方が勝っていた。

 


「おい、大丈夫か!?」


「なんでユウマだけ吹っ飛ばされたの!?」


「体は大丈夫なんだけど・・・」



 2人は中でのことは覚えてないって言っていた。

 でも僕は?



「全部覚えてるんだ」



 中で質問したアイのことを2人に話せばどうなるか目に見えている。

 それに最後に言われたあの言葉。



『もう1度この扉に入った人間には破滅してもらいますのでご安心ください』



 破滅。つまり死を意味するのだろう。



「これから言うことは全て真実なんだ。ログアウトは絶対にしないでほしい」


「どういうことだよ」


「ログアウトしようなどと考えるなって言われたんだ」



 遠回しにログアウトすれば何かが起きる。

 アイのこともあるから、下手すれば死ぬのか・・・。

 実際にログアウトすれば分かることだけど、何が起こるか分からない状況でログアウトはできない。



「そういえば2人は1人暮らしなの?」


「そうだな。3人同じマンションで1人暮らししてる」


「それなら安心か・・・」


「そもそもなんだけど、どうしてユウマは覚えていてあたし達は覚えてないの?」


「そこが僕も疑問なんだよね」



 2人は記憶を消されたのに僕は覚えている。もしかしたらあの中でゲームマスターに対して殺気を抱き、その結果が面白いやつだと判断されたから覚えているように操作されたのか。

 



『ミッションクリア』




「もう少し空気読めよ」


「ほんとだよー」


「ここで話していても埒が明かない。外はもう日が落ちていると思うから、どこか泊まれる場所を探しに行こう。街にいるからすぐ見つかると思う」

 

「最後の役目を果たします。3人を宿屋の前へとテレポートします」



 あっという間にまぶしい光に包まれ耐えられず目を閉じる。

 身体が宙に浮く感覚を感じて束の間、僕たち3人は街の宿屋の前で立っていた。



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