休息の地
ゲートを潜って出た先は、色とりどりの花が咲いている豊かな場所だった。
「春の匂いがする」
「お前春の匂いなんて分かんのかよ」
「分かるよ!」
アイの事があり、街のことがあり、そしてミアのことがあった。
精神的にはもう限界が来ていてもおかしくない。
それでもミカは気持ちを切り替えるように無理して笑っていた。
レンもそれに合わせるようふざけていたが、どうみてもから元気だった。
「休めるところがないか、探してみよう」
「その必要はなさそうだぜ」
ほら、と言ってレンは歩き出す。
僕とミカはレンを追うように歩いていれば、女の人が笑顔でこちらを見ていた。
視線がぶつかるとその女の人は深く頭を下げた。
「お待ちしておりました。私はこの休息の地を管理しているリンと申します。この場所にはモンスターは現れません。どうか、心安らぐまでこの地でお休みください。この地は冒険者様の拠点となる場所です。案内いたしますので、付いてきてもらえますか?」
穏やかに説明すると、僕らに問いかける。
「あぁ」
レンが返事をして、僕たちはリンさんに付いていく。
花畑のような場所を居心地悪そうに歩くレンと、少し嬉しそうに歩くミカ。
正反対の顔つきに少しだけ疲れが癒される。
「この世界では、宿屋や、レストラン、また冒険に必要なアイテムを揃えることができます。他のプレイヤー様もいらっしゃいますので、情報交換や交流ができる場所となっています」
「やっぱり他にもプレイヤーいたんですね」
「はい。・・・あそこに見えるのが宿屋です」
そう言って見上げた建物は想像していた宿屋とは程遠かった。
「ホテルじゃん!」
そう、ミカが言ったように白く大きな建物だった。
ホテルのような外観の建物の周りは、たくさんのお店が並んでいて、色んないい匂いが漂ってくる。
「色んなことがあって疲れて寝たいのにお腹は空くね」
「それでしたら、宿屋と連携しているレストランがございますので、ご利用になってみてはどうですか? お食事が済み次第、私に話しかけて頂ければ、宿屋の手配をさせていただきます」
「そうさせてもおうか。空腹度も20%ないし・・・」
「俺は賛成だな」
「あたしも!」
「私は宿屋の中にいますので、お待ちしております」
リンさんと別れて宿屋と連携していると言われたレストランへと入る。
本当にゲームの世界なのかと疑えるほど、レストランの中はとても綺麗で、店員さんも綺麗な服装で揃えられていた。
好きな席へ座ると、メニューと一緒にお水を持ってきてくれる。
「お決まりになりましたらお呼びください」
早速メニューを開くが、そのメニューにも驚く。
オムライスやサンドイッチ、スパゲッティやカレーなど、洋食屋さんで出てくるメニューばかりだったからだ。
デザートにはショートケーキやプリン、ガトーショコラやパフェなど。
飲み物にはコーヒーやオレンジジュース、コーラやお茶などがあり、僕たちが普段現実で飲み食いしているものばかりだった。
「ゲームの世界なんて信じられないね。あたしオムライス! デミグラスのほうにしよ」
「あー俺は肉食いてぇから、この厚切りステーキにするか」
「2人とももう決まったの?」
「俺達は基本こればっかだからな」
「それじゃあ、僕はカレーで」
「オッケー! すみませーん!」
頼むものが決まると早速ミカが店員さんを呼ぶ。
「お決まりですか?」
「オムライスのデミグラスソースが1つと、厚切りステーキが・・・オニオンソース?」
「あぁ」
「オニオンソースで1つと、カレーが1つで・・・。あっ飲み物は?」
「俺は食後にアイスカフェラテで」
「僕も食後でアイスコーヒーお願いします」
「あたしはご飯と一緒にオレンジジュースで! 以上です!」
注文の確認を終え、戻っていく店員さんを見ながらふとミカが呟く。
「ずっとこんな感じなら楽しいのになぁ」
その言葉はとても重く、僕は何も言えなかった。
「そうだ! ご飯食べて、宿の手配終わったら市場回って必要なアイテム買おうよ」
「そうだな。回復もミカに頼りっぱなしだときついしな」
「MPもレベル上がらないと回復しないからMP回復のアイテムも買っておこう」
「次の世界がどんな世界か分かんねーけど、保存がきく食料も買った方がいいかもな」
「そうだね~」
「多分空腹度が0になるとゲームオーバーになるかもしれないから必要だと思う」
そんな話をしているうちに、料理が運ばれてくる。
「おいしそう!!」
「マジでうまそうだな」
「いただきまーす!」
作りたてのカレーを口に運ぶ。
「美味しい」
「オムライスも美味しいよ! 一口食べる?」
「いいの? それじゃあカレーも一口あげるよ」
「はい!」
そういってミカが差し出したオムライスを食べる。
ミカも同様にカレーを食べながら幸せそうな顔をする。
「お前らさ、俺いるんだけど」
「そんなの分かってるよ~。あ、レンも食べる?」
「俺はいらねーよ」
「カレーは?」
「いらねーって!」
「なんか照れてる?」
「照れてねぇよ」
そこからレンは無言になってしまい、ミカと話しながらご飯を食べる。
落ち着いてミカを見ていると、表情がクルクル変わって面白い子だなと思ったのは心に仕舞っておこう。
ご飯を食べ終わりお金を払った僕たちはリンさんがいる宿屋の中へと向かう。




