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14/18

食事会と書いてデートと読む

2人のデート回です。


恋愛は付き合うまでが楽しいとよく言う。

それが事実かどうかはわからないが少なくとも環さんと会う時間はいつも楽しかった。


俺と環さんは最初月に一回定例ランチなんて名前をつけて

ご飯に行っていた。でも月に一回だったのは最初だけで

その次の機会は2週間後、その次の機会は1週間後と会う頻度は回を重ねるごとに増えていっていた。


......


「ごめーん。仕事が押しちゃって」


その日、俺は休みで環さんは仕事だった。

約束の時間は環さんの昼休みに合わせて12時半。今の時刻は13時半。1時間半待ちとはどこかのテーマパークの

マウンテンであった。


「仕事大丈夫でした?」


「大丈夫だよ。ちょっと後輩の子がミスしちゃってね。

その子手伝ってたら遅くなっちゃった。待たせるのは岳くんに申し訳ないし今日は中止にしようかと思ったんだけど...」


「なんか分からないけど会いたかったんだよね」


そんな台詞が聞けるなら2時間でも3時間でも待てそうだった。それはマウンテンから空の旅への待ち時間へ昇格だった。


ダメだ、、ドキドキしすぎて頭がおかしい。


「俺も今日は寝坊しちゃって...少し遅れるかなって思ってたんで逆に大丈夫でしたよ」


「岳くんが遅れるのはダメだよ。休みなんだからー! 

シャキッとして、シャキッと」


「仕事の時よりシャキッとしてますよ。それに最近仕事でも調子いいんですよ?」


俺は環さんと出会ってから、少しずつではあるが向上心を

持って仕事へと向かっていけるようになっていた。上司、

上の立場の言葉を鵜呑みにするのはやめた。まず疑問を抱くようにした。そうすると実はこうした方がいいのではないかなんて考えが浮かんでくる。まだそれを実行する力は2割にも満たないが、少しずつ自分が変わっていけているのが

わかった。


自分に自信がつきはじめた俺は周りからの誹謗中傷が稀に

あっても前ほど気にならなくなっていた。


「凄いじゃん。やっぱり岳くんは出来る子なんだよ。

羨ましい」


「俺から見たら環さんの方がよっぽど頼りになりますよ」


「ううん...私なんか全然だよ。外面だけ」


「それだけなんてことはないですよ。それすらない人間は

どうなるんですか」


「そういう考えもあるのね。岳くんたまにしっかりしたこと言うよねー」


「たまにってなんですか!いつもですよ」


「ふふっ、そういうことにしていてあげる。気を取り直して今日はここのお店に行きたいと思いますー!」


そういって携帯に撮られた写真を見せてくる環さん。


「今回はお洒落って感じじゃないけどこの感じ食べたくない?」


その写真は色とりどりのネタがまるで七色に光っているような、そして真ん中にカニのハサミが添えられた海鮮丼の写真だった。


「え、美味しそ...」


「でしょでしょ!これ一目見たときから岳くんと一緒に 食べたいって思ったの!」


正直、俺と一緒に食べたいって思ってくれた事が海鮮丼が

放つ魅力より嬉しかった。


「俺も環さんと食べたいです。早く行きましょ!」


照れを隠しながら言った環さんと一緒に食べたいという 

その気持ちが少しでも伝わればいいなと思った。


「って、ここラストオーダー14時だって!もう30分しかないよ?」


「じゃあ急がないと!」


側からみれば、休日スタイルの男性ととスーツ姿の女性の

全力疾走とそれは滑稽な光景だったかもしれないがどこか青春チックで少しだけドキドキした。


……


「ギリギリセーフ」


時刻は13時50分、間に合った。


「はぁはぁ、めっちゃ走りましたね」


「本当、こんなに走ったの久しぶりだよ」


ウィーン


「当店、14時ラストオーダーの14時半閉店ですがよろしいでしょうか?」


「「あ、大丈夫です」」


「お好きな席にどうぞー」


「た、環さん、これ...」


俺たちが食べたいと言っていた海鮮丼は数量限定だったらしく無残にも本日完売という赤札が写真に貼られていた。


「うわー、ショック。食べたかったのに」


「これ数量限定だったんですね」


「ごめんね、私がちゃんと見ておけば」


「いや、俺こそいつも調べさせちゃってるし、すみません」


「でもね、海鮮丼食べれなかったのは残念だけど岳くんとだったらなんでも美味しく食べれそうな気がするよ?」


「お、俺も同じこと思ってます」


環さんは普通にこういうことをぶっ込んでくるから困るんだ。心臓が何個あっても足りない。


「あらあら、仲のいいカップルね。もしかして海鮮丼が食べたかったのかしら」


気づけば、厨房から60代後半くらいのおばちゃんが出てきた。


「え、いや、付き合ってるわけじゃ...」


「なんで動揺してるの?そうなんです。写真で海鮮丼見かけて食べたかったからきたんです」


「ごめんねぇ、今日はもう蟹がなくなってしまってね、海鮮の具はあるからもしよかったらそれを食べていくかい?」


「え、いいんですか?」


「いいんだよ。あなたたちが今日最後の客だから、代金は頂くけど是非振舞わせておくれ」


俺たちは店主の奥さんのお心遣いで、蟹はないけど特別な

海鮮丼を食べることができた。

蟹がないからとサービスで足してくれたお刺身はとても

美味しく、本当に感謝でいっぱいだった。


「とても優しい奥さんだったね」


「ですね。ラストオーダー前って1番嫌がるはずなのに

あんなにもてなして貰ったのは初めてです」


「私たちもさ、仕事って慣れてきちゃうことの方が多いけどこう言った気持ちを忘れたらいけないんだよね」


「なんだか勉強になりましたね。またこのお店に行きたいなぁ」


「だよね!その時はまたご一緒させてもらってもいいかな?」


「もちろんです!また行きましょ!」


今度は数量限定の方を食べに行って、この前はありがとう

ございました!ようやく数量限定にたどり着けました!

なんて言えたらいいねと2人で歩いて環さんは仕事場へ、

俺は家へと戻っていった。


未だにあのお店の近くを通ると、2人で走って向かったあの頃のことを思い出す。



一緒に数量限定の海鮮丼食べたかったですよ。



環さん......





結局、環さんとのこの約束が叶うことはなかった。


ここまでご覧いただきありがとうございました。

次回は明日更新です。

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