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誤解とそれから

本日2話投稿の1話目です。

よろしくお願いします!


「えっ?」


俺は訳もわからず返事だけをする。


「あの...ごめんなさい。やったの僕なんです」


「あ、あんたさっきの!」


その声の主は手を引っ込め俺に罪を擦りつけようとした本物の痴漢犯だった。


「え、だって...あれ?え、じゃあこの手は?」


一方こちらはプチパニック。

それはそうだろう。痴漢犯だと思って掴んだ手の男性とは

別の男性が自ら痴漢したと出てくればそうなるのは理解

できる。


「僕を止めようと彼は僕の手を掴もうとしたんです。僕は あなたが気付いたことに気づいたから彼になすりつけようと手を引っ込めました」


「え、じゃあこの人は全くの無罪?」


「そうです。やったのは僕ですから」


「じゃあ私の、私のお尻を触ってたのは??」


「だから僕ですって」


いや、あなた犯罪者ですよ。

なんでそんな偉そうなんですか。


パチンッ


「本当最低」


彼女はその男に最大級に軽蔑の言葉をぶつけた。


その後何駅か通り過ぎ、満員電車ではなくなった車内から

降りた俺たちは完全降伏した彼と駅員の人と警察に行った。


なぜ彼が急に自白したか不思議だったが、後から聞いた話では罪を擦りつけるまでは良かったが、止めに入った正義感丸出しの男が若かったこと。人生を挫折した先輩として若者の人生を棒に振る理由になるのは罪悪感で押しつぶされそうになったとのことを言っていたらしい。


そんな心残しているなら痴漢なんてしなければいいのに

なんて思うが、結果として彼があの時名乗り出たなかったら今頃俺は警察のお世話になっていただろう。冤罪って怖い。


とりあえず俺の無実は証明され、警察に行って説明するなど拘束されていた時間は長かったもののホッと一息ついた。


「えーと、本当ごめんなさい!!」


その後、彼女からは平謝りの嵐だった。


そもそもでいくと痴漢した奴が悪いのであって彼女に非はない。


まあ、俺としては冤罪未遂だったけど...


「本当にごめんなさい。助けようとしてくれたのに犯人扱いなんて...勇気出してくれたんだよね?それなのに私.....!」


「そんなに謝らないでください。結果としては犯人も捕まって良かったです。まあ、俺としてはあの瞬間終わったなって思いましたけど」


そう言いながら笑える現実が訪れてよかった。

俺は安堵の気持ちでいっぱいだった。


「未来ある若者にあんな恥をかかせるようなことしちゃって、はぁ、私が我慢してたらよかったのかな」


「それはないです。本当は俺も止めるべきか悩みましたけど後悔しない方選んだだけですから」


まあ自分が痴漢犯に間違われるという選択肢はその時入ってなかったけど。


「優しいんだね」


そう微笑んだ顔は天使そのものだった。

その顔が見えたなら勇気だして良かったなんて思えてしまう。


「それでね、もし良かったらなんだけど...私お昼食べ損ねちゃって」


「お詫びの気持ちも兼ねてお昼ごはんとかどうかな?」


お詫びなんていいです。と言おうとしたが俺の体は正直だったらしい。


グ〜


「よし!正直でよろしい!」


お腹を鳴らしてしまっては、もう行きます以外の返事をするわけにはいかなかった。


「あ、そうだ。自己紹介まだだったよね?

私、古賀環って言います!」


改めて正面彼女を見ると、かなりの美人だった。シルエットはスラッとしているというよりは痩せてるような印象だったが、綺麗に手入れされているだろう髪はは艶やかな栗色をしているし、何より綺麗な二重でぱっちりした目が印象的だった。


「ふ、藤原岳です」


俺は美人ということを認識してしまってか少し緊張が

出てしまった。


「岳くんか!うん、岳くん。いい響きだね。よろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします」


自己紹介は済ましながら歩いていると、お目当てのカフェは駅から近かったのだろう。

カフェはすぐ目の前に来ていたようだった。


「ここのカフェ行きたかったんだー!中々忙しくて

行けなかったけど」


「なんかすみません、そんな行きたかったとこなのに

俺なんかで」


「いいの、いいの!キッカケないと行く機会なかっただろうし!それより授業とか大丈夫?」


「それなら大丈夫です。ていうか僕、実は社会人なんですよね」


「え、まって、岳くん何歳なの?」


「21です。高校卒業してそのまま働き出したので社会人歴は4年目になりますけど」


俺は自分が高卒だというのが嫌だった。嫌だったというと語弊があるな。嫌というより好んで高卒だということは言いたくなかった。

俺の働く会社は学歴社会で、何かあればすぐにそれは俺の後ろに現れる。

ミスをすると高卒だから勉強ができないんだと。仕事の成果を上げても、今度は高卒のくせに生意気だと。皆口々に高卒を馬鹿にするような口ぶりだったからだ。

だからだろうか、意識したつもりはなかったが、多分高卒を告げる俺は子供じみた、ぶっきらぼうな言い方になったのだろう。環さんは一瞬、きょとんと不思議そう顔をした後、

すぐさま笑顔でこういった。


「そっか、岳くんは高校出てすぐ働いたんだ!

偉いね!」


「え、偉いですか?」


俺は思わず聞き返す。


「偉いよ!親の奨学金とかに頼らず18で社会に出てなんて凄いと思うよ?私18の頃なんてガキンチョで社会に出て働こうなんて思えなかったもん。大学は何人友達作ろうかなーなんて思ってた」


「いや、それはそれでどうかと思いますよ」


「あ、ひどーい。でもね、ほんとそんなに自分のことを卑下しなくても大丈夫だよ。岳くんは立派だよ?自信持ちなよ」


「...そんな風に言ってくれたのは環さんが...

初めてです」


今この瞬間だけは高卒だということを誇りに思おう。

そう思った。1人でもそう言ってくれる人がいるなら今日

だけは恥じることはない。

彼女のおかげでそう思えた。


もし、俺の恋を振り返っていつ環さんのことを好きになったのかと聞かれるならきっとこの時、この瞬間には俺はもう恋に落ちていたのだろう。


それだけ環さんは可愛くて、暖かくて、そして優しい人

だった。


ここまでご覧いただきありがとうございました。

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