私と弓理の探偵ごっこ
本日もよろしくお願いします。
作戦は決行された。心配させたらダメだと思ったのだろう。お店の場所から集合時間まで教えてくれていたことから、お店を探す手間も省けた。
「岳さんも過保護だよね」
「多分岳さん自体も片親ってことを気にしてるのかな?私に心配かけたくないみたいで...
ふふ...いつも私を1番に考えて行動してくれてるんだよ?」
もちろんそれも嘘ではないけど、岳さんの瞳は私の奥のママを見てるんだけどねとは弓理にも流石にいえなかった。
「1人の世界に入ってるわよ柚葉」
「ごめんごめん。もう暗くなるけど弓理大丈夫?ここからは私1人でも...」
「私が言い出しっぺだからね。私も責任を持って一緒に見させてもらうわ」
弓理はこういうところまでも頼りになる親友。
弓理曰く社会人の飲み会の時間というのは曖昧なものが多いらしい。仕事の都合によって開始時間はズレることも多いらしい。早めのスタートというのはまずない。
でもなんでこんな詳しいんだろう?
まあ、親から聞いたりするのだろう。
「ほら、柚葉、岳さん来たわよ?」
時間は7時半過ぎ、7時半スタートなんだから7時半過ぎにゾロゾロ集まり出すのは弓理が言うように割と曖昧なのだろう。
ちなみにお店は飲み屋街にある居酒屋という感じではなく、少し大人がいくようなオシャレな雰囲気が漂っていた。
高校生がいても問題はなさそうだけど流石にお店に張り付いているのも無理があった。
「藤原先輩~今日は参加とか珍しいですね~」
チカイヨチカイヨ
藤原というのは岳さんの名字。
「藤原さんと一緒に飲めるなんて光栄です」
ワタシトシテハフユカイダヨ?
「お世話になった人の会なのに出ないなんて顰蹙ですからね」
岳さんは両側をガッチリ固める女性2人に苦笑いしながらも内心は嬉しくないわけないことがバレバレだった。
「岳さん...イチャイチャしてる」
「あれをイチャイチャと言っては岳さんが可哀想よ?うまくあしらってるじゃないの。とりあえず建物の中に入ってしまったわね。ここは90分の飲み放題のはずだから多く見積もって2時間の会ね。私たちは近くのカフェで終わるのを待ちましょう」
弓理は探偵の仕事でもしてるのかというくらいの段取りの良さで私をカフェへと案内。
彼女、こんないい角度のところにカフェがあるっていうことも調べたのかな?
「ここまでどう柚葉?」
「どうも何もやっぱり少なからず岳さんに好意を持っている女の存在はわかったわ」
「でも問題はここからよ。仮にだけど岳さんが女の人と密着する形で出てきたとしたら...ねえ、柚葉どうするの?」
必死に追いかけることに夢中だった私に煽りかけるように問いかける弓理。心なしかその表情が狂気じみてる気がしたが、今の私はそれを気にする余裕は併せ持ってなかった。
そうだ、
そうだった...
観察なんて言いながらストーカー行動をしている私(ちゃんと自覚はしてる)だけど、もし岳さんが他の女の人と仲良く出てきて、そのまま夜の街に消えていくなんてあったらどうしたらいいんだろう...
行かないでってとめる?
岳さんはいないはずの私がいることに驚くだろう。そして行かないでと止めればきっと行かないという選択を取ってくれる。私を連れて家に帰ってくれる...と思う。
でも私に止める権利はあるの?
権利はあるかもしれないけど強要はできない。
私は岳さんの彼女でもない。
もしそんなことが起きれば...
岳さんが誰かをまた好きになって前を向ける事実を本来であれば祝福しなければいけない。
「私を育ててくれてありがとう。これからは自分の幸せのために生きてね!」
こんな台詞...言えないよ。
ダメな娘でごめんなさい。
だから私は...
「弓理、もし女の人と出てきたらどうしてって聞いたよね?」
「そうよ」
「そんなの...意地でも引き剥がすに決まってるじゃん!」
「そうこないとね!」
「岳さんは絶対に渡さない」
私はそう決意した。
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