休息の地 混浴なんて聞いてない
「これって・・・」
「混浴だよね」
浴場にはタオルを巻いての温泉は大丈夫と書いてある。
「ミカ、どうする?僕たちはタオル巻けば問題ないけど・・・」
「んー? あたしもタオル巻けるなら大丈夫だよ」
女の子としての自覚があるのか不安になってきた。
それはレンも同じようで心配そうな顔をするも何も言わなかった。
「それに、この温泉結構黄色っぽい感じでしょ? 大丈夫大丈夫~」
本当に大丈夫なのだろうか。
「着替えとかは別々みたいだし、あたし行ってくるね」
「あ、うん」
ミカが消えていった方を見たままさらに心配になる。
「レン・・・」
「あいつはああいう奴だ・・・」
どうやらレンもその辺に関しては手を焼いているようだ。
最低限ミカを見ないように温泉に入ろうと心に決め服を脱ぐ。
タオルを腰に巻いて、中へと入れば既にミカが髪を洗っていた。
僕とレンはミカが座っているところとは正反対の場所に座り髪や体を洗っていく。
「2人とも来るの遅かったね」
「まぁ・・・その・・・。うん」
温泉に浸かりながらミカが話しかけてくる。
ミカが大丈夫とは言っても、やっぱり僕たちは男だし照れないわけにもいかない。
レンはアイという彼女がいるものの、やはり恥ずかしいようだ。
「俺長風呂苦手なんだよな。先に下がってるから」
「そう? 分かった」
「レンって長風呂しない人なんだ」
「んね。知らなかった。それで、ユウマはさっきからどうして顔赤いの?」
「え?」
「確かにここの温泉温度高いし熱くなるのは分かるけど・・・流石に顔赤過ぎじゃない?」
自分では気づかない所を指摘される。
それはミカがタオル1枚で・・・なんて言ってしまえば、そういう目で見てるの? など引かれる可能性がある。
「熱いとすぐ顔に出るみたいで・・・のぼせないうちに僕もすぐ上がるよ」
「そうなんだ。あたしもそこまで長風呂はしないからユウマと合わせて出ようかな」
「あ、うん」
なんとなく気まずくなり、僕はお風呂から上がる。
ミカも上機嫌にお風呂を上がろうとしたその時、タイルに石鹸が残っていたのか転倒しかけた。
「危ないっ」
咄嗟に腕を引っ張るも、バランスを崩し2人一緒に転倒する。
なんとかミカの頭は守ったが・・・どう見ても僕が浴室で押し倒している形だった。
「ミカ・・・あの・・・大丈夫?」
「・・・え? あっ、だ、大丈夫」
至近距離でぶつかる視線にミカは顔を真っ赤にさせながらも返事をする。
「それなら良かった。ほら」
そう言って先に起き上がりミカに手を差し出す。
「うん」
「頭ぶつけなくて良かったね」
「ユウマが守ってくれたから・・・」
「2人して転んじゃったけどね。それじゃ、出ようか」
「うん」
「それじゃ、着替えてくるね」
「うん」
ミカと別れ浴衣に袖を通す。
そのまま更衣室を出れば、コーヒー牛乳を幸せそうに飲んでいるレンを目が合う。
「別にこれは好きで飲んでるんじゃねーよ。ただこれしかなかったから・・・」
まだ僕は何も言っていない。
「レンまだいたんだ」
ミカも更衣室から出てきて目が合う。
みるみるミカは顔を赤くしていき、しまいには浴衣の袖で隠してしまった。
「お前らなんかあったのか?」
「ミカが転びそうになっちゃって・・・。助けようとしたら僕もバランス崩して転んじゃって。でも、ミカの頭は守ったから」
「へー。お前気をつけろよ」
「分かってる」
「でもなんでそんなに顔赤いんだ? 2人とも」
「「えっ」」
「あれか、ラッキースケベみたいな感じか? 転んだ時に押し倒したとか」
「レンの馬鹿!! はげ!! ヘタレ!!」
それだけ叫んでミカは走っていなくなってしまった。
「え? マジ?」
「うん」
「意外とユウマって大胆なんだな」
「え?」
「なるほどな~。俺は応援するぜ。じゃあな!」
「え?」
「明日は9時には談話室集合だからな~!」
誤解され、弁明も出来ずレンはそそくさと出ていってしまう。
「事故とはいえ、押し倒しちゃったから謝った方がいいのかな・・・」
そういう問題じゃないことにまだ気が付かない彼は、2人が出ていった扉を見つめながらボソッと呟いた。




