炎の地 断罪
「そんなに睨まないでください。 今回私はここでやるべきことがあり、こうして姿を表したのです。 そのやるべきことですが・・・飯沼 美智恵さん。 この世界ではマリンでしたね。 死んでください。 断罪の時です」
「え? どういうことよ・・・」
「なんだその姿・・・」
「本当の彼女の姿ですよ。 その姿がマリンの現実での姿です」
あまり人を悪く言いたくない僕だけど、顔はメイクの濃いおばさんで、必死にしわやシミを隠していた。 体型はゲームの世界のマリンと変わらず太っていて、身体にピッタリ張り付いているTシャツに、ミニスカートを履いていた。
「マリンって普通に女の子だと思ってたのにおばさんだったなんて・・・」
「俺も驚いたぜ」
「僕もちょっと衝撃的かもしれない・・・」
「では、飯沼 美智恵さん。 あちらへどうぞ」
にっこりと笑ってゲームマスターは崖の端を手で誘導する。
「私みたいに可愛い女の子がなんで死ななきゃいけないのよ! 死ぬのはそこにいるブスでしょ!」
「そうですね・・・。 あなたはこのゲームに必要ない。 そしてあのお方に邪魔だと思われているからでしょうか? 何はともあれ、拒否権はございません。 どうぞ、海の旅を楽しんでください」
「いやよ!! 誰か!!」
そう言いながらも彼女は崖の端まで少しずつ歩いていく。
言葉は拒否しているのに、身体はゲームマスターの言う通りに動いている感じだ。
「嫌よ!! 死にたくない!! 助けて!! ユウマ!! 助けなさいよ!!」
厚く化粧をしていたその顔は、雨や自分の涙、鼻水でもうぐちゃぐちゃだ。
「そうそう。 彼女を助けようと思ったとしても、もう何もできないので安心してください。 私の権限で身体の動きを止めていますので」
指の1本も動かせなかったことにやっと理解した。
恐怖や困惑の思考で身体が動かなかったのかと思っていたが、制御されていたのだ。
「ふざけないで!! 私が1番必要とされているに決まっているでしょう!! 今ここで私が死んだらあのクソガキ殺したの意味ないじゃない!! ふざけないでっ!!」
叫びながら、泣きながら、1歩、また1歩と、どんどん海へと近づいていく。
「うるさいですね」
そう一言漏らすと、ゲームマスターは指を鳴らした。
その後からは彼女の叫び声も泣き声も何一つ聞こえなくなった。
しかし、彼女は相変わらず口を開いて何かを言っているようなのを見ると、ゲームマスターが彼女の声を遮断したのだろう。
「流石に、目の前で飛び降りはいくら恨んでてもちょっと・・・なぁ?」
「レンの言う通りだよ」
「なら、ここでやめますか? 彼女を2人は生かしますか?」
「生かしては欲しいけど、2度と関わりたくはねぇな。 顔も見たくねぇ」
「そうですか」
それだけ言うと、崖から後1歩で落ちそうな彼女の首根っこを掴んで、そのまま宙へと浮かぶ。
彼女は安心しきったような顔を見せていた。
「本当に彼女を助けたいと思いますか?」
「僕はもちろん恨んでる。 でもそれは生きてその罪を償ってほしい・・・」
「俺は2度とその顔を見なくて済むならどっちでもいい」
「だそうですよ。 マリンさん」
「やっぱり私のことが好きだったのね! だからユウマは助けてくれるのね!」
「ふっ・・・。 そんなこと私が許しません。 あの方の最初の願いは置いていくこと、そして死んでもらうこと。 私は今この場所にあなたを『置いて』いきます」
「は? ちょっ・・・ここ海の真上じゃない!! ここに置くってどういうことよ!!」
「こういうことです」
楽しそうに質問に答えたゲームマスターはそのまま彼女を宙に『置いた』。
しかし、ゲームマスターのように宙を浮かべない彼女はそのまま荒れた海へと叫びながら落ちていく。
最後にとどめを刺すかのように、彼女が落ちて行った場所にこれまでで1番大きい雷が落ちた。
「それでは、ゲームの続きをぜひ楽しんでください」
そしてゲームマスターがお辞儀をして顔を上げようとしたその瞬間、また景色が変わりこれまでいた洞窟で呆然と立っていた。
そんな僕達にレオンが心配そうに鳴きながらすり寄ってきた。
「早く、進めなきゃいけない理由がまた増えたな・・・」
「そうだね」
「私も2人にとことん付き合うよ」
「助かるよ。モモ・・・」




