ど正論でブン殴る
王太子の婚約者である悪役令嬢が悪さして婚約破棄されて~って王道ですが、それのひねくれた意見表明。
「この王太子たるジンセール・ハジオーキーが宣言する!
我が愛しのオルセーヌ・ダジャーニ男爵令嬢へ数々の嫌がらせのみならず、命を奪おうと数々の企みを謀った、セーロヌス・ブルナール侯爵令嬢は私の婚約者に相応しくないと判断した!
よって貴様に婚約破棄を言い渡す!
そしてオルセーヌ・ダジャーニを私の婚約者とする!」
どうもごきげんよう。
私は殿下からのご紹介の通り、セーロヌス・ブルナールと申します。
この場は貴族の子女を集めて、それぞれの家で受けた教育の具合の確認や、意図的に不穏な思想教育を受けていないかの確認。
それと単純な学び直しや、貴族同士の交流マナーの実践場。
それに何より、貴族間の繋がりや婚約者探しや婚約者同士の交流を目的とした、貴族学院。
それの卒業式だったのですが、男爵令嬢を脇に添えた殿下から妙な宣言を頂きました。
国王陛下が都合によって御来臨が遅れている時に、何をしていらっしゃるのか。
殿下の発言……いえ宣言により、卒業式に臨んでいる子女達の中に困惑と混乱が広がってきています。
しかし、その式に参列している貴族のご当主様方や、王家が関わる式なので佇んでいる全身甲冑で身を固めた近衛騎士達は、冷静に事の流れを眺めて居られていますね。
かく言う私も普通なら気が動転する場所なのかも知れませんが、10年以上もの長い時間を費やし、未来の王妃となる教育を受けてきました。
その中で何度も教わる事柄がいくつも有りますが、その中の一つに“相手が王であっても、必要とあれば物怖じせずに忠言を行うべし”とありまして。
現在はそれを行う場面であると判断します。
……いえ、正直この学院へ入ってから、ずっと行っているのですが。
まずは私の正当性を主張しましょうか。
「殿下。 私は王妃として恥じる行いは、決して致しておりませんよ」
これは事実ですので、ハッキリと言い切りました。
が、これを理解できていないのでしょうね。 殿下が私に信じられない者を見る目を向けてきています。
……王家たる物は交渉事で不利にならぬ様、家臣や民達へ無用な混乱を生ませぬ様、容易に感情を見せてはならんと習ったでしょうに。
「貴様は恥ばかりではないか! 人の命を何とも思わぬ、数々の謀略を行う所業こそ恥ではないか!」
殿下が顔を真っ赤にして怒鳴って居られますが、我々にとってはその所業こそ恥である。
学院へ入り、あの男爵令嬢と知り合うまでは理想の王太子であったはずなのに、どうしてここまで堕落したのか……。
私等は国の代表として、様々な素晴らしい教師達から薫陶を受けて精神を形作られてきたと言うのに。
私は抑えきれぬ溜息を手に持った扇子で隠す。
「殿下は人になってしまわれたのですね」
この言葉に殿下は腕に絡みつくオルセーヌ嬢を万感の思いを込めてチラと見やり、それから胸を張って応える。
「オルセーヌが人にしてくれた! そもそも私達は人だ!!」
殿下のお言葉に感動したのか、オルセーヌ嬢の瞳が湿っていた。
が、そんなのを確認して喜んでいては駄目なのですわ、殿下。
わざと俯きがちに首をゆっくり横に振ります。
「王家の教育で習いましたでしょう? 国の運営を担うものとして、私情で政をしてはならない。
王家は国の、国民の僕として働くべく、感情を持って行動してはならないと」
貴族の誰が気に食わないからと理不尽に冷遇したり、貴族の誰を気に入っているからと、特別優遇したり。
そんな事をすれば貴族から叛意を持たれる可能性が出て来てしまいます。
他にもどこかの国へ感情だけで得の無い同盟を持ちかけたり、宣戦布告したり。
感情だけで国を動かし、最悪として国の破滅を呼び込む事態を起こしてはならないのです。
つまり私等は物なのです。 国のために働く物。
そう己を律して行かねば、国に住まう者達への反逆となってしまうでしょう。
国の代表、政治を行う物として判断を間違う訳にはいかないのです。
間違った結果、国民の僕……奉仕する物が国民を苦しめるなど有ってはならないのです。
この私の言葉を受け取って下さらない殿下が吼えました。
「人の心を知らずに、国を治められるか!!」
これは一見正しいと思われるでしょう。
ですが。
「万民を思いやる政治は大切ですが、個人の感情で偏った政治をして、振り回されて不幸になる民が出る事は望みません」
国の代表として教わる大切な事です。
これに、さらにご気分を害したのでしょう。 殿下の表情が歪んでおります。
「現に! 貴様がオルセーヌを嫌って! 感情で排除しようとしていると、ここで断罪している所だっ!」
…………ああ。
殿下のお言葉に、ある程度納得してしまいました。
いえ、納得ではなく覚悟でしょうか?
「貴族共は皆して、何かあればすぐ“由緒正しい”とか“何代続いた家”だと他者を見下し、正妃となれるのは伯爵位以上だとか。
セーロヌス、貴様もそうだ! それで身分を弁えろとオルセーヌに迫り、従わなければ学院から排除しようと画策し、最終的には命を狙った!
貴様こそ感情を持たぬから、そんな非道を易々と行える!」
彼が私を指差しながら糾弾らしきものをしていますが、そんなのはどうでもよろしい。
あの者は、ついに言ってしまいました。
破滅へ続く扉を開ける、鍵となる言葉を。
ただまあ、まずは糾弾への反論からしましょうか。
「……愚かな」
そう呟き、扇子をパチリと閉じ、彼を見据える。
「由緒正しいとは、身元がハッキリしている事ですわ。 それだけこの国に所属している証となります。
何も考えず血や縁を下手に繋げてしまうと、親戚だと名乗る他国から余計な口出しが飛んできて厄介になる可能性もあり、それを避けるのに必要な事でもありますわ。
代々続く家とは、それだけ長く国へ貢献し続けている事実を示します。 つまりそれだけ国の為に働いている忠誠心の現れです。
貴族としての階級が高いのは国の為に働き続けている、その実績と結果を国が評価し続けて下さっているから。
伯爵位以上でなければ正妃になれないのは、家として国に認められるだけの大きな働きを代々でし続けた。 それだけ国の為に働ける実績と信頼です。
貴族が何かにつけてそれらを持ち出すのは、権利だけを振りかざす愚かな者以外であれば、それだけの貢献をした家の歴史を背負って生きる覚悟ですのよ?」
………………。
反論を待っているのですが、狼狽えるばかりで何も返してきませんね。
ならばこちらから。
「だいぶ脱線しましたので、話を戻しましょうか。 そこのオルセーヌ・ダジャーニ男爵令嬢を排除しようとしたのは、将来の正妃として正しい行いであると、なぜそうしたのかを申し上げますわ」
本来なら機密として黙っていなければならなかった事を、こうして明かさねばならない状況に持ち込んだ殿下は後悔なさいませ。
その気持ちを混ぜて、深呼吸。
「その男爵家は、5代前にこの国へ来た商人でした。
海で繋がってはいても陸からなら2国向こうの……当時は我が国を仮想敵国とする、その国でしか作れなかった品を仕入れられる者として、我が国の貴族として取り立てたのが始まりです」
ここで1度切り周囲を窺うと、皆が頷いてたり、何を今更と言いたげな顔をしています。
まあ、これは貴族名鑑に載っている来歴ですからね。 しっかり勉強していれば知っていて当然の情報です。
なので、ここから踏みいった話。
「実はこの男爵家は理由があって、先代まで密かに厳しく監視されていたのです。 しかし目立った動きをしてこなかったので、監視が弛めた直後にこの騒動です」
ここまで明かすと、貴族家のご当主方の一部に思い至る部分が有ったのでしょう。 顔つきや雰囲気が変わったお方もおりました。
「ここまで騒ぎになって殿下が庇わなければ、明かされずこのまま平穏が続くはずだったのですが、これ以上隠せなくなりました」
少し勿体ぶった言い回しでしょうか?
殿下が焦れていますね。
「ダジャーニ男爵家は我が国を仮想敵国とする国の、諜報を担当する一族です」
……ざわついていますね。
子女達が。
当のダジャーニ嬢は……百面相をして、表情が落ち着きませんね。
これは真実を聞かされていませんね。 御愁傷様です。
ご当主様方は流石に責任ある立場の方々です。 見た目からは簡単に窺えませんね。
「今までは、流出しても問題ない情報ばかりを調整・操作して流し、思惑通りに動いてくれていたので放置していたのです。
その為に、裏を知っていて国が抱え込んだ家なのです。
ですが、ダジャーニ家の令嬢が正妃になんてなってしまえば、機密も流れ放題。
こんなのを将来の正妃が見逃すなんて、それこそ恥ですのよ」
なので私は恥ずべき行いなどしていないと、言いましたでしょうに。
国を守るため支えるために、為すべき事を為そうとしていただけ。
「殿下と随分よろしい仲になられる前に離れて下されば最上として、画策して参りました。
ですが悉くを殿下が妨害なさり、命を狙う手段しか残らなかったのですが、これも殿下に……。
果てはこの事態となり、黙っていた方が全方位が幸せでいられた事まで、明かさねばならなくなりました」
これが全貌です。
そもそも国を支える物として、将来の正妃へ施される教育に国の裏側まで含まれるのは、当然。
そんなのを知って、まともな感情などを持ってしまったら、情報の重さに潰されてしまうでしょうに。
殿下も似た教育を受けていてその辺は承知であったはずですのに、どうして奇行に走ったのか。
心の中で嘆息していると、いつの間にか俯いていた殿下が急に身震いし始め、絶叫しました。
「信じない! オルセーヌが他国の諜報員だなんて信じない!」
地団駄まで踏んでいますね。
子供でしょうか?
そもそも男爵令嬢は諜報員ではないですね。 本人はそのつもりは無いでしょう。
ただ、実家が諜報員であるだけで。
ですが、だからこそ王家と繋がってはいけないのです。
しばらくひとりで暴れていた殿下ですが、ある時にぴたりと動きが止まりました。
「そうだ。 むしろセーロヌスこそが、将来の王たる私を裏切ったのだ。 国の裏切り者はセーロヌスではないか……」
謎の論法により、なぜか私が悪いと殿下の中で決まった様です。
「近衛騎士! セーロヌスを捕らえよっ!」
ついに狂いましたか。 殿下の声が変に上擦り、正気ではない開ききった瞳孔でこちらを睨み、薄ら笑いを浮かべています。
この殿下の様子を見た子女達は、私等から距離をとり、会場の壁際まで下がりました。
その動きに逆らう形で、会場の近衛達がこちらに近寄ってきます。
「さあさあさあ、あの裏切り者をっ! 早く!!」
喚く殿下を余所に、近衛達はと言うと……。
「何故だ!? なぜ私を捕らえる! 捕らえるのは私ではなく、セーロヌスだ!!」
殿下を拘束していました。
ただその拘束する内の3名の動きは、どうにもにもぎこちなく、頼りない。
そのすぐ傍でダジャーニ嬢も拘束されましたが、そちらの近衛は手際が良かったのですが。
「やめろ! やめろよ、ふざけんな!」
それに気付いていない殿下は、なおも叫んでいました。
が、それもそこまで。
近衛騎士が着る鎧の兜を騎士本人が外した瞬間に、凍りついたのですから。
「父上!?」
ああ、それはぎこちないですよね。
国王陛下が直接拘束なんて、訓練を受けた経験は有っても滅多に実行する事ではありませんからね。
「ちょっとしたサプライズで親しみやすい国王を演出しようとしていたのに、バカな事をしおってからに」
無表情ながら悲しさが隠せない声色でしゃべる陛下以外の他の2名が兜を外せば、そちらも……いえ想像できますね。
「弟達まで!」
「何をしているんだよ、兄上」
「……馬鹿な兄上」
第二と第三王子殿下ですね。
どうやら王太子がこの後どうなるか、大体の予測が出来ているご様子。
拘束を殿下ふたりに任せて、陛下が王太子へ向けて申し渡しなさいます。
「お前とダジャーニ男爵令嬢の身柄を拘禁する。 近衛達、緑の塔へ連れていけ」
このお言葉に微かですが、息を飲む音が響きます。
陛下の仰った緑の塔とは、貴族位以上の重要なものを拘禁しておく塔です。
居心地は平民の拘禁場所より断然ましだそうですが、緑の塔に入れる意味は貴族なら常識として知っています。
重犯罪者を閉じ込めておく塔。
この世で重犯罪者の処罰と言えば、最低でも命で償う罰が科されるのです。
陛下は、覚悟をお決めになられたのですね。
その意義を感じ入っていると、陛下が私を視界にお入れになりました。
「馬鹿息子がああなっては、あの機密の暴露は国を守るためにやむ無き事だ。 其方の判断は正しかったと認めよう」
「ご配慮痛み入りますわ、陛下」
どうにか淑女の礼をしていますが、安堵からかキチンと出来ている気がしません。
どうやら赦して頂けたようです。
無許可で機密を暴露した事で、私は国を裏切ったと受け取られ兼ねないので。
なので、話の転がり方次第では死ぬ覚悟もしました。
ですがこうして陛下に、私は無罪だと保証して下さったので、大変に有難いのです。
そして淑女の礼をしている私を置いて、陛下がお声を張りました。
「せっかくの卒業式を愚息が台無しにしてしまい残念に思う! 後日改めて式を行うので、それまで待つように!」
この宣言を聞いた全てのものは、頭を下げました。
……極一部は例外ですが。
「やめろ! 王太子に何をしているっ!」
その例外である王太子は、喚きながら退場して行きました。
せっかく王国に根付いたダジャーニ男爵家だが、今回の騒動により諜報員だと公表され、他国に情報を売り渡していた売国奴と言う重罪により罰を受けた。
恨みを後世へ残さぬよう男爵家の一族郎党、連座制で処刑。
まだ幼い子供は温情により毒杯。
もちろん王太子をたらし込んだオルセーヌも処刑。
悪いのは男爵家であり、男爵が治めていた領地は悪くないと国民へ示すためにも、処刑は必須である。
処刑時に売国奴一族だと告知された為に、一族は罵倒の雨を浴びせられ、心が張り裂ける思いを抱きながら命を失ったらしい。
彼の国は諜報活動がバレたのを察知して諜報の手段を変えてくるのは目に見えているので、王国はより厳しい防諜策を練り上げねばならなくなった。
父親と言う国の最高権力者が決めた婚約に反した大罪の他に、他国の諜報員を王家に引き込もうとしたジンセール・ハジオーキーも、罰を受ける。
こちらは一度、王都の一番大きな広場の柱にくくりつけて、見せ物晒し者に。
国に大損害を与える所だったと罪状を広く告知されれば、そりゃあもう酷い事になるだろう。
しかも不満を持たれやすい王家の、王太子。
これで国民の悪い感情抜きを狙った。
一定期間晒し者にしたその後は普通に処刑され、王家だって悪い事をすれば罰する王国の清廉さをアピール。
これが成功し、当代の国家運営で国民から不平不満を聞くことは無かったと言う。
セーロヌス・ブルナールは王太子の婚約者を維持。
と言うかかなりの数の機密を教わっているので、逃げられない。 もし逃げたら口封じに命を狙われ続けるだろう。
第二・第三王子のどちらかが立太子した時、それの婚約者になるそうな。
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蛇足
王子の婚約者(悪役令嬢)が主人公のヒロインをいじめたり命を狙う理由に正当性は無いのか?
いや有るでしょう。
国の顔である王家に、男爵や子爵なんて信用力の無い下っ端貴族が……いわんやどこでどう繋がっているか分からない平民と、血縁として繋がれるかってんだ。
下手に何も考えず繋がったら、王妃や王配の親とかでしゃばって来て国が荒れるんですからね?
しかも寄り親の思想とか、寄り親以外でも悪い考えを持つ誰かが弱小貴族なら金でも策略でも使って言いなりに出来るとか、そんな流れで不幸がやって来るかもですしね?
国を守るためにも、王家が血縁で勝手は出来ないのなんて当たり前ですわ。
なお裏技として上位貴族の養子になる手段が有るけど、あれはその養い親が全責任を持つよって後ろ盾宣言を暗にしてるから出来る裏技。
そんなリスクを負ってでも、ルールの隙間を縫ってでも「王家の一員にさせる価値有りますぜ!」と。
そう思うからこそ、養子として迎えているのでしょう。
今回の話は他国の諜報員と言う理由を添えましたが、それが無くても正直変わらん。
外敵じゃなくて、内部の敵に変わるだけ。
王家へ入った家の寄り親が、そいつを通じて専横の限りを繰り広げる可能性が有るわけです。
専横の限りをされなくても最重要な局面で首を突っ込まれて、寄り親に美味しいところを全部取られて勢力拡大されて、王家より強い発言力を持たれたらたまらん。
寄り親の言うことに逆らえない寄り子が王家へ入るなんて、正直悪夢よ。
平民の無学な人が王家入りなんて、なおさら。
産みの親なんか、王家と繋がりが出来たと知られたらどれだけの人に集られるか。
最悪よろしくない連中に目をつけられて、地獄を見るぞ。
だから、全方面で得をしない婚姻は邪魔をしましょうね~。
それでも抵抗するなら、命を狙うしかないじゃない。 この世から追い出すしかないじゃない。
そんな社会正義的な行動ですね。
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蛇足の蛇足
セーロヌス・ブルナール
正論でぶん殴る をいじったらこんな名前になった。
おキレイな超美人様。
悪役令嬢がなぜヒロイン(笑)を蔑むような事を言うのか、正妃に相応しくないとなじるのか、命を狙うのか。
貴族=傲慢 じゃなくて、まともな貴族ならなぜ貴族の爵位が有るのか、爵位の階級にどんな意味が有るのか。
それを考えれば、こうなったと。
それでも王子とくっつこうとするお花畑思考の奴なんて、排除するしかないじゃない。
ジンセール・ハジオーキー
恥の多い人生 からいじった。 何のために王家としての教育を受けてきたのか。
どキレイな美丈夫。
オルセーヌから救われ(笑)人になった瞬間に、今までの教育のほとんどが抜け落ちた。 せっかく王として素晴らしい教育を受けていたのに……。
なんでセーロヌスが国としてオルセーヌを排除しようとしているのに、それを全部邪魔しちゃったんですかね?
オルセーヌ・ダジャーニ
とある文豪様からお借りしました。 ヒントは王太子の名前の元ネタ。 なので、どこかの怪盗さんが元ネタでは無い。
(バ)可愛いお姫様(笑)
人間味のない王太子を見かけ「もっと人として生きて良いんだよ」と長い時間をかけて刷り込み、破滅の引き金を引いてしまった。
王太子を人にして夢を見せてしまった。
男爵家が他国の諜報員ではなくて、ジンセールがオルセーヌを愛妾に望む程度だったなら、許されていたかも。 あるいはふたりが王家や貴族の籍から抜けて平民になるとか。
ただジンセールだ。 身分を捨てて平民としてではなく、多分正妃にと望むんでしょう。 全国民に祝福される夢を見ながら。
そしてそんな夢を一緒に見てしまい、オルセーヌは変わらず破滅するのでしょう。
王家と(血)縁を結べるだけの実績も信頼も信用もないのに、ジンセールとオルセーヌのふたりは結ばれたいと思ってしまうのでしょう。
国王陛下
陛下はサプライズをかますお茶目さんだよ、ヨロシクね! なんて演出を計画したが、実際は真面目でお茶目さは無い。
ジンセールを処刑せねばならん苦悩を抱えたが、あの場には数多くの貴族が居合わせていた為に、反感を持たれたくないので息子に温情なんてかけられる余地は無かった。
だが、第二第三の王子達はしっかり育ち、悲しみは有っても将来への不安はないらしい。
正妃(つまり正室の王妃)
国王と王子達のサプライズ登場後に、しれっとまざる様に登場しようとしていたが、騒動のために出るに出られずじまいだった。
つまり生きているが、今回未登場。
第二・第三王子
ちょっとセリフが有ったけど、設定は無い。
でも、王家の一員としての自負と責任を自覚して、ちゃんとすくすく成長しているとだけ。
貴族のご当主達
今回の処罰に不満は無い。 親馬鹿をかまして軽い罰にする暗愚ではないと分かり、国への忠誠に変化無し。
子女達
子息と息女で子女。
じゃなかったら、帰国子女って言葉に男が含まれなくなってしまうので。
自分の息子でも厳しい罰を与える国王にビビる。
国の代表がこれだから、自分の家でもこうなるかも知れんと、身が引き締まる思いをした。
よく有る自分より高い爵位の貴族へ話しかけるな
考えたんですが、分からなくは無いんですよね。
貴族の階級と階級ごとの(当主のみの)総人口は、ピラミッド型。
公爵なんて5家前後あれば十分な枠。
対して男爵家はいくつ有る?
で、その男爵や子爵がワッと際限無く群がって、話しかけてきたら?
侯爵以上の者が王城に集まって会議だ! なんて日に、王城の入り口付近で群れをなして話しかけてきたら?
なので、公爵とか侯爵とかが本来したいことが出来るように、目下の者は話しかけるな。
になったんじゃないですかね?
貴族の見栄
本文とは関係無いですが、貴族って買い物で相場より高い値段で買いたがるってイメージが有るじゃないですか。
アレって一種のノブレスオブリージュだと思うんですよ。 一部のアレなのは単純に個人的な見栄でしょうが。
金が有る(高貴な)者なのだから、下々の者に金をばらまくのも義務なんですよ。
高級店で買って、職人や原材料の生産・採取者の賃金なんかへ間接的に金が回るように。
世間に金が回る量=景気の具合 で直結する訳で。
だから社会へ金を還元させるのは、貴族の義務であり、相場よりどれだけ高い金を出せるかの見栄でもあると解釈出来ます。
……まあこれは理想論が大前提だし、社会が腐ってくると上前をはねる悪いのが横取りして、効果が極端に無くなっていくオチになりますが。