チュートリアル 癒しキャラと遭遇?
2人と行動を共にし、全体が見渡せそうな場所を目指しながらこれまでのミッションのこと話す。
僕は川を元に戻すだったが、2人は獣を倒すだったらしい。
ミカが獣に出会ってからすぐに小さな槍が落ちていたことに気が付き、それをレンに渡して倒したようだ。
マリと同じように獣にもレベルが書いてあったようで、レベルが5だったということだ。
ミッションをクリアすると同時に経験値とこの世界で使うお金が入るらしく、3人全員が同じレベル5だ。
「そういえばユウマは誰に誘われてこのゲームを始めたんだ?」
「僕は友達に・・・・って、あれ?」
「やっぱりな。俺も誰かに誘われて始めたんだと思うんだけどその記憶が全くねぇんだよな」
「あたしはレンに誘われたってのは覚えてるんだけど・・・、レンもユウマもこのゲームを始めるきっかけ、覚えてないんだ」
「このゲームを始める時に頭を強打した時に忘れちゃったのかな」
「それ、レンも言ってたよね。あたしは頭を打った記憶なんてないんだけど」
2人と話し、そしてアイのことを含め聞いていくうちに少しずつ違和感が増えていく。
一体誰がこのゲームを作ったのか。
一体なぜ現実世界とリンクして人が死ぬのか。
そして、ゲームマスターと言っていたあの人はNPCなのか、本当の人間なのか。
マリは人間だったのか。
謎ばかりが深まりその問題が解けるのはゲームをクリアした後なのか。
――――ゲームをクリアしても分からないことなのか。
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「このゲームって、職業とかないのかな」
「確かにRPGみたいな世界だから職業ありそうだけど、これまで何もなかったね」
「あたしは弓か魔法系がいいな~」
「ミカは弓道やってたんだから弓なんてすぐに慣れるだろ」
「弓道やってたんだ。僕は何もしてなかったから・・・」
「俺もユウマと同じだ。よく喧嘩してたから格闘系かな」
喧嘩・・・。この人は俗にいう不良? そういった部類の人は苦手だけど・・・。
「ユウマ安心してよ! レンは確かに不良の部類だけど自分から喧嘩売ったことはない、本当は優しいやつなんだよ。まぁ、喧嘩売るのは向こうがレンの大切にしている人を馬鹿にしたり傷つけたりした時だけ!」
「そう言うのやめろよ」
「レンって本当は良い人なんだね」
「あーもう! で、お前は何がしたいとかあるのか?」
「そうだね・・・。僕は双剣かな。よく他のゲームするときも使ってたから」
「結構ゲームしたりするの?」
「よくするかな。家にいる時はゲームばっかしてる」
「じゃあじゃあ女の子のフィギュアとかも家にいっぱい飾ってあるの!?」
「残念ながら無いかな。あるのはソフトだけだよ」
ゲームばっかする=オタクってイメージが強いと思うけど、僕はただゲームが好きなだけでアニメキャラが好きで買うといった趣味はない。それを買うならソフトを買う性格だと自分では思ってる。
「おいミカやめろよ。ユウマもこいつの質問はほっといていいからな」
「いいじゃん別に! それに、色々知った方がもっと仲良くなれるでしょ」
「あーはいはい」
レンがミカを宥めながらも、周囲への警戒は緩めない。
これは喧嘩をよくしていたから癖なのだろう。
「そういえば全然ミッション出ないな」
「多分何かのフラグがきっかけでミッションが発生するんだと思う」
「ねぇ2人とも! あれ見て!」
ミカが指をさしたその先を見ればこちらをじっと見ている動物と目が合う。
見たことのある動物だけど名前が思い出せない。
「ナマケモノ! ゲームの世界にもナマケモノいるんだね!」
そう言いながらも近づいていくミカ。
「おいミカ!」
「大丈夫だって! この子から敵意は感じないし」
「もし攻撃してこようとしたらすぐに下がれよ」
「大丈夫だよ~。ほーら怖くないよ~」
ニヤニヤしながら近づいていくミカと呆れた顔でミカを見るレン。
「あいつ、大の動物好きなんだよ。猫だろうが蛇だろうがいつもニヤニヤして近づいていくんだ。何回引っ掛かれたり嚙まれたりしたことか・・・」
心底呆れたというような顔で説明してくれる。
それにも関わらずミカはナマケモノに近づいて頭を撫でている。
今までは普通に可愛い笑顔だったけど、頭を撫でているミカの顔は何というか、女の子に失礼だけど心底だらしない顔をしている。
「あー見て! 腕にくっついてきた! この子も一緒に連れていこう!」
「あのな、もし敵だったらどうするんだよ」
「レンは心配しすぎなの! そもそも敵だったら今この瞬間に私やられてるよ!? でも腕にくっつくだけで何もしてこないじゃない!」
「確かにミカの言う通りかも。レンも良いんじゃないかな? それとも動物苦手とか」
「苦手じゃねーよ! ったく」
「やったー! じゃあ、君の名前つけなくちゃだね。ナマケモノでしょ・・・。うーん・・・」
腕にナマケモノをつけながら考え込むミカ。
未だに呆れているレン。
そんなシュールな場面に思わず笑いそうになるけど、なんとか我慢する。
「モケでどう!? ナマケモノのケモを逆にしてモケ! かわいい! 今から君はモケ!」
名前を呼ぶが無反応なナマケモノ。
しかしミカは全く動じずに腕にナマケモノをつけながら進んでいく。
ナマケモノを連れて行くようになってから、今まで誰かに見られていた感覚が一気に消えた。
まるでナマケモノがその『誰か』から隠してくれているように。